米国向け化粧品輸出に必要なFDA関連書類の完全ガイド

米国FDA規制

米国への化粧品輸出を検討する際、FDA(食品医薬品局)への適切な届出と書類準備は避けて通れない課題です。2022年に成立したMoCRA(化粧品近代化規制法)により、化粧品製造施設の登録や製品リスト提出が義務化され、輸出企業には新たな対応が求められています。本記事では、通関時に必要となる主要なFDA関連書類から成分審査に関わる提出資料まで、実務に即した情報を体系的に整理してお伝えします。

米国市場への参入を目指す化粧品メーカーや輸出業者にとって、これらの書類準備は単なる形式的な手続きではありません。適切な準備により通関がスムーズになり、市場投入までの時間短縮とコスト削減が可能になります。


FDA化粧品製造施設登録(Facility Registration)

登録の必要性と対象施設

化粧品を製造または加工する施設は、FDAに施設登録番号(FDA Establishment Identifier: FEI)を取得し登録する必要があります。この要件はMoCRA施行に伴い義務化されたもので、既存施設は2024年7月1日までに、新規施設は化粧品の製造開始後60日以内の登録が求められます。

登録対象となるのは、最終製品の製造だけでなく、充填、包装、ラベル貼付などの工程を行う施設も含まれます。ただし、米国での過去3年間の平均売上が100万ドル未満の場合は中小企業として免除される可能性があります。

提出方法と提出先

施設登録にはオンライン提出が推奨されており、FDAの電子ポータル「Cosmetics Direct」を使用するのが最も効率的です。紙申請の場合は、Form FDA 5066に必要事項を記入し、以下の宛先へ郵送またはメールで送付します。

提出先: Food and Drug Administration, Office of Cosmetics and Colors, Registration and Listing of Cosmetic Product Facilities and Products Program, 5001 Campus Drive, CPK1, Room 1B-046, College Park, MD 20740-3835

登録時には施設の名称、住所、製造する化粧品のカテゴリーなどの基本情報が必要です。登録完了後に発行されるFEI番号は、その後の製品リスト登録や通関申告時にも使用される重要な識別番号となります。


化粧品製品リスト登録(Product Listing)

製品リストの登録要件

米国に輸出する各化粧品製品について、製品名、カテゴリコード、全成分リスト、香料、製造施設などの詳細情報をFDAに届け出る必要があります。既存製品はMoCRA施行後1年以内(2024年7月1日まで)に登録し、以降は毎年更新が義務付けられています。

新規に市場投入する製品については、販売開始から120日以内の登録が必要です。この期限を守らないと、輸入時に通関が遅延する可能性があるため、製品開発の初期段階から登録スケジュールを組み込むことが重要です。

Form FDA 5067での成分情報提出

製品リスト登録にはForm FDA 5067を使用し、特にセクションIVでは全成分をINCI名(国際統一化粧品成分名称)で記載します。成分は含有量の多い順に並べる必要があり、この情報は成分安全性確認の重要な情報源となります。

提出方法は施設登録と同様に、Cosmetics Directなどの電子システムを通じたオンライン提出が推奨されます。紙申請の場合は、施設登録と同じ宛先へForm FDA 5067を郵送またはメールで送付します。

製品リストには製品の用途、対象部位(顔用、ボディ用など)、特殊な機能性成分の有無なども記載するため、製品開発時の技術資料を整理しておくと作業が円滑に進みます。


輸入申告情報(ACE/OASISシステム経由)

通関時のFDAデータ入力

輸入者(Importer of Record)は、米国税関・国境警備局(CBP)のACE/AMSシステムで輸入申告を行う際、FDA用のデータも同時に入力します。化粧品の場合は「COS(Cosmetics)」という産業プログラムコードを使用し、FDA独自の製品コードと製品説明を必須項目として提出します。

製品説明では、英語で製品名や内容物、色、特殊成分などを明記する必要があります。また、輸入者、製造者、発送者の名称と住所も入力し、FEI番号やDUNS番号があれば併せて提供することで審査が円滑化されます。

OASISシステムでの審査プロセス

ACEに入力された情報はFDAのOASISシステムに送られ、現物検査の必要性が判断されます。FDAは製品の成分、製造施設の登録状況、過去の違反歴などを総合的に評価し、リスクに応じてサンプル検査を実施します。

