カリフォルニア州売上税の追徴課税事例|未登録・未申告で数百万ドルの罰金も

米国税制情報

はじめに:カリフォルニア州の売上税執行の厳格化

カリフォルニア州では、売上税(Sales Tax)の未登録・未申告・未納に対する追徴課税が年々厳格化しています。特に2019年以降、州税務当局(CDTFA:California Department of Tax and Fee Administration)は、オンライン販売事業者を中心に大規模な調査を実施し、数十万ドルから数百万ドル規模の追徴課税を行っています。

本記事では、実際に発生した3つの代表的な追徴課税事例を詳しく解説し、それぞれの放置期間、取引内容、追徴額の内訳、科されたペナルティについて明らかにします。これらの事例から、カリフォルニア州で事業を行う際の売上税コンプライアンスの重要性を理解することができます。

事例1:Amazonマーケットプレイス出品者への約160万ドルの追徴通知

事案の概要

ペンシルベニア州在住のBrian Freifelder氏は、Amazonマーケットプレイスを通じて衣料品や食品などを販売する事業者でした。同氏の法人Philadelphia Media Exchange Corp.は、2012年頃から2019年まで、カリフォルニア州の顧客への販売で売上税を一切徴収・納付していませんでした。

2019年、CDTFAはFreifelder氏に対し、2019年上半期だけで最大160万ドルもの未納売上税(ペナルティ・利子含む)を支払う可能性があるとの警告を発しました。この通知は、同氏が同年上半期に徴収せず未納だった売上税額を州が推計し、さらに罰金・延滞利息を加えたものでした。

放置期間と取引の実態

Freifelder氏はAmazonのフルフィルメントサービス(FBA)を利用し、カリフォルニア州内のAmazon倉庫に商品在庫を預けて販売していました。2018年の年間売上は約300万ドルに達しており、商品は衣料品や靴、食料品など一般消費者向けの商品でした。

州当局は、Amazon倉庫への在庫保管によって物理的なネクサス(課税州との密接な関係)が生じていたと判断しました。Freifelder氏は当初、自身が州外事業者であることから州外への販売には課税義務はないと考えており、売上税の登録・徴収を行っていませんでした。

追徴額の内訳とペナルティ

通知書には、2019年上半期(6か月間)に遡って最大160万ドルの売上税等を追納すべき旨が記されていました。この金額には、当該期間の未納税額に加え延滞利息や各種ペナルティが含まれていました。

カリフォルニア州法では、有効な売上税許可を得ずに販売事業を行った場合、その期間に対応する税額に対して50%の罰金を課す規定があります。さらに未申告・未納付に対する10%遅延ペナルティ、および年利による利息が合算された可能性があります。

報道後、CDTFA側も160万ドルという試算は過大であったと認めましたが、依然として相当額の追徴納付義務があるとの立場は崩しませんでした。その後、追徴期間を2016年4月以降に限定する方針が示されましたが、それでも2016年以降約3年間の未納税額に利息・罰金を加算した相当額を支払う必要があると推定されます。

類似事例の広がり

Freifelder氏のようなAmazon出品者に対する追徴要求は他にも多数発生しました。CDTFAは2018年末から2019年にかけて、州外のネット事業者約30,000社に一斉通知を発送し、カリフォルニアでの事業登録・申告を促すと共に、ネクサス(課税義務開始時期)がいつ発生したかを報告するよう求めました。

多くの中小事業者は突然の巨額請求に困惑し、オンライン販売業者組合(Online Merchants Guild)が州を相手取って「遡及課税は不当」とする集団訴訟を提起する事態にも発展しました。

事例2:ガソリンスタンド兼コンビニ経営会社への約50万ドルの追徴と役員への個人責任

事案の概要

カリフォルニア州ロサンゼルス近郊でガソリンスタンド・コンビニ・自動車修理店を経営していたNational Imaging Company(Reseda Mobil)では、売上税の過少申告と未納によって多額の追徴課税と重い罰則が科されました。

同社は2001年末から営業許可(セラーズ・パーミット)は取得していたものの、2003年から2007年にかけて売上を大幅に少なく申告し、一部の売上税を州に納めていなかったことが発覚しました。

悪質性の高い手口

特に悪質だったのは、この期間中約477.8万ドルもの課税売上を過少申告していた一方で、顧客からは売上税分を徴収していた点です。つまり徴収した税相当額を州に納付せず流用していたのです。

同社は裏帳簿を使って売上の一部を隠すなどの行為が行われていたと推定されます。監査で正式帳簿が提出されなかったため、当局は推計方法で売上を算定しました。

追徴額とペナルティの詳細

2007年にCDTFAが監査に着手しましたが、同社からの協力が得られず、間接的な監査手法(業界平均マークアップ率による売上推計)で未申告売上を算定しました。その結果、2008年3月に税額および罰金あわせて約50万ドルの不足分を納付せよとの欠損通知(Notice of Deficiency)が発行されました。

この追徴額には、過少申告された売上に対する本税のほか、当局が認定した罰金が含まれます。具体的には、申告漏れに対する基本的な10%ペナルティに加え、当局は本件を「意図的な脱税(詐欺)的行為」と判断したため25%の加重罰金(フラウドペナルティ)を課しました。

