関税とは?基本の仕組みから計算方法まで徹底解説【貿易初心者向け】

米国税制情報

グローバル化が進む現代において、海外から商品を輸入したり、越境ECで商品を販売したりする機会が増えています。その際に必ず関わってくるのが「関税」です。関税は輸入品に課される税金であり、国家の財政収入や国内産業保護という重要な役割を担っています。

本記事では、関税の基本的な仕組みから種類、計算方法、国際的なルール、日本と米国の制度比較まで、貿易初心者や越境EC事業者が押さえておくべきポイントを網羅的に解説します。関税への理解を深めることで、輸入コストの予測や適切な通関手続きが可能になり、ビジネスのリスク管理にもつながります。


関税とは何か―その目的と歴史

関税の定義と二つの主要機能

関税とは、外国からの輸入品に対して課される税金です。輸入者は税関に輸入申告を行い、商品の価格や数量に基づいて算出された関税を納付する義務があります。この関税収入は国の財政に組み込まれ、歴史的には国家の重要な財源として機能してきました。

現代における関税の主な目的は二つあります。一つは財源確保です。関税収入は国税の一部となり、公共サービスや社会インフラの維持に充てられます。もう一つは国内産業の保護です。輸入品に税を課すことで外国製品の価格を高くし、自国製品の競争力を維持する役割を果たします。

関税の歴史的背景

関税の歴史は古く、古代エジプトやローマ帝国でも交易品に対する徴税が行われていた記録があります。日本でも奈良時代には外国船がもたらす輸入品に課税する仕組みが存在し、江戸時代には幕府が鎖国体制下で限られた貿易を統制しつつ関税を徴収していました。

明治時代以降、日本は近代的な関税制度を導入し、高率の関税をかけて国内産業を育成する政策を採用しました。20世紀前半の世界恐慌期には、主要国が高い関税率を課してブロック経済を形成し、世界的な貿易萎縮と対立の一因となりました。

第二次世界大戦後、こうした歴史的反省から関税と貿易に関する一般協定(GATT)が締結され、関税引き下げを柱とする自由貿易体制が推進されました。その結果、先進国の平均関税率は1940年代の約40~50%から現在では数%程度にまで大幅に引き下げられています。


関税の種類―従価税・従量税・混合税

関税は課税の基準によっていくつかの種類に分類されます。主要な形態は従価税従量税混合税の三つです。

従価税―価格に応じた課税

従価税は、輸入品の価格(価値)に応じて課税する関税です。例えば、関税率20%の品目を価格50万円分輸入した場合、50万円の20%に当たる10万円が関税額となります。

従価税のメリットは、インフレに対応しやすい点です。物価が上昇して輸入品の価格が上がっても、それに比例して関税収入も増えるため、実質的な税収の目減りを防ぎやすくなります。一方で、輸入品の価格が非常に低い場合には関税額も低く抑えられてしまい、安い輸入品から国内産業を守る効果が十分発揮されにくいというデメリットがあります。

従量税―数量に応じた課税

従量税は、輸入品の数量(重さ・体積・個数など)に応じて課税する関税です。例えば、関税率が「1kgあたり200円」に設定されている商品を50kg輸入した場合、200円×50kgで1万円の関税となります。

従量税のメリットは、税額の計算が単純で分かりやすい点です。しかし、物価変動に対応しづらいというデメリットがあります。商品価格が大きく下落しても重量あたり固定額の関税を徴収するため、輸入品の価格に対する関税負担割合が相対的に重くなる可能性があります。

混合税―二つの方式の組み合わせ

混合税は、従価税と従量税を組み合わせた形式の関税です。主に国内産業の保護を強化する目的で採用されることが多い形態です。

選択税は、同じ品目に対して従価税と従量税の両方の額を計算し、そのうち高い方(場合によっては低い方)を適用する方式です。複合税は、従価税と従量税の両方を同時に課す方式で、輸入品に二重のコスト負担を課すことで輸入を抑制する効果があります。

日本では、一部の繊維製品に選択税が、乳製品などに複合税が適用されています。


関税の計算方法―課税価格の決定

CIF価格による課税価格の算出

関税額の算出は、課税標準となる輸入品の価格または数量に関税率を乗じるという原則に基づきます。従価税の場合、「課税価格」の決定がポイントになります。

通常、商業目的で輸入される貨物の課税価格は、その取引価格に運賃・保険料等を加えたCIF価格と定義されています。つまり商品そのものの価格(FOB価格)に、海外から日本までの輸送コスト(運賃)や保険料を合算した金額が関税計算の基礎になります。

外貨換算と端数処理

輸入取引では外国通貨で代金決済されることが多いため、課税価格を算出する際にはその金額を日本円に換算する必要があります。日本の税関では、輸入申告日の属する週の前々週における為替レートの平均値を「税関公示レート」として定めており、申告時にはその公示レートで換算した円貨額を用います。

なお、課税価格の端数処理として1,000円未満は切り捨てとし、算出した関税額も100円未満切り捨てとなるルールがあります。

個人輸入の特例措置

個人が自分で使う目的で海外から商品を購入・輸入する場合、その購入価格(小売価格)の60%を課税価格とみなす「簡易関税率」という制度があります。これは卸売価格相当額を基準とすることで、一般消費者が支払う関税負担を若干軽減する措置です。

ただし、この簡易評価の適用には条件があり、明らかに商業目的の大量輸入でないことなどを税関が判断します。


輸入時の関税手続きの流れ

貿易取引では、商品を国境を越えて移動させる際に通関手続きが必要です。輸入時の関税課税に関わる流れを説明します。

輸入申告とインボイスの提出

輸入者(または通関業者)は、貨物が港や空港の保税地域に搬入された後、税関に対して輸入(納税)申告書を提出します。申告書には品目ごとの詳細な情報(品名、HSコード、数量、価格、原産国など)を記載し、インボイス(商業送り状)、パッキングリスト、船荷証券など必要書類を添付します。