任意項目ではありますが、Affirmation of Complianceコード「COS(Cosmetic Registration Number)」を入力すると、登録済み製品として認識され審査が迅速化する可能性があります。この情報を活用することで、通関時間の短縮が期待できます。


製品ラベル・表示情報の要件

FDA規則に準拠したラベル作成

製品ラベルは21 CFR 701.3などのFDA規則に準拠する必要があり、通関時にも提示が求められます。必須項目として、製品名(Statement of Identity)、内容量(Net Quantity)、全成分リスト、製造者または責任者の名称と住所を英語で表示しなければなりません。

全成分表示ではINCI名を使用し、含有量の多い順に配列します。例えば、FDAガイドでは顔料入りパウダー製品の成分が「Talc (75), Kaolin (7.5), Zinc Stearate (5), Titanium Dioxide (5), Mineral Oil (3)…」のように記載されています。数値は配合比率を示すもので、実務上は日本語併記も推奨されます。

ラベル記載の実践例

前面(Principal Display Panel)には製品名、内容量、製造業者名を配置し、裏面(Information Panel)には全成分リスト、使用上の注意、製造元の住所と連絡先を記載します。例えば、「Radiant Cream (フェイスクリーム)」という製品名に対し、「50 mL」の内容量、「Example Co., Ltd.」という製造業者名を明記するような形式です。

全成分表示の例としては、「Water(水), Glycerin(グリセリン), Sodium Hyaluronate(ヒアルロン酸Na), Tocopherol(トコフェロール)…」のように、INCI名と日本語を併記すると分かりやすくなります。使用上の注意として「目に入らないよう注意」などの警告文も必要に応じて追加します。

表示内容が不十分な場合、例えば成分表示の欠落や英語表記の漏れがあると、通関時に拒否される可能性があるため、事前の入念なチェックが不可欠です。


成分審査関連の提出書類

成分リストと製品概要書

成分審査において中心的な役割を果たすのが、製品概要書や全成分リストです。Form FDA 5067での提出は必須ですが、通関時にも商業インボイスや技術資料で成分組成を明示することが実務上重要になります。

輸入者や通関業者は、成分仕様書(Specification)や成分分析証明書(Certificate of Analysis, COA)で安全性を確認する場合があります。これらはFDAが義務化している書類ではありませんが、通関をスムーズにするために準備しておくことが推奨されます。

禁止・制限成分への対応

米国では、クロロフォルム、ビチオノール、水銀化合物、タルク中のアスベストなど、特定の成分が禁止または制限されています。製品にこれらの成分が含まれていないことを証明するため、配合比率や合格証明書を準備する必要があります。

色素についても特別な規制があり、化粧品に使用される全ての着色料はFDAの承認が必要です。特に石油を原料とする着色料は、FDA承認に加えて色ごとの検査も求められるため、カラー添加物認可証明(Color Additive Certificate)の準備が重要です。

日焼け止め成分についても配合制限があり、これは医薬品としての規制に抵触する可能性があるためです。ただし、配合目的が日焼け防止ではなく製品の変色防止である場合は使用可能で、その旨をラベルに記載する必要があります。

安全性試験結果と分析証明

FDA提出義務はありませんが、輸入者が独自に求めるケースとして、製品概要書(Product Specification)や分析証明書(COA)に成分組成や試験結果をまとめる実務があります。特に皮膚への安全性試験結果や成分含有量分析の結果を添付すると、通関時の信頼性が高まります。

SDS(安全データシート)の添付も検討すべき要素です。これは法的義務ではありませんが、成分の安全性情報を包括的に示す資料として、検査官や通関業者に有用な情報を提供できます。


その他の証明書類と補助資料

Free Sale証明書

Free Sale証明書は、製品が製造国で自由に販売されていることを証明する書類です。FDA自体はこれを要求していませんが、多くの輸入者が輸入許可や販売登録の際に求めるため、準備しておくと取引がスムーズになります。

この証明書は通常、製造国の商工会議所や関連機関が発行するもので、製品が国内市場で適法に流通していることを第三者が保証する形式になります。米国以外の市場への展開も視野に入れている場合、あらかじめ取得しておくと複数市場での活用が可能です。