役員への個人責任追及

同社は追徴課税通知後まもなく事業を閉鎖し法人としての資産不足が懸念されたため、州税当局は法人役員に対する個人責任(Personal Liability)の追及手続きを行いました。

カリフォルニア州税法(RTC §6829)では、法人が営業停止し納税不能となった場合でも、在任中に売上税を預りながら納付しなかった役員・責任者に対し未納税の個人連帯責任を問えると定めています。

本件では、後任CEOのJ. Goldstein氏に約24万9,000ドルの納付責任が科されました。Goldstein氏は自分は実権がなかったなどと主張して異議申立て(OTAへの上訴)を行いましたが、納税回避を知りつつ放置したと判断され、請求額および25%罰金の適用は正当と最終的に裁定されました。

事例3:歯科クリニック事業の資産売却での約95.7万ドルの追徴

事案の概要

カリフォルニア州内で複数の歯科医院を運営していたCoast Dental Services, Inc.は、事業撤退に伴ってクリニック設備や備品を売却した際の売上税処理を誤り、大規模な追徴課税を受けました。

同社は日常業務で歯ブラシ等の物品販売も行っていたため通常の売上税許可証を保持し申告もしていましたが、2018年に行った事業資産売却については「偶発的(一回限り)の売却」として非課税(免税)であると判断し、税申告を行わなかったのです。

免税適用の誤認

2018年に同社はカリフォルニア州内の歯科診療所を閉鎖するため、診療用機器や備品、その他事業資産を15名の買い手に対し25件の個別契約で売却しました。売却対象には歯科ユニット、電子機器、什器などがあります。

これらの売却は事業全体を譲渡する一連の取引だったため、同社はRevenue & Taxation Code §6367が定める「偶発的な資産売却の免税」に該当すると判断し、2018年の売上税申告でこれらを免税売上として報告しました。つまり事実上、該当取引に係る売上税を一切納付しなかったことになります。

州当局の判断と追徴決定

CDTFAはこの処理を問題視し、監査の結果「当該資産売却は単発ではなく課税を要する連続的売却に該当する」と結論付けました。

カリフォルニアの規則(18 CCR §1595)では、「12か月間に$400超の資産売却を3回以上行った場合は偶発的売却とはみなされず、3回目以降は課税対象」とされています。Coast Dental社は25件もの売却契約を個別に結んでいたため、このルールに照らして大半の売却が課税対象となりました。

CDTFAは2018年の売却総額に対する売上税本税95万7,275ドルを算出し、これに対する延滞利息(2018年からの未納による)とペナルティを付してNotice of Determination(追徴決定通知)を発行しました。

同社は不服を申し立てましたが、2025年1月の税務控訴審決定(OTA裁定)で当局の判断どおり追徴が確定しています。同社は「全て一括で事業全体を売ったも同然であり、実質一件の取引だ」と主張しましたが、契約間の相互依存性や一体性を示す証拠が乏しいとして退けられました。

カリフォルニア州のペナルティ体系

基本的なペナルティ(10%)

申告遅延や過少申告に対しては、基本的に10%の遅延ペナルティが課されます。これは善意の誤りであっても適用される標準的な罰金です。

詐欺的意図による加重罰金(25%)

意図的な脱税や詐欺的行為と認定された場合、25%の加重罰金(フラウドペナルティ)が適用されます。帳簿の改ざん、二重帳簿の使用、監査への非協力などが認定基準となります。

無許可営業の罰金(50%)

有効な売上税許可を得ずに販売事業を行った場合、課税逃れの意図があると認定され、かつその期間の税額が月平均$1,000超の場合、その期間に対応する税額に対して50%の罰金が課される規定があります。

徴収済未納付の罰金(40%)

顧客から売上税を徴収していながら州に納付しなかった場合、信託税の横領(trust fund violation)に相当し、40%の罰金が科される可能性があります。ただし、未納額が期間平均で月$1,000以下の場合などは適用除外となる規定もあります。

延滞利息

未納期間中の延滞利子は、年利率に基づき日割りで計算されます。長期間放置すればするほど利息負担は増大し、本税と同等かそれ以上の金額になる可能性もあります。

まとめ:売上税コンプライアンスの重要性

カリフォルニア州では売上税の登録漏れ・申告漏れ・未納に対し、非常に厳しい追徴と罰則が科されることが明らかになりました。BtoCのネット販売業者から実店舗ビジネス、さらにはBtoBの資産売却に至るまで、義務を怠った場合の追徴額は数十万ドルから数百万ドル規模に達する可能性があります。

その内訳は本税のみならず、故意性の有無に応じた罰金(10%、25%、場合により50%)や延滞利息を含み、経営に重大な影響を与える水準です。また、悪質なケースでは法人経営者個人への責任追及や刑事罰も現実に起こっています。

近年は特にオンライン販売事業者への過去税追及が問題化しており、州はボランタリー開示制度(Voluntary Disclosure Program)による自主申告を促す一方、期限までに対応しない事業者には容赦なく通知・調査を行っています。

カリフォルニア州で事業を行う際には、売上税に関するネクサス(州内関与)の発生時期を見極め、速やかに登録・申告を行うこと、そして取引ごとの課税可否を正確に判断することが不可欠です。遵守を怠れば高額の追徴やペナルティに直面するリスクがあるため、十分な注意が必要です。

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