税関による審査と検査

税関は提出された申告内容をもとに書類審査を行います。申告された品目分類や原産地、価格が妥当か、禁止品や許可制品が含まれていないかなどをチェックします。必要に応じて税関職員による貨物の実地検査(開梱検査)が行われることもあります。

関税・消費税等の納付

税関は申告内容に基づき関税額を計算し、輸入者に納付すべき税額を通知します。輸入者は関税及び消費税などの輸入諸税を納付します。日本では関税の納付は銀行振込や口座振替、インターネットバンキング等で行うことができます。

輸入許可の取得

税金の納付が確認され、税関手続き上の問題がなければ、税関はその貨物の輸入許可を与えます。輸入許可が下りると、貨物は保税地域から国内に引き取ることが可能となり、自由に販売・使用できる状態になります。

輸出の場合の流れも輸入と似ていますが、基本的に多くの国で関税(輸出税)は課していません。輸出手続きでは通常、輸入時と違って関税の支払いは不要です。


国際的な関税制度―WTOとFTA

WTOの最恵国待遇原則

関税は各国の政策手段ですが、その運用は世界貿易機関(WTO)をはじめとする国際ルールの枠組みによって大きく影響を受けています。特に重要なのがWTOの最恵国待遇(MFN)原則です。

最恵国待遇とは、「ある国に与えたもっとも有利な貿易上の待遇を、他のすべての加盟国にも平等に適用しなければならない」という原則です。この原則により、WTO加盟国同士は互いに差別のない公平な関税率で貿易を行うことが保障されています。

FTA・EPAによる特恵関税

最恵国待遇にはいくつかの例外が認められています。代表的なのが自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)です。FTA/EPAは特定の国同士が互いに関税を引き下げたり撤廃したりする協定で、協定締結国間ではWTOの最恵国税率よりも低い特別の関税率(協定税率)が適用されます。

例えば、日本とオーストラリアの経済連携協定では、豪州産の牛肉に対する関税を段階的に引き下げる取り決めがあります。FTA/EPAを活用すれば、加盟国内の貿易はより安価に行えるため、近年多くの国が二国間・地域間協定を結んで関税の引き下げを進めています。

特恵関税制度(GSP)

もう一つの例外が特恵関税制度です。これは先進国が発展途上国からの輸入品に対して関税を一方的に優遇(引き下げや無税化)する制度です。途上国の経済発展を支援する目的で設けられており、WTOも開発途上国支援の観点から最恵国待遇の例外として認めています。


日本と米国の関税制度比較

日本の関税制度の特徴

日本の関税制度は、工業製品については比較的低く、農産品については高めに設定されている点が特徴です。日本は高度経済成長期以降、自動車や電子機器など多くの工業製品の関税率を引き下げてきました。例えば、乗用車(完成車)の関税は1978年以降完全撤廃されています。

一方で、米や乳製品、肉類、砂糖など農林水産品には依然として高関税が課されています。日本のコメの関税は約200%に達するとされています。このように日本は工業品よりも農業・食品部門で高い保護を行っているのが特徴です。

日本全体の平均関税率は約3.9%で、米国の約3.3%と大差ない水準です。日本の通関制度上の特徴として、輸入時に消費税を課税する点も重要です。日本国内で販売・消費される以上、輸入品であっても一律に消費税がかかるため、輸入関税と合わせて納税することになります。

米国の関税制度の特徴

米国では関税率表として「HTSUS (Harmonized Tariff Schedule of the United States)」が用いられており、全ての輸入品は調和制度(HS)の10桁コードに従って分類されます。HTSUSの税率欄は大きく三つの区分に分かれています。

**一般税率(General Rate)**は最恵国待遇(MFN)税率であり、WTO加盟国や米国と正常な貿易関係にある国からの輸入品に適用される通常の関税率です。**特別税率(Special Rate)**はFTAやGSPなどによる特恵関税率を指します。**法定税率(Column 2 Rate)**は非最恵国税率で、米国と通常の通商関係がない一部の国からの輸入品に適用される非常に高い関税率です。

多くの品目では一般税率が適用され、その平均水準は約3.3%とされています。工業製品の多くは関税率が0~5%程度と低く抑えられており、WTO加盟国からの輸入であれば日本と同様に関税負担は小さいです。

米国は近年、通商政策上の関税措置を頻繁に講じています。2017年以降、鉄鋼製品に25%、アルミニウム製品に10%の追加関税を課す措置や、中国からの輸入品の約2/3に対し最大25%の追加関税を課す措置が取られました。これらは通常の関税率に上乗せする緊急・制裁的な関税で、結果として米国の平均関税率は大幅に上昇しました。


まとめ―関税の理解がビジネス成功の鍵

関税は国際貿易において避けて通れない重要な要素です。その基本的な仕組みを理解することで、輸入コストの正確な予測、適切な通関手続き、そして国際的なルールの活用が可能になります。

従価税と従量税の違い、CIF価格による課税価格の算出方法、WTOの最恵国待遇原則、FTA/EPAによる特恵関税の活用など、押さえておくべきポイントは多岐にわたります。特に越境EC事業者や貿易初心者にとっては、取引相手国との間にFTAがあれば関税率が下がる可能性があることや、追加関税措置の有無を確認することが重要です。

正確な申告と納税を行うことで、トラブルを防ぎ、ビジネスのリスク管理