米国市場への医療機器販売を目指す企業にとって、FDA(米国食品医薬品局)への登録は避けて通れない重要なプロセスです。しかし、FURLSというシステムを使った登録手続きは複雑で、初めて取り組む担当者の多くが思わぬ落とし穴にはまり、登録の遅延や差し戻しを経験しています。
本記事では、FURLS(FDA Unified Registration and Listing System)を使った医療機器登録の基本から、具体的な操作手順、そして初心者が陥りやすいミスとその対策まで、実務に即した情報を網羅的に解説します。特に日本のEC事業者や医療機器メーカーの方々に向けて、スムーズな登録を実現するための実践的なガイドとなることを目指しています。
FURLSは「FDA Unified Registration and Listing System」の略称で、FDA Industry Systemsの一部として提供されている医療機器登録の公式プラットフォームです。このシステム内の「Device Registration & Listing Module(DRLM)」を通じて、施設登録とデバイスリスティングを行います。
FDAへの医療機器登録は、大きく分けて2つの段階があります。第一に「初回登録」では施設登録とデバイスリスト作成を行い、第二に「年次更新」では毎年10月1日から12月31日の期間に登録情報の更新を実施します。この年次更新を怠ると、登録が無効化され、米国への輸入が停止される可能性があるため、スケジュール管理が極めて重要です。
登録が完了すると、FDAから登録番号がメールで通知されます。この番号は米国への輸入時に税関で確認されるため、必ず控えておく必要があります。また、登録情報に変更が生じた場合は30日以内の更新が義務づけられており、常に最新の情報を維持することが求められます。
FURLS登録に必要な準備と情報
FURLSでの登録を開始する前に、いくつかの重要な情報と準備が必要です。これらを事前に整えておくことで、スムーズな登録が可能になります。
米国代理人(US Agent)の選定
外国企業がFDAに医療機器を登録する際、必ず米国代理人を1名指定しなければなりません。米国代理人は米国内に所在し、常時連絡可能な法人または個人である必要があります。代理人の役割はFDAと企業の間の連絡窓口となることで、氏名、住所、電話番号、メールアドレスをFURLSに登録します。
重要なのは、登録後にFDAから代理人宛に同意確認のメールが送信される点です。このメールに対して承認返信がなされないと登録が完了しないため、事前に代理人との連携体制を構築し、迅速な対応を依頼しておくことが不可欠です。代理人との契約は公式な書面で交わしておくと、後々のトラブルを避けられます。
公式連絡者(Official Correspondent)の決定
公式連絡者は、施設登録とデバイスリスティング情報を管理する責任者です。事業者(Owner/Operator)が公式連絡者を指定し、この担当者が登録情報の認証・更新、FDAからの問い合わせ対応を行います。
日本企業の場合、英語でFDA手続きができる担当者を公式連絡者に設定することが推奨されます。FURLSやFDAからの通知はすべて英語で届くため、十分な英語力を持つ人材、または専門家のサポート体制を確保することが成功の鍵となります。
DUNS番号の取得
FDAはDUNS番号(9桁の企業識別番号)をUnique Facility Identifier(UFI)として採用しています。このため、施設登録には必ずD&B社(Dun & Bradstreet)に登録済みのDUNS番号が必要です。
日本企業の場合、国内でもD&B登録が必要となる点に注意が必要です。DUNS番号を取得していない状態で登録を進めようとすると、システムエラーが発生して先に進めません。また、登録時に入力したDUNS番号とD&Bに登録されている情報に整合性がない場合もエラーとなるため、事前に正確な番号を確認しておくことが重要です。
年次登録料の支払い
登録を開始する前に、米国財務省のDFUF(FDA User Fee)サイトで年次登録料を支払う必要があります。2025年の登録料は約9,280ドルです。支払い後に発行されるPIN番号と**PCN(Payment Confirmation Number)**は必ず控えておいてください。このPCNはFURLSでの登録確定時に入力が必須となります。
FURLS登録の手順を6ステップで解説
実際のFURLS登録は、以下の6つのステップで進めます。各ステップを確実に完了させることが、スムーズな登録の鍵となります。
ステップ1:登録料の支払いとPCNの取得
まず、DFUFサイトにアクセスして年次登録料を支払います。支払いが完了すると、PIN番号とPCNが発行されます。これらの番号は後のステップで必要となるため、必ず記録しておいてください。PCNを紛失すると登録を確定できないため、安全な場所に保管することをお勧めします。
ステップ2:FURLSアカウントの準備
FDA Industry SystemsのアカウントIDを取得し、公式連絡者アカウントを設定します。既存のアカウントを使用する場合は、重複登録にならないよう注意が必要です。アカウント管理画面(OAA)で「Device Registration and Listing Module」へのアクセス権限を設定します。
ステップ3:施設登録(新規登録)
DRLM内で「Register New Facility」を選択し、必要な情報を入力していきます。具体的には、施設名(英語法人名)、施設住所(英文住所)、事業者情報(Owner/Operator)、DUNS番号などです。外国企業の場合は、ここで米国代理人の情報も同時に提出します。
入力する情報は正確性が求められます。特に施設住所や連絡先に誤りがあると、FDAからの重要な通知が届かない可能性があるため、慎重に確認してください。
ステップ4:デバイスリスティング
取り扱う医療機器ごとに、以下の情報を登録します:
- 製品名(ブランド名・商標名)
- 一般名称
- 製品コード
- 21 CFRの規制番号
- 510(k)番号、PMA番号、またはその他の申請番号
- クラスII/IIIの場合はUDI情報(Device IdentifierとProduction Identifier)
製品コードの選択は特に重要です。間違った製品コードを登録すると、審査で差し戻される可能性があります。既にFDAに登録されている同種機器の製品コードを確認すると、ミスを防ぐことができます。
複数の製品ラインがある場合は、すべての製品を個別にリストする必要があります。一つでも漏れがあると、その製品の輸入時に問題が発生する可能性があるため、製品リストの作成は慎重に行ってください。
ステップ5:情報の確認と送信
すべての情報を入力したら、公式連絡者が全情報の正確性を確約します。そして、ステップ1で取得したPCNを入力して送信します。PCNの入力を忘れると登録が確定しないため、このステップは特に注意が必要です。
ステップ6:年次更新の実施
登録完了後も、毎年10月から12月の期間中にログインして更新作業を行います。この年次更新では、登録情報に変更がないか確認し、新製品の追加や販売終了製品の削除を申告します。更新を怠ると登録が無効化され、輸入停止となる恐れがあるため、必ずカレンダーに記入してリマインダーを設定しておくことをお勧めします。
医療機器クラス別の登録要件の違い
医療機器はリスクレベルに応じてクラスI、II、IIIに分類されます。施設登録とリスティングの基本的な手続きは同様ですが、プレマーケット要件とリスト項目に違いがあります。
クラスI医療機器
クラスIの機器は、大半が510(k)申請を免除されており、一般管理措置のみで販売可能です。FDA登録とリスト作成を完了すれば、多くの場合すぐに販売を開始できます。ただし、一部の製品については特別な要件が課される場合もあるため、製品コードごとの要件を確認することが推奨されます。
クラスII医療機器
クラスIIの機器は、ほとんどが510(k)クリアランスの取得を必要とします。リスト作成時には、対応する510(k)番号または一部製品ではDe Novoの認定番号を入力します。また、UDI(Unique Device Identification)情報の登録も必須となります。UDIはDevice Identifierを含む必要があり、製品のトレーサビリティを確保するための重要な要素です。
クラスIII医療機器
クラスIIIは最もリスクが高い機器であり、原則としてPMA(Premarket Approval)またはHDE(Humanitarian Device Exemption)申請を経て承認を受ける必要があります。リスティングにはPMA番号またはHDE番号の記載が必須です。クラスIIと同様、UDI情報の登録も求められます。
いずれのクラスでも、年次更新を忘れると登録が失効するという点は共通しています。クラスに関わらず、スケジュール管理を徹底することが重要です。
初心者が陥りやすい5つの落とし穴と対策
FURLS登録において、初心者が特に陥りやすいミスと、その対策を具体的に紹介します。
1. DUNS番号の未取得または誤登録
DUNS番号を事前に取得せずに登録を開始すると、施設情報の入力段階でエラーが発生し、先に進めなくなります。また、D&Bに登録されている情報とFURLSに入力する情報に不一致があると、整合性エラーが発生します。
対策: 登録作業を開始する前に、必ずDUNS番号を取得し、D&Bに登録されている企業名、住所などの情報を正確に確認しておきましょう。日本企業の場合、国内のD&B登録手続きに時間がかかる場合があるため、余裕を持って準備することが推奨されます。
2. 支払い完了後のPCN入力忘れ
DFUFサイトで登録料を支払っても、FURLS側でPCNを入力しなければ登録は確定しません。このステップを忘れたまま送信ボタンを押すと、エラーメッセージが表示されます。
対策: 支払い完了時にPCNをメモし、登録の最終ステップで必ず入力するようチェックリストを作成しておきましょう。PCNは重要な番号なので、複数の場所に記録しておくと安心です。
3. リスティング記載漏れや誤った製品コード
販売予定の製品をすべてリストに含める必要がありますが、複数の製品ラインがある場合、一部の製品を登録し忘れるケースがよくあります。また、製品コードの選択を誤ると、輸入時にFDAから指摘を受ける可能性があります。
対策: 製品リストを事前に作成し、すべての製品が個別にリスティングされているか確認してください。製品コードについては、FDAのデータベースで同種製品を検索し、正しいコードを確認することをお勧めします。不明な場合は、専門家に相談するのも有効な手段です。
4. 年次更新の失念
登録完了後、毎年10月から12月の期間に年次更新を行う必要があります。しかし、この更新を忘れると、登録が無効化され、翌年の輸入が停止される恐れがあります。
対策: 年次更新の期間をカレンダーに記入し、複数のリマインダーを設定しておきましょう。更新時には、新製品の追加や販売終了製品の削除も合わせて申告する必要があるため、製品ラインの変更履歴も管理しておくことが重要です。
5. 米国代理人からの同意確認メール未対応
米国代理人を登録すると、FDAから代理人宛に同意確認のメールが送信されます。このメールに対する承認返信がないと、登録プロセスが停止したままになります。
対策: 代理人との事前打ち合わせで、確認メールが届く可能性があることを伝え、迅速な対応を依頼しておきましょう。また、登録後は代理人に連絡を取り、メールが届いているか確認することをお勧めします。
日本企業が特に注意すべきポイント
日本のEC事業者や医療機器メーカーがFURLS登録を行う際、特に注意すべき点をまとめます。
英語対応の徹底
FURLSの操作画面、FDAからの通知、問い合わせ対応など、すべてのコミュニケーションは英語で行われます。操作画面の指示を誤訳すると、申請ミスにつながる可能性があります。社内に十分な英語力を持つ担当者がいない場合は、専門家のサポートを受けることを強く推奨します。
米国代理人との密接な連携
米国代理人は単なる形式的な存在ではなく、FDAとの重要な連絡窓口です。登録プロセスを代理人に事前に説明し、確認メールへの早期対応を依頼しておくことが不可欠です。また、代理人との契約は公式な書面で交わし、役割と責任を明確にしておくと、後々のトラブルを避けられます。
期限厳守の重要性
年度末の支払い・更新期間、米国代理人からの承認期限(10営業日以内とされることもあります)など、FURLS登録には多くの締切が存在します。これらの期限を守らないと、登録が失効したり、米国への納入が遅延したりする可能性があります。
プロジェクト管理ツールを活用し、各ステップの期限を明確に設定し、進捗を可視化することをお勧めします。特に初めての登録では、予想外の時間がかかる場合があるため、余裕を持ったスケジュールを組むことが重要です。
公式連絡者の責任明確化
公式連絡者はFDAからの連絡や更新手続きの主担当となるため、責任者を明確にし、バックアップ体制も整えておく必要があります。担当者が退職や異動する場合は、30日以内に公式連絡者情報を更新しなければなりません。
まとめ
FURLS(FDA Unified Registration and Listing System)を使ったFDA医療機器登録は、米国市場への参入に不可欠なプロセスです。本記事では、基本的なシステムの概要から、必要な準備、6つの登録ステップ、クラス別の要件、そして初心者が陥りやすい落とし穴まで、実務に即した情報を網羅的に解説しました。
成功の鍵は、DUNS番号やPCNなどの必要情報を事前に準備し、各ステップを確実に完了させることです。特に、米国代理人との連携、年次更新のスケジュール管理、正確な製品リスティングは、登録失効や輸入停止を避けるために極めて重要です。
日本企業にとっては、英語対応や期限厳守といった課題もありますが、適切な準備と専門家のサポートを活用することで、スムーズな登録が可能になります。FURLS登録は一度完了すれば終わりではなく、年次更新や情報変更への対応など、継続的な管理が求められます。
本記事が、米国市場への医療機器販売を目指す皆様の一助となれば幸いです。公式マニュアルやFDA発表資料も併せて参照しながら、確実な登録プロセスを進めていきましょう。
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