カラー添加物認可証明

法令上FDA承認が必要な色素を使用する場合、カラー添加物認可証明の提出が求められます。これは色素ごとに個別に発行される証明書で、使用する製品カテゴリーや配合量の上限なども明記されています。

色素を多用する口紅、アイシャドウ、ネイル製品などでは、複数の色素認可証明が必要になる場合もあり、製品開発段階で使用色素のFDA承認状況を確認することが重要です。


提出先と提出方法の実務

FDA内の担当部署

施設登録と製品リスト登録は、FDA食品安全・応用栄養センター(CFSAN)配下のOffice of Cosmetics and Colors内にあるRegistration and Listing Programが担当しています。書類の郵送やメール送付が必要な場合は、前述の住所とメールアドレスを使用します。

オンライン提出が最も効率的で、Cosmetics DirectやESG(Electronic Submissions Gateway)を通じて直接申請できます。これらのシステムでは入力項目の説明やヘルプテキストが用意されており、初めて登録する企業でも比較的スムーズに手続きを進められます。

通関時の申告手順

輸入者は米国税関・国境警備局(CBP)へのエントリーをAMS/ACEで行い、FDA用の項目を入力します。プログラムコード「COS」、製品コード、成分情報などを正確に入力することで、FDAのOASISシステムでの審査がスムーズに進みます。

ACE申告後、FDAが審査を行い、必要に応じて現物検査を実施します。検査が必要な場合、FDAはサンプルを各規定に照らして検査し、問題なければ販売が許可されます。この審査プロセスには数日から数週間かかる場合があるため、余裕を持った出荷スケジュールが推奨されます。

問い合わせ先

届出や輸入審査に関するFDAへの質問は、FDA Food & Cosmetic Information Center(FCIC)を利用できます。電話番号は1-888-723-3366で、メールでの問い合わせも可能です(FDAImports@fda.hhs.govなど)。営業時間は通常、東部時間の平日午前10時から午後1時30分までとなっています。


輸入者・通関業者向け参考資料

FDA公式ガイダンス

FDAは化粧品登録・リスト登録に関する詳細なガイダンス文書「Registration and Listing of Cosmetic Product Facilities and Products」を提供しています。また、Cosmetics Directのユーザーガイドも公開されており、これらを参照することで手続きの詳細を確認できます。

ACE提出に関しては、「Industry Quick Reference Guide to the FDA ACE Supplemental Guide (Cosmetics)」が有用です。この資料には、化粧品エントリー時のプログラムコードや必要データ項目が体系的にまとめられています。

表示・成分ガイドライン

「FDA Cosmetics Labeling Guide」には、ラベルの記載例や表示規則が詳細に掲載されています。この資料を参考にすることで、21 CFR 701.3などの規則に準拠したラベル作成が可能になります。

「Prohibited & Restricted Ingredients in Cosmetics」リストも必ず確認すべき資料です。禁止成分を避けていることを示す資料作成の基礎となる情報が含まれており、成分選定の段階から活用できます。

日本語資料の活用

JETROや貿易協会が提供する解説資料も、実務上非常に有用です。特にJETROの「米国向け化粧品現地規制」ガイドは日本語で詳細な情報を提供しており、英語資料と併せて確認することで理解が深まります。

米国内での登録業者や原料サプライヤーとの連携も重要な要素です。現地のコンサルタントや通関業者と良好な関係を築くことで、規制変更への迅速な対応や実務上のトラブル回避が可能になります。


まとめ:円滑な輸出のための書類準備

米国向け化粧品輸出では、施設登録や製品リスト登録などのFDA届出書類に加え、ラベル・成分表示や成分証明を整えることが不可欠です。MoCRAの施行により規制が強化された現在、これらの書類準備は単なる形式的手続きではなく、市場参入の成否を左右する重要な要素となっています。

提出先はFDAのOffice of Cosmetics and Colorsで、提出方法は主にオンラインですが、必要に応じて紙媒体での提出も可能です。輸入者や通関業者はFDAのACEガイドや表示ガイドを活用し、必要情報を正確に提供することで円滑な通関を実現できます。

早期の準備開始と継続的な情報更新が、米国市場での成功への鍵となります。規制環境は変化し続けるため、FDA公式サイトやJETROなどの情報源を定期的にチェックし、最新の要件に対応していくことが推奨されます。

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