テキサス州のEC事業者向け売上税ガイド2025年版|新規進出企業の税制優遇措置も解説

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はじめに

テキサス州は、法人所得税がなく事業環境が整備されていることから、EC事業者や新規進出企業にとって魅力的な市場となっています。しかし、州の売上税制度は独自のルールがあり、特にオンライン販売を行う事業者には「エコノミック・ネクサス」という経済的つながりに基づく課税義務が発生する可能性があります。

本記事では、テキサス州におけるEC事業者向けの売上税制度の全体像から、登録手続き、新規法人が活用できる税制優遇措置、そして事業開始時の実務まで、包括的に解説します。テキサス市場への進出を検討している事業者や、すでに販売を開始している方にとって、必須の情報をまとめました。


テキサス州の売上税制度の基本

課税対象と税率の仕組み

テキサス州では、小売販売される有形商品や特定のサービスに対して売上税が課されます。州の基本税率は6.25%で、これに地方税(最大2.0%)が上乗せされ、合計税率は最大8.25%となります。

課税対象は幅広く、通常の物品販売やリース、レンタルには州税と地方税が適用されます。一方で、小麦粉、砂糖、パン、牛乳、卵、野菜や果物といった基本的な食料品は非課税です。ただし、菓子類や清涼飲料水、日用品(紙製品、ペット用品、化粧品)、被服、本などには通常通り売上税が課されます。

サービスについては、娯楽サービス、データ処理・情報サービス、信用調査、債権取立てなど17カテゴリが「課税サービス」として指定されています。専門職サービス(法律・会計など)は基本的に非課税です。データ処理サービスや情報サービスには、課税対象額の20%が控除される特例も用意されています。

EC事業者に適用される徴収義務

テキサス州でビジネスを行う事業者は、課税対象商品の販売や課税サービスの提供に際して、顧客から適切な売上税を徴収し州に納める義務があります。

州内に事業拠点、営業所、倉庫、従業員などの物理的プレゼンスを持つ事業者は、テキサス州売上税許可証を取得して税金の徴収・申告を行う必要があります。これは従来からの基本原則です。

重要なのは、州外に拠点を置く純粋なEC販売事業者であっても、一定の経済的つながりが認められる場合には徴収義務が発生するという点です。この制度は2018年の合衆国最高裁判決以降に導入されたもので、物理的拠点がなくても州売上税を課すことを可能にしています。


EC事業者が知っておくべきエコノミック・ネクサス

50万ドル基準とSafe Harbor

テキサス州では、過去12か月間のテキサス州向け売上高が50万ドル以上に達したEC事業者は、州内に物理的拠点がなくとも売上税許可証の取得と、テキサス顧客からの売上税徴収・納税義務が課されます。

この50万ドルという基準は「Safe Harbor(免責基準)」とも呼ばれ、売上高が50万ドル未満であれば州法上の登録や徴収義務は発生しません。つまり、テキサス市場でのビジネス規模が小さいうちは、売上税の心配をする必要がないということです。

ただし、売上が基準を超えた場合は速やかに登録手続きを行う必要があります。売上高の計算には、免税対象の販売や免税事業者への販売は含まれません。

マーケットプレイス事業者経由の販売

AmazonやeBayのようなマーケットプレイスを通じて販売を行う場合、テキサス州ではマーケットプレイス事業者側に売上税の代理徴収・納税義務があります。

そのため、自社では自前のウェブサイトで直接販売を行わず、マーケットプレイスのみで販売し、かつそのマーケットプレイス事業者がテキサス州税を代行徴収・申告している場合、個々の出店者は別途売上税許可証を取得する必要はありません。

ただし、この場合でも販売記録を4年間保持する義務は全ての販売者に課されています。また、自社ECサイトでの販売を並行して行う場合や、マーケットプレイス事業者が税を代行しない場合には、自社での許可証取得が必要です。

重要な注意点として、テキサス州内に拠点を置く事業者はマーケットプレイス経由の販売であっても自社の売上税許可証取得が必要であり、マーケットプレイス限定販売者向けの免除規定は適用されません。


売上税許可証の取得と登録手続き

申請方法と必要書類

テキサス州で課税商品・サービスを販売する事業者は、テキサス州主計局に対して売上税の事業者登録を行い、Sales and Use Tax Permitを取得する必要があります。

登録申請はオンライン(Texas Online Tax Registration)で行うか、所定の用紙(フォームAP-201)を郵送する方法があります。登録手数料は無料ですが、必要に応じて担保(金銭保証)の提供を求められる場合があります。

オンライン登録完了後は、発行される「税務登録サマリー」や許可証を印刷・保管し、事業所に掲示する義務があります。申請プロセスは比較的シンプルで、必要な情報を正確に入力すれば数日で許可証が発行されます。

