米国FDA クラスI医療機器のUDI表示義務とラベル規制の完全ガイド

米国FDA規制

導入:クラスI医療機器のUDI義務化がもたらす規制対応の重要性

米国市場で医療機器を流通させる企業にとって、FDA規制への適合は事業継続の生命線です。特にクラスI医療機器については、2022年にUDI(Unique Device Identifier)表示義務が段階的に施行され、従来のラベリング規制と合わせて対応すべき要件が複雑化しています。本記事では、21 CFR Part 801に基づくラベル表示規定から、UDI制度の適用範囲・免除条件、GUDID登録の実務手順、そして違反時のリスクまで、クラスI医療機器の規制対応に必要な情報を体系的に整理します。


FDAラベリング規制の基本要件(21 CFR Part 801)

必須表示項目と法的根拠

FDAの一般ラベリング規則である21 CFR Part 801は、すべての医療機器ラベルに対して基本的な表示要件を定めています。製造業者(または包装業者・販売業者)の名称および所在地の明示は必須であり、これに加えて機器の共通名称や内容量(個数・重量等)も表示しなければなりません。

さらに重要なのが「適切な使用方法(adequate directions)」の記載義務です。一般ユーザーが安全に機器を使用できるよう、使用方法・適用条件・投与量・使用頻度などを具体的に示す必要があります。これらの情報は読みやすい文字サイズで目立つよう配置し、虚偽や誤解を招く表現を避けることが求められます。

ミスブランディングのリスク

これらの表示要件を満たさない場合、当該医療機器は「ミスブランディング(誤表示)」とみなされます。ミスブランディングは連邦食品医薬品化粧品法(FD&C Act)違反に該当し、製品の販売禁止や市場からの排除といった重大な法的リスクを招きます。企業にとっては、単なる表示の問題ではなく、米国市場へのアクセスそのものが失われる可能性があるため、ラベリング規制への適合は最優先課題となります。


UDI制度の概要とクラスI医療機器への適用

UDIシステムの構造と目的

UDI制度(21 CFR Part 830および801.20)は、医療機器の識別とトレーサビリティを向上させることを目的として導入されました。原則としてすべての医療機器のラベル・包装にUDIを表示することが求められています。

UDIは二つの要素から構成されます。一つは機器モデルを識別する「デバイス識別子(DI)」、もう一つは製造ロット・シリアル番号・製造日・有効期限などの個別情報を示す「製造識別子(PI)」です。ラベル上では、これらを人間が読める文字列として表示するとともに、バーコードやRFIDなどの機械読み取り形式(AIDC)でも表示しなければなりません。

日付表示の国際標準化

UDI制度では、有効期限や製造日を表示する場合にYYYY-MM-DD形式の国際標準フォーマットが義務付けられています。これはISO規格に準拠したものであり、グローバルな医療機器サプライチェーンにおける情報の互換性を確保する狙いがあります。

クラスI医療機器の施行スケジュール

UDI制度は医療機器のクラスごとに段階的に施行されており、クラスI医療機器については施行期限が最も遅く設定されました。具体的には、2022年9月24日以降に出荷される製品からUDIラベル表示が必要とされています。また、GUDID(UDI情報を格納するFDAデータベース)へのデータ提出期限は2022年12月8日とされました。

ただしFDAは当初、クラスI機器(および無分類機器)のうち植込み型・生命維持用でないものについては、これらの期日まで執行を猶予する方針を示していました。この猶予措置により、企業は段階的に対応体制を整備する時間的余裕を得ることができました。


UDI表示義務の免除条件と例外規定

21 CFR 820(GMP)免除機器の扱い

21 CFR 801.30には、UDI表示義務の例外規定が定められています。最も代表的な免除対象は、21 CFR 820(適正製造基準、GMP)から免除されているクラスI医療機器です。FDA規則でGMP免除とされている機器については、UDI表示義務からも除外されます。

その他の免除対象

研究・教育・化学分析専用で臨床使用を意図しない機器や、カスタム医療機器(特定患者向けに製造される機器)もUDI表示が不要とされています。また、同一型番の使い捨て機器をまとめたバルクパッケージ、米国外から輸出される機器、戦略国家備蓄品なども一定条件下で例外として扱われます。

組み合わせ製品(キット)の特例

組み合わせ製品やキットの場合、個々の構成機器ではなくキット全体にUDIを付与すれば、内部の個別機器へのUDI表示は免除される場合があります。この規定により、複数の機器を組み合わせた製品の表示負担を軽減できます。


医療機器ラベルの必須表示情報

基本的な製品情報

FDAガイダンスによれば、医療機器ラベルには製品の共通名称、内容量(個数・重量等)、製造業者名・所在地が必須情報として求められます。これらはラベリング規制の中核をなす要素であり、欠落があればミスブランディングとみなされます。

使用上の注意事項と操作手順

機器に関連する使用上の注意事項も重要な表示要素です。具体的には、適応症(インジケーション)、禁忌、警告、投与上限、適用年齢などが該当します。また、操作手順や使用方法についても、ユーザーが安全かつ効果的に機器を使用できるよう明確に記載する必要があります。

