米国市場でのサプリメント販売に不可欠なラベル規制
米国は世界最大のサプリメント市場であり、日本企業にとって魅力的な輸出先です。しかし、米国食品医薬品局(FDA)は厳格なラベル表示規制を設けており、これに準拠しなければ製品の流通はできません。不適切な表示は販売停止や法的措置のリスクを伴うため、事前の十分な理解が必要です。
本記事では、FDAが定めるサプリメント(Dietary Supplement)のラベル表示義務について、必須項目からSupplement Factsパネルの作成方法、成分表示のルール、越境EC時の実務ポイントまで、輸出企業が押さえるべき全情報を解説します。
FDAが定義するサプリメントとは
FDAでは、サプリメントを「ビタミン、ミネラル、ハーブ(その他の植物)、アミノ酸、その他の栄養物質などを含み、経口摂取される製品」と定義しています。この定義に該当する製品は、食品ではなくサプリメントとして特別な表示規制の対象となります。
サプリメントラベルの2つの成分区分
FDAはサプリメントラベルにおいて、成分を以下の2種類に区別して表示するよう義務付けています:
- 栄養成分:ビタミン、ミネラル、アミノ酸、ハーブなど
- その他成分:充填剤、香料、保存料、着色料などの非栄養成分
この区別を明確にすることで、消費者が製品の栄養価値と添加物を正しく理解できるようになります。
米国サプリメントラベルの必須表示項目
FDAは、サプリメントのパッケージに以下の情報を表示することを義務付けています。
1. 製品の名称(Statement of Identity)
包装の正面(Principal Display Panel)には、製品名とともに「Dietary Supplement」や「Supplement」といった識別語を明示する必要があります。これにより、消費者が一目で製品がサプリメントであると認識できます。
2. 内容量(Net Quantity)
内容量は主表示面に記載します。錠剤の場合は「○○ tablets」、液体は「○○ ml」、粉末は「○○ g」など、適切な単位で表示します。米国で一般的な単位(重量ならグラムやオンス、液体量ならミリリットルやフルイドオンス)を使用することが推奨されます。
3. 栄養成分表示(Supplement Factsパネル)
これはサプリメントラベルの中核となる要素です。パッケージのサイドパネルまたは背面に「Supplement Facts」パネルを設置し、サービングサイズ(1回分の量)や栄養成分の含有量を詳細に表示します。このパネルの構成については後述します。
4. 原材料名(Ingredients)
Supplement Factsパネルとは別に、「その他成分」として非栄養成分を使用量の多い順(重量順)に記載します。充填剤、香料、保存料、着色料などがこれに該当し、「Other Ingredients: 」の見出しで列挙します。
5. 製造業者等の情報
製造者、包装者、または販売者の氏名と所在地を表示します。所在地には市区町村、都道府県(州)、郵便番号を含める必要があります。米国外で製造された製品の場合は、原産国名を英語で明記することがTariff Act(関税法)により義務付けられています。
6. 使用方法(Directions for Use)
FDA法規では明文化された義務ではありませんが、使用方法や用量(例:「1日1回 2錠を服用」)は消費者安全の観点から実務上ほぼ必須です。適切な摂取方法を示すことで、誤用を防ぎます。
7. 注意事項と免責文言
特定の成分を含む場合(例:高用量の鉄)には、FDAが推奨する注意喚起を表示します。また、構造・機能表示を行う場合は、「This statement has not been evaluated by the Food and Drug Administration. This product is not intended to diagnose, treat, cure, or prevent any disease.(本製品はFDAによる評価を受けておらず、疾病の診断・治療・治癒・予防を目的としたものではありません)」という免責文言の表示が法律で義務付けられています。
表示配置の基本ルール
これらの情報は、主要表示面(Principal Display Panel)と情報面(Information Panel)に適切に配置します。主要表示面には製品名と内容量を、情報面にはSupplement Factsパネル、全成分表示、製造者情報などを配置します。
文字サイズは小文字の「o」の高さで最低1/16インチ以上とし、背景と十分なコントラストを保った明瞭な表記が求められます。
Supplement Factsパネルの作成方法
Supplement Factsパネルは、サプリメントラベルの心臓部です。このパネルの構成と表示内容について詳しく解説します。
パネルの基本構成
パネルの最上部には以下を記載します:
- Serving Size(1回分の量):1回に摂取する製品の量
- Servings Per Container(容器当たりの回数):1つの容器で何回分摂取できるか(内容量表示と重複する場合は省略可能)
これらの情報により、消費者は製品全体でどれだけの栄養素を摂取できるかを計算できます。
表示すべき栄養成分の種類
Supplement Factsパネルには、以下の3種類の栄養成分を表示します:
(a)一般栄養素
カロリー、脂質、炭水化物など、2,000kcal基準に基づく規定栄養素を表示します。これらは測定可能な量(0以外)が含まれる場合に義務表示となります。
(b)ビタミン・ミネラル類
ビタミンA、C、D、E、K、B群(チアミン、リボフラビン、ナイアシン、B6、葉酸、B12、ビオチン、パントテン酸)、カルシウム、鉄、マグネシウム、亜鉛などを表示します。各成分は量(g、mg、μg、IUなど)と%DV(Daily Value:1日摂取基準に対する割合)の両方で表示します。
(c)Daily Valueが未設定の栄養成分
