米国FDAの化粧品ラベル要件と成分表示規則|日本メーカーが押さえるべき必須表示と実務ポイント

米国税制情報

はじめに:なぜ米国向け化粧品ラベルは「英訳」では通用しないのか

日本の化粧品を米国市場へ展開する際、最初の関門となるのがラベル表示です。米国では、化粧品ラベルはFD&C Act(連邦食品医薬品化粧品法)のmisbranding(誤認表示)規定、FPLA(公正包装表示法)、21 CFR Part 701および740を中核に規律されており、さらに2022年成立のMoCRAによって新たな表示義務が追加されました。日本ラベルの単純な英訳では、成分名の書式、事業者表示、警告文などで不適合が生じる可能性があります。本記事では、「無指定の一般化粧品」を前提に、必須表示項目・成分表示規則・誤認表示リスク・実務チェックリストの順で整理します。

米国化粧品ラベル規制の法的枠組み

化粧品とdrugの境界は「intended use」で決まる

米国法上、製品が化粧品かdrug(医薬品)かは、成分ではなく製品の意図された用途(intended use)で判断されます。FD&C Actは化粧品を「清浄化・美化・魅力増進・外観変更」のために身体へ適用する物と定義し、drugを「疾病の診断・治療・予防」または「身体の構造・機能への影響」を目的とする物と定義します。同じクリームでも、単なる保湿を謳えば化粧品ですが、「しわを除去する」「コラーゲン生成を高める」「炎症を抑える」と主張すればdrug側へ移行し、まったく別の規制が適用される可能性があります。

MoCRAで追加された新しい表示義務

2022年のMoCRA(化粧品規制近代化法)により、従来の「製品名・事業者表示・内容量」に加えて、重篤有害事象報告を受けるための米国内連絡先(国内住所・国内電話番号・電子連絡先のいずれか)の表示が法文上求められるようになりました。また、professional use only製品への明示要件や、将来的な香料アレルゲン表示規則の制定も法文に盛り込まれています。ただし香料アレルゲンの個別表示については、2026年時点で最終的な実装規則の内容が確定したとは確認できず、EUの26物質リストと同一になると即断しない方が安全です。

無指定の一般化粧品に必要な必須表示項目

原則として必須となる7項目

米国小売向けの一般化粧品で原則必要となるのは、次の項目です。

  1. 製品識別表示(identity statement):主要表示面(PDP)に、common/usual name等で製品が何であるかを示します(21 CFR 701.11)。
  2. ネット量(正味内容量):PDPに正確な内容量を表示。液体は容量、固形・半固形は重量が原則です(21 CFR 701.13)。
  3. 事業者名・住所:manufacturer / packer / distributorの名称と住所。distributor表示なら”Distributed by”等の限定語が必要で、私書箱やWebサイトURLのみでは不適合となる可能性があります(21 CFR 701.12)。
  4. 米国内連絡先:MoCRA後の新要件。国内住所・国内電話・電子連絡先のいずれかをラベルに記載します(FD&C Act §609(a))。
  5. 成分表示:小売向け消費者化粧品では全成分表示が必要です(21 CFR 701.3)。
  6. 警告表示(該当製品のみ):危険性が想定される製品にはappropriate warningが必要です(21 CFR Part 740)。
  7. 原産国表示:FDAではなくCBP(税関)管轄ですが、輸入品は英語での国名表示(“Made in Japan”等)が実務上必須です(Tariff Act / 19 CFR Part 134)。

「法的必須」と「流通上必須」は一致しない

注意すべきは、バーコード、ロット番号、有効期限、PAO(開封後使用期限)アイコンは、米国市販品で頻繁に見られるものの、連邦化粧品法上の一律必須項目とは限らない点です。一方、米国内連絡先のように、見た目には地味でも見落とすと致命的になりやすい新しい必須項目が存在します。法的義務と商慣行を区別して設計することが重要です。

成分表示規則の詳細:INCIと「common or usual name」

法的義務はINCIそのものではない

日本の実務では「米国向け成分表示=INCI」と理解されがちですが、厳密には米国法が要求するのはcommon or usual name(一般名称)です。FDAのガイドは名称の出所として21 CFR 701.30の名称、旧CTFA辞書(現INCI辞書)、USP等を優先順位付きで挙げており、結果として多くの成分名がINCIと整合します。実務上はINCIベースで進めるのが合理的ですが、法的説明としては「INCIが唯一の法定名称体系」とまでは言えない構造です。

Aqua / Parfum / CI番号だけでは不適合

FDAが明確に否定しているのは、EU型の語法だけで英語名を置き換えることです。Aqua、Parfum、ラテン語植物名、CI番号のみの表示は、米国の要求成分名の代替にはなりません。Water (Aqua)Fragrance (Parfum)FD&C Yellow No. 5 (CI 19140) のように、英語のcommon or usual nameを先に置き、括弧書きで補足する形式であれば容認されています。

配合順序のルールと濃度表示

成分は原則として配合量の多い順に記載します。例外として、1%以下の成分は1%超の成分群の後に任意順で、色材は非色材成分の後に任意順で記載できます。また、通常の化粧品成分表示では濃度(%)の記載義務はなく、ラベルに%を書き込む必要はありません。

香料・着色料・アレルゲンの扱い

香料は個別成分をすべて開示せず”fragrance”とまとめて表示することが可能です。ただし、carmine(カルミン)/cochineal extractはアレルゲン性への配慮から、common or usual nameでの明示が求められます。香料アレルゲンの包括的な個別表示義務は、前述のとおり最終規則の確認が必要な段階です。

英語表記の原則と外国語併記の落とし穴

必要表示は英語が原則です(21 CFR 701.2)。重要なのは、ラベルに日本語などの外国語を任意で載せる場合、必要表示もその外国語で併記しなければならない点です。外箱に日本語コピーを少し入れるだけのつもりでも、実務上は二言語フル整備になりやすいという落とし穴があります。

誤認表示リスクと避けるべきクレーム

drug化する典型表現

“remove wrinkles”、”boost collagen”、”treat acne”、”anti-inflammatory”、”restore hair growth”のような表現はdrug claimの典型であり、FDAはこうした主張を付した化粧品に対しWarning Letterを多数発出してきた実績があります。しわ除去、ニキビ治療、育毛、細胞再生、湿疹・乾癬への言及は、輸入差止めにつながる可能性があります。

SPF表示は化粧品スコープ外

米国ではsunscreenはdrugとして規制されており、SPFを表示するメイクアップや保湿剤はcosmetic/drug combinationになります。日本では「化粧下地」でも、米国でSPF値を前面表示するとOTC drugルールが同時に適用されるため、一般化粧品として販売するSKUではSPF・broad spectrum・water resistant等のOTC用語を避けるのが原則です。

natural・organic表記の注意点

FDAは化粧品について”natural”を定義しておらず、”organic”も主にUSDAのオーガニック認証制度の領域です。定義がないから自由という意味ではなく、表示はtruthful and not misleadingでなければならず、裏付けのない「天然由来」「オーガニック配合」の表現は誤認表示リスクとなる可能性があります。

日本メーカー向け実務チェックリスト

実務では、次の順番で固めることが推奨されます:分類 → claims → 英語名称 → 成分名 → 事業者/連絡先 → 原産国 → 警告文。具体的には、(1) SPF・治療・育毛等の表現がなく「無指定の一般化粧品」と説明できるか、(2) 成分欄がAqua/Parfum/CI番号だけで終わっていないか、(3) 事業者住所がP.O. BoxやURLのみになっていないか、(4) 米国内連絡先を確保したか、(5) “Made in Japan”を英語で適切に表示したか、を順に確認します。米国販売用マスターラベルを先に確定し、EC・卸・通関書類へ横展開する方が、媒体ごとの個別英訳よりも不整合が起きにくくなります。

まとめ:ラベル適合は「デザインより先」に固める

米国FDAの化粧品ラベル要件は、FD&C Act・FPLA・21 CFRを土台に、MoCRAによる連絡先表示等が加わった多層構造です。日本メーカーが誤りやすいのは、INCIと法的名称義務の関係、EU型成分表記の流用、drug化するクレーム、外国語併記のルールです。分類とクレームの精査を起点に必須表示を固めれば、ラベルデザインは後から調整できます。逆にデザイン先行では「美しく見えるが法適合しない」ラベルになりやすい、というのが実務上の本質です。

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