許可証取得後の義務

売上税許可証を取得した事業者には、以下のような義務が課されます:

許可証の掲示: 事業所ごとに売上税許可証を見やすい場所に掲示すること。複数の営業所を持つ場合、それぞれについて子番号が付与され、各拠点での掲示が必要です。

売上税の徴収・納付: 課税対象の売上について所定税率の売上税を顧客から徴収し、州に対して申告・納付すること。仕入や州外購入品でテキサス州のUse Tax(使用税)が課される場合にも適切に自己申告・納付します。

申告書の提出: 定められた頻度(通常は前年度実績により月次または四半期毎)で売上税申告書を提出します。重要な点として、売上や課税取引がゼロの場合でも所定の期間ごとに無課税申告を行う必要があります。

記録の保管: 売上・仕入・税額計算の根拠となる帳簿や請求書等の記録を少なくとも4年間保存する義務があります。税務監査の際にはこれら記録の提示が求められ、適正な徴税が行われていたか審査を受ける可能性があります。

また、事業の売買・譲渡や組織形態の変更(例:個人事業から法人化)の際には、新規に許可証を取得し直す必要があります。事業を停止・廃業する際は許可証を返納し、州に対し営業停止の届出を行います。


地方税と単一税率オプション

仕向地主義の原則

テキサス州の売上税は仕向地主義を採用しており、顧客への商品の配送先所在地の地方税率(市・郡等)を適用します。事業者は各取引に応じて正確な目的地の地方税率を適用する必要があります。

この仕組みは、各自治体の税収を確保する一方で、EC事業者にとっては管理負担が大きくなる可能性があります。テキサス州内には多数の市町村があり、それぞれ異なる地方税率を設定しているためです。

リモートセラー向け単一税率制度

この負担を軽減するため、遠隔地販売(州外事業者)の場合に限り、すべてのテキサス州内取引に一律の地方税率を適用できる「単一地方税率」の選択制度があります。

この単一地方使用税率は毎年州政府により定められ、2023年現在1.75%と公表されています。経済ネクサスを有するリモートセラーは、売上税許可証申請時にこの単一税率適用を選択することで、テキサス州内の配送先ごとの細かな地方税率計算を省略し、売上全体に州税6.25% + 単一地方税1.75% = 合計8.00%を課税・納付することが可能です。

ただし、テキサス州内に拠点を持つ事業者はこの簡易税率を利用できず、またマーケットプレイス事業者が代理徴収する場合にも適用不可です。単一税率の選択・取り下げには所定の届出(フォーム01-799の提出)が必要であり、適用開始・終了はいずれも四半期単位となります。


新規法人向けの税制優遇措置

州政府主導のインセンティブプログラム

テキサス州は企業に優しい税制で知られており、州レベルで法人所得税や個人所得税を課していません。その代わりに一定規模以上の事業収入に対してフランチャイズ税(事業税)を課していますが、年間総収入が約247万ドル以下の企業は申告・納税義務が免除されており、新興企業や中小企業にとって大きな優遇となっています。

テキサス・エンタープライズ基金(TEF): 州知事局が運営する全米最大級のディールクロージング基金で、テキサスへの大型投資プロジェクト誘致のために創設されています。州が直接補助金を提供し、企業の設備投資や拠点移転に伴うコストを一部補填します。75人以上(地方都市では25人以上)の新規正社員雇用や大規模投資が見込まれる企業が対象です。

テキサス州エンタープライズゾーン・プログラム(EZP): 経済的困難地域への投資促進を目的とした州の税控除プログラムです。州が指定するエンタープライズゾーンにおいて一定額以上の資本投資と雇用創出・維持を行う企業に対し、州の売上税の払い戻しを提供します。例えば、500万ドル以上の投資で500人の雇用を計画する案件では最大125万ドル、2.5億ドル超の投資で500人超の新規雇用を伴う案件では最大375万ドルまで、支払済みの州売上税の返金を受けられます。

製造装置・R&Dに対する税優遇: テキサス州は製造業や研究開発型企業に対して、設備投資コストを下げるための税制優遇も提供しています。製造工程で直接使用する機械装置・部品、加工・製造用資材については州の売上税が非課税になります。また、研究開発投資に対してはR&D用途の試験装置等の購入に対する売上税免税、または研究開発費に応じたフランチャイズ税の税額控除のいずれか一方を選択できます。

人材訓練補助(Skills Development Fund): 州の労働委員会が管理する補助金プログラムで、企業と公立コミュニティカレッジ等が連携して実施する従業員向けカスタム研修に対して資金助成を行います。受講者1人当たり平均2,000ドル程度の訓練費用を州が負担します。