視認性と配置の要件

これらの情報は、十分な文字サイズとコントラストで目立つように配置しなければなりません。小さすぎる文字や目立たない位置への配置は、規制違反とみなされる可能性があります。FDA文書(Blue Book Memoなど)には、ラベルに必要な項目と誇大・誤認表示を避けるための具体的な指針が示されています。


GUDID登録の実務と提出要件

GUDIDの役割と登録情報

Global Unique Device Identification Database(GUDID)は、UDI制度の中核となるFDAのデータベースです。ラベルに表示したUDIに関する情報をGUDIDに提出することが義務付けられています。

ただし、GUDIDに登録されるのはDI(Device Identifier)に紐づく製品情報のみであり、PI情報(ロット番号や有効期限など)は含まれません。提出される情報には、製品名、型式/モデル、規格、製造業者名・所在地、UDIコードなどが含まれます。

登録方法と準備事項

GUDID提出にあたっては、まずFDAのGUDIDシステムに対してアカウント登録を行う必要があります。デバイスごとにDI単位で情報を登録する仕組みとなっており、登録方法は二つ用意されています。

一つはウェブUIによる手動入力で、製品数が少ない場合に適しています。もう一つはHL7 SPL形式のXMLファイルをFDA電子提出ゲートウェイ経由でアップロードする方法で、大量の製品を扱う企業に向いています。

提出準備として、企業のDUNS番号など各種番号をあらかじめ確認・取得しておく必要があります。これらの情報が整っていないと、登録プロセスが滞る可能性があるため、早期の準備が推奨されます。


UDI対応の実務手順と社内体制整備

UDI取得プロセス

クラスI機器にUDI制度を適用するための第一歩は、UDI発行機関への登録です。企業はFDA認定のUDI発行機関(GS1、HIBCC、ICCBBAなど)に登録し、機器モデルごとにDI(Device Identifier)コードを取得します。どの発行機関を選択するかは企業の判断に委ねられていますが、既存のバーコードシステムとの互換性や国際的な使用実績を考慮して選定することが一般的です。

ラベルとマーキングの設計

取得したUDI(DIおよび必要に応じたPI)を、人間可読の文字列とバーコード(またはRFID等のAIDC)で表示できるよう、ラベルや機器本体のデザインを作成します。この段階では、バーコードの品質、余白、配置位置などを適切に管理する社内手順を整備することが重要です。

特にバーコードの読み取り精度は、サプライチェーン全体の効率性に影響するため、印刷品質の検証プロセスを確立しておく必要があります。

データ整備と検証

GUDID提出に必要な製品情報(製品名、型番、仕様、企業DUNS番号、UDIコードなど)を社内で収集・検証します。この段階では、既存の製品マスターデータとの整合性を確認し、不足している情報を補完することが求められます。

GUDID登録と維持管理

準備した情報をもとに、FDAのGUDIDアカウントを申請し、データを入力・提出します。少量であればウェブ手動入力、大量であればHL7 SPLファイルによる電子提出が効率的です。

さらに重要なのは、登録後の維持管理体制です。新製品投入時や既存製品の改良時にUDI/GUDID情報を更新するプロセスを確立し、製品登録台帳や品質管理システムでUDI管理項目を追加することで、継続的なコンプライアンスを確保できます。


違反時のリスクと法的措置

ミスブランディングによる法的影響

UDI表示義務やラベル規定に違反した場合、当該医療機器はFDA法上のミスブランディング(誤表示)となり、販売が違法とされます。FDAは既に複数の企業に対して警告状の発出や不適合通知を行っており、規制の執行は現実のものとなっています。

執行措置の段階

違反が確認された場合、FDAは製品の差し止め・回収命令、没収、差し止め訴訟などの法的措置を講じる可能性があります。これらの措置は段階的にエスカレートし、最終的には企業の米国内市場からの事実上の排除につながります。

民事罰金と刑事罰

加えて、民事罰金や刑事罰が科される可能性もあります。最大で100万ドルの罰金や最大10年の懲役といった厳しい処罰が規定されており、特にUDI未表示はFFDCA第502条(t)(2)に該当し、301条(q)(1)(B)の禁止行為ともされています。

事業継続への影響

法的措置だけでなく、違反企業は企業イメージの毀損や取引先からの信頼喪失といった間接的な影響も受けます。医療機器業界において規制遵守は企業の信頼性を示す重要な指標であり、違反は事業継続そのものに重大な影響を及ぼす可能性が指摘されています。


まとめ:クラスI医療機器の規制対応における実務的視点

米国FDAにおけるクラスI医療機器のラベル表示およびUDI義務は、2022年の施行により本格的な執行段階に入りました。21 CFR Part 801に基づく基本的なラベリング要件に加え、UDI制度による識別情報の表示とGUDID登録が必須となっており、企業は複合的な規制要件に対応する必要があります。

免除条件の確認、UDI発行機関への登録、ラベル設計、データ整備、GUDID提出、そして継続的な維持管理という一連のプロセスを確立することが、コンプライアンス確保の鍵となります。違反時のリスクは法的措置にとどまらず、市場アクセスの喪失や企業信頼性の低下といった深刻な影響をもたらす可能性があるため、早期からの体系的な対応が求められます。

今後の規制環境の変化や執行動向を注視しながら、社内体制を継続的に改善していくことが、米国市場での持続的な事業展開には不可欠といえるでしょう。

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