はじめに
AmazonのFBA(フルフィルメント by Amazon)を利用する際、セラーが直面する重要な選択のひとつが配送方式の決定です。小口配送(SPD:Small Parcel Delivery)とパレット配送(LTL:Less Than Truckload)は、それぞれ異なる特性を持ち、出荷規模や納品先の状況によって適性が大きく変わります。適切な配送方式を選ぶことで、輸送コストの削減や納品効率の向上が期待でき、ビジネスの収益性に直結します。本記事では、SPDとLTLの違いを多角的に比較し、実務で役立つ判断基準を詳しく解説します。

出荷規模と重量による配送方式の選び方
SPDが適している出荷規模
小口配送(SPD)は、比較的少量の商品を迅速に納品したい場合に適しています。目安としては総重量150ポンド(約68kg)未満、箱数で10個程度までの発送であればSPDの利用が便利です。Amazon公式規定では、SPD利用時の各箱は一辺が25インチ(約63cm)以内、重量50ポンド(約22.7kg)以下に抑える必要があります。
Amazon提携運送会社のSPDサービスでは、1出荷あたりの箱数上限が約200箱と定められており、非提携の運送会社を利用する場合でも500箱が上限となります。これらの制限を超える大量出荷の場合、SPDでは対応しきれないため、パレット配送への切り替えを検討する必要があります。
LTLが推奨される大量出荷
パレット配送(LTL)は最小150ポンド以上から利用可能で、大量の商品を効率的に輸送できる方式です。標準サイズ(約1.0m×1.2mもしくは110cm四方)の頑丈なパレットに商品を積載し、パレット1枚あたりの高さはパレット込みで最大150~160cm程度に制限されます。重量は800~1000kg以内が目安とされています。
LTLの最大の利点は、一度の出荷で数千箱分の商品をまとめて送れることです。大量・重量貨物を扱う場合、個別に箱を発送するよりもパレット単位でまとめることで、輸送効率が飛躍的に向上します。月間で数千ポンド規模の出荷を行うセラーにとって、LTLは欠かせない選択肢となります。
納品先FCの分散状況と配送方式の関係
複数FCへの分散時はSPDが効率的
Amazonのフルフィルメントセンター(FC)への在庫配置は、システムが自動的に最適化するため、複数のFCに分散指定されるケースが少なくありません。各納品先が小規模になる場合、SPDで個別に発送する方が柔軟に対応できます。
特に遠隔地の小規模FCや中央部の倉庫など、アクセスが難しい配送先へ少量を送る際は、SPDの宅配ネットワークを活用する方が確実です。複数の小口荷物として処理されるため、各FCへの到着タイミングも比較的スムーズです。
納品先が集約される場合のLTL活用
一方、在庫が特定の地域や少数のFCにまとまって割り当てられる場合は、パレット単位でまとめてLTL発送する方がコスト・手間の両面で有利になります。ただし、複数SKUの商品を一括納品する際、Amazon側で納品先FCが複数に分割される可能性があります。
パレット納品では出荷先ごとにトラック配送と搬入予約が必要になり、オペレーションが煩雑化する可能性があります。この課題を解決するには、在庫配置サービス(Inventory Placement Service)を利用して納品先を集約する方法が有効です。納品先を減らすことでLTLの効率を最大限に引き出せます。
Amazonのインバウンドポリシーと要件の違い
SPD利用時の基本要件
SPDを利用する場合、前述の箱サイズ・重量制限に加え、各箱ごとにユニークなFBA配送ラベルを貼付する必要があります。異なる納品プランの商品を同じ箱に混載することはできず、納品プラン(納品先FC)ごとに箱を分ける運用が求められます。
この要件により、複数の納品先がある場合は箱の仕分け作業が発生しますが、パレット梱包のような大掛かりな準備は不要です。宅配便レベルの梱包で対応できるため、小規模セラーや出荷頻度が高いビジネスモデルでは取り組みやすい方式といえます。
LTL利用時の厳格な梱包基準
LTLでは標準パレットの使用が必須で、パレット毎にラベルを貼付する必要があります。パレットには四方に識別ラベル(FBA Pallet ID)を貼る決まりがあり、商品が崩れないよう厳重に固定(ストレッチフィルム巻き)することが求められます。
箱にも個別のFBAラベルを貼った上で、パレット単位でも識別できるようにする二重の管理体制が必要です。危険物や特殊商品には追加要件がありますが、基本的にSPD・LTLいずれの方法でも遵守すべきFBA梱包・表示ガイドライン(バーコードの明瞭化や十分な緩衝材など)は共通です。
実際の事例として、毎月5,000~10,000ポンド規模をLTLに切り替えたセラーでは輸送コストが約30%削減できたとの分析もあり、Amazonは小口の迅速補充にはSPD、大量一括納品にはLTLを推奨しています。
FCでの受け入れ体制の違い
SPDは予約不要で柔軟な納品が可能
小口の宅配便レベルで届くSPD荷物は、事前予約なしで宅配業者(日本ではヤマト運輸や佐川急便等)により通常の配送スケジュールで納品されます。出荷準備ができ次第すぐに集荷・出荷でき、早ければ1~3日程度でFCに到着するケースが多く見られます。
この柔軟性は在庫切れへの迅速な対応や、需要の変動に素早く反応したい場合に大きなメリットとなります。特に季節商品や人気商品の補充では、SPDのスピード感が売上機会の損失を防ぐ重要な要素になります。
LTLは計画的な搬入予約が必須
パレット配送のLTLでは、配送トラックによる搬入予約(Appointment)が必須となります。Amazonの倉庫は予約なしのLTL/FTL貨物を受け付けないため、キャリアポータル(Carrier Central)等を通じて納品先FCと日時を調整し、承認された時間枠に持ち込む必要があります。
Amazon提携のパートナーキャリア便を利用する場合、この予約手配は自動的に行われますが、自社手配の運送業者を使う際は特に注意が必要です。繁忙期には予約が取りにくく、希望日より前倒しで早めに準備・予約することが推奨されています。
受付時間もFCごとに定められており、通常は平日の日中(例:午前~夕方)に限られます。予約時間に大幅遅延すると再調整が必要になったり、その日の搬入が拒否される場合もあるため、時間厳守が求められます。SPDは予約不要で柔軟に搬入できる反面、LTLは計画的なスケジュール管理が不可欠です。
地理的条件による配送方式の選択
近距離・少量輸送におけるSPDの優位性
納品先FCまでの距離も配送方式選択に影響します。発送元から近距離の倉庫に少量を頻繁に送る場合、SPDで小口発送する方が俊敏で在庫切れ防止に有効です。宅配便網を使うSPDなら集荷から配達まで1~2日で届くこともあり、リードタイムが短いメリットがあります。
この迅速性は、販売速度が速い商品や在庫回転率の高いビジネスモデルにおいて、キャッシュフローの改善にも寄与します。少量多頻度の補充戦略を取る場合、SPDの機動力は大きな武器となります。
遠距離・大量輸送でのLTLのコスト優位性
反対に、遠方のFCへ大量の商品を送る場合、個別箱を多数発送すると送料が高騰しがちです。遠距離・大口輸送ではLTLで貨物をまとめ、トラック輸送する方が距離当たりの単価を抑えられます。
特に国内を横断するような長距離輸送では、複数の荷主の商品を一台に混載できるLTLのメリットが大きく、同程度の荷物をSPDで送るより1単位あたり30~40%程度コストが低減する可能性があります。ただし、ごく少量を遠隔地のFCに送るような場合には、無理にLTL手配するよりSPDの宅配ネットワークに乗せた方が確実な場合もあります。
また海外から航空便で直送する場合はSPD扱い(国際宅配便)になり、海上・陸上でコンテナ単位にまとめる場合はLTL/FTLになるなど、輸送距離だけでなく輸送手段によっても適性が分かれます。総じて「近距離・小規模=SPD、遠距離・大規模=LTL」の傾向がありますが、地域の物流インフラや運送業者のサービスエリアも考慮して柔軟に判断する必要があります。
送料コストと納品効率への影響
LTLのスケールメリットによるコスト削減
コスト面ではLTLの方が大量輸送によるスケールメリットで有利です。中規模セラーが毎月のFBA補充をSPDからLTLに切り替えたところ、輸送費が約28~30%削減できたとのデータもあり、パレットあたりの単価は出荷規模が大きいほど低下します。
一例として、2パレット分の荷物ではSPD利用時の単位当たり配送料は約4.50ドルなのに対しLTLでは3.20ドル(約29%減)、8パレット規模になるとSPDが約4.15ドルに対しLTLは約2.95ドル(約30%減)になるという試算が報告されています。出荷量が増えるほど、LTLのコスト優位性は顕著になります。
SPDの手軽さと迅速性の価値
反面、SPDは手軽さと迅速性で勝り、特に小規模・新規ビジネスでは多少コストが割高でもメリットが大きいとされています。パレット梱包の手間がなく出荷準備が迅速な上、煩雑な運送業者手配やBOL(船荷証券)作成も不要なため、少量を素早く納品したい場合に有効です。
実際、Amazon倉庫に到着後の在庫の利用可能化スピード(チェックイン速度)はSPDの方が早い傾向があります。SPD荷物は倉庫到着後すぐ順次スキャンされるのに対し、LTL貨物は予約時間に一括搬入された後、パレットから個別箱への荷下ろし・検品が行われるためです。
繁忙期における処理速度の違い
特に繁忙期にはトラックの待機や処理待ちで、LTL納品は受領完了まで数日~1週間以上要することもあり、在庫に余裕がない場合は注意が必要です。ただし作業効率の面ではLTLが優れ、パレット単位での荷役によりFC側の受領処理がスムーズになるメリットがあります。
複数個口のSPDでは箱ごとにトラックへの積み降ろしやスキャンに時間を要しますが、LTLならフォークリフトで一度に運搬できるため、結果的に倉庫内処理の負荷を軽減できます。梱包の堅牢さも向上し、個別箱の紛失・破損リスクが下がる点もLTLの利点です。
まとめ
FBA納品における配送方式の選択は、単なるコスト比較だけでなく、出荷規模・納品先の分散状況・地理的条件・納品スピードなど、多面的な要素を総合的に判断する必要があります。「スピード優先で小回りが利くがコスト高」なSPDと、「計画的で低コストだが手続きに時間がかかる」LTLというトレードオフを理解し、自社の商品特性や在庫戦略に応じて使い分けることが重要です。
小規模・新規セラーはまずSPDで運用を開始し、出荷量の増加に伴ってLTLへの移行を検討するのが現実的なアプローチといえます。中規模以上のセラーは、定期的な大量補充にはLTLを活用しつつ、緊急補充や少量SKUの追加にはSPDを併用するハイブリッド戦略が効果的です。Amazonのインバウンドポリシーを遵守しながら、最適な配送方式を選択することで、FBAビジネスの効率性と収益性を高めることができます。
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