地方自治体による支援策

税還付・減免とインフラ支援(チャプター380/381協定): テキサス州では各市や郡など地方自治体も独自に企業誘致策を講じており、その代表例がテキサス地方政府法380条・381条に基づく経済開発協定です。市や郡は進出企業と個別契約を結び、一定期間の固定資産税の減免や徴収税の一部払い戻し、補助金の交付、用地造成・インフラ整備の支援を提供できます。

これらの協定は企業の投資額や創出雇用数など成果目標(パフォーマンス条件)を定め、それを満たすことで恩恵を受けられる成果連動型の契約となります。利用にはプロジェクト開始前の事前申請・契約締結が必要で、内容は自治体ごとにカスタマイズされます。

州内大学授業料の優遇: Economic Development & Diversification In-State Tuitionプログラムは、テキサス州への本社移転や大規模拠点新設を検討する企業の従業員とその家族について、テキサス州公立大学の授業料を即座に州民料金にする資格を与える制度です。通常、他州から転入した学生は1年間の居住後でないと州内授業料が適用されませんが、本プログラム認定企業の従業員であれば、居住要件を満たさずとも州内授業料で進学可能となります。この優遇措置は企業の進出後5年間有効で、従業員本人だけでなく扶養する配偶者・子女にも適用されます。


テキサス州での法人設立と事業開始

事業体の登録手続き

テキサス州で新たに事業を開始する際は、まず事業形態を決定し、必要に応じてテキサス州務長官に法人の設立登記を行います。

個人事業主やパートナーシップの場合は州への法人登記は不要ですが、屋号(DBA)を使用する場合は所在地の郡事務局で「仮営業名証明書」を登録します。株式会社や有限責任会社等の法人形態を採る場合は、州務長官オフィスに定款証書を提出して設立登記を行い、法人格を取得します。

登記申請はオンラインのSOSDirectシステムを利用して24時間受付可能であり、会社名の重複チェックも事前に行うことができます。

外国企業(他州または海外で設立された法人)がテキサス州内で事業を行う場合は、州務長官に対して外国法人の営業許可申請を提出し、外国法人としての登録を行う必要があります。申請時には本国での設立証明書や良好な営業状況証明、テキサス州内の登録代理人の選任などが求められます。外国企業がテキサスで事業を開始した後は、90日以内にこの登録を完了させる必要があり、怠った場合は未登録期間1年ごとに登録料相当の罰金が科されます。

税務登録と営業許可

法人の設立後、または営業許可取得後は、テキサス州主計局への税務登録を行います。売上税許可証の申請が必要な事業者は速やかにオンラインもしくは紙申請で許可証を取得します。

主計局のオンライン登録システムでは、新規事業者が必要となる各種税アカウントの開設を案内しており、売上税のほか、事業内容によっては燃料税・タバコ税等の特殊税や、フランチャイズ税の納税者アカウントが同時に作成される場合もあります。

連邦税務上の識別番号(EIN)はIRSから取得しますが、テキサス州の売上税許可申請自体はEIN取得前でも可能です。もっとも銀行口座開設や給与支払いにはEINが必要になるため、新規法人は早めに取得すると良いでしょう。

テキサス州には一般的な営業許可は不要ですが、業種によっては州法・連邦法に基づく専門免許や許認可が必要となります。飲食店を開業する場合は保健所の許可やアルコール販売ライセンス、建設業なら請負業者免許など、分野別の要件があります。州知事経済開発局が提供する「テキサスビジネス許認可ガイド」では、業種ごとに必要な許可・登録の一覧が掲載されています。


まとめ

テキサス州でEC事業を展開する際には、売上税制度の理解と適切な登録手続きが不可欠です。エコノミック・ネクサスの基準である50万ドルを超える売上がある場合、州外事業者であっても売上税許可証の取得と徴収義務が発生します。

一方で、テキサス州は法人所得税がなく、新規進出企業向けの税制優遇措置やインセンティブプログラムが充実しています。製造業やR&D型企業には設備投資に対する税優遇があり、大規模プロジェクトにはエンタープライズ基金や地方自治体との協定を通じた支援が得られる可能性があります。

事業開始時には、法人登記、税務登録、必要に応じた営業許可の取得を順次進めていく必要があります。各手続きはオンラインで対応可能なものが多く、州政府のウェブサイトには詳細なガイドが用意されています。

テキサス市場への進出を成功させるには、税務遵守を確実に行いつつ、利用可能なインセンティブを最大限活用することが重要です。専門家への相談や州経済開発担当部局との連携を通じて、自社に最適な支援策を見極めながら、ビジネスフレンドリーなテキサス州での事業展開を進めていきましょう。

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