多くのハーブ成分やアミノ酸など、FDAがDaily Valueを設定していない成分は、「†」記号を付けて%DV欄を空欄にし、パネル下部に「† Daily Value Not Established」という注釈を追加します。
植物由来成分の表示方法
植物由来成分(ハーブなど)を含む場合は、学名または一般名とともに、使用部位(葉、根、果実、種子など)を明示する必要があります。例えば、「Green Tea (leaf)」や「Ginseng (root)」のように記載します。
プロプライエタリーブレンドの扱い
複数成分の独自配合品(プロプライエタリーブレンド)の場合は、ブレンド全体の総重量を明記し、その下に構成成分を重量順にリストします。ただし、各成分の個別量は開示不要です。
成分量表示と%DV計算のルール
使用する単位
含有量は重量単位(g、mg、μg)または体積単位(ml)で表記します。各栄養素に用いる単位はFDAが指定しており、例えばビタミンCはmg、ビタミンDはμg(IU併記可)などと決まっています。
%DVの計算方法
%DVは以下の式で算出します:
%DV = (成分含有量 ÷ その成分のDaily Value)× 100
結果は四捨五入して整数%で表示します。計算結果が0%となる場合は「<1%」と表示します。例えば、ビタミンC 60mgを含み、そのDaily Valueが90mgの場合、%DVは約67%となります。
%DV表示の基準
%DVは2,000kcal摂取を基準とした値を使用します。パネル下部には「*Percent Daily Values are based on a 2,000 calorie diet.」のような脚注を必ず記載し、計算基準を明示します。
Protein以外の必須成分では原則として%DVを表示しますが、1~3歳児用製品など一部の対象者向けには例外があります。
成分の表示順序とレイアウト規則
成分リストの順序
Supplement Facts内の成分は、基本的に**重量の多い順(降順)**で記載します。ただし、ビタミン・ミネラルなどDaily Value設定済み成分には特別な順序があり、以下の順で並べます:
ビタミンA → C → D → E → K → B群(チアミン、リボフラビン、ナイアシン、B6、葉酸、B12、ビオチン、パントテン酸)→ カルシウム → 鉄 → リン → ヨウ素 → マグネシウム → 亜鉛 → セレン → 銅 → マンガン → クロム → モリブデン → 塩素 → ナトリウム → カリウム
これらを表示した後、その他の栄養成分(ハーブ、植物由来成分、アミノ酸など)を重量順でリストします。
パネルのレイアウトと文字書式
パネルのタイトル「Supplement Facts」は太字かつ最大文字サイズで表示します。項目名(Serving Size、Amount Per Serving、%DVなど)も太字にします。
表全体を枠線で囲み、各成分行の間は細い線(hairline)で区切ります。ヘッダー下および各主要セクション間には太線を引いて情報を明確に区切ります。
文字は読みやすい書体(ゴシック系など)を使用し、文字間隔や行間にも配慮が必要です。背景とのコントラストを十分に確保し、消費者が容易に読めるようにします。
越境EC・米国輸出時の実務ポイント
日本企業が米国市場にサプリメントを輸出・販売する際には、以下の実務ポイントに注意が必要です。
表示言語は必ず英語
米国向け製品のラベルは英語表記が必須です。日本語のみの表記は認められません。製品名、成分名、使用方法、注意事項などすべての情報を英語で記載します。
Supplement Factsパネルの使用
米国向けには「Nutrition Facts」ではなく「Supplement Facts」パネルを使用します。この2つは似ていますが、サプリメントには必ずSupplement Factsを用いる必要があります。
製品識別語の記載
製品名には「Dietary Supplement」や「Supplement」といったサプリメントであることがわかる語句を含めます。これにより、消費者が製品カテゴリーを正しく認識できます。
アレルゲン表示の義務
FDAの食品アレルゲン表示ルールに従い、主要アレルゲン(大豆、乳、ナッツ、小麦、卵、魚、甲殻類、ゴマ)が含まれる場合は「Contains: soy, milk, wheat」などと明確に表示します。アレルギーを持つ消費者の安全を守るため、この表示は極めて重要です。
原産国表示
輸入品の場合、Tariff Act(関税法)により原産国の英語表記が義務付けられています。「Made in Japan」「Product of Japan」などと明記します。
医療的効能表示の禁止
表示内容はFDA規則と矛盾しないよう注意が必要です。医学的・治療的な効能を示唆する文言(「がんを治療する」「糖尿病を予防する」など)は厳格に禁止されています。
構造機能表示(「骨を強くする」「消化をサポートする」など)を行う場合は、FDAへの届出とともに前述の免責文言の表示が義務付けられています。
最新規制の確認
FDAは定期的に規制を改定するため、最新の表示ルールを常に確認する必要があります。FDAの公式ガイドライン「Dietary Supplement Labeling Guide」や21 CFR Part 101などの法規を定期的に参照し、コンプライアンスを維持してください。
まとめ:コンプライアンス遵守が成功の鍵
米国FDAのサプリメントラベル表示規制は詳細かつ厳格であり、すべての要件を満たすことが市場参入の絶対条件です。本記事で解説した必須表示項目、Supplement Factsパネルの作成方法、成分表示のルール、実務ポイントを踏まえ、適切なラベルを作成することで、法的リスクを回避し、消費者の信頼を獲得できます。
米国市場は巨大な可能性を秘めていますが、規制への対応を怠れば、販売停止や製品回収といった深刻な事態を招きかねません。専門家やFDA認定ラベルコンサルタントのサポートを活用しながら、万全の準備で市場参入を進めることをお勧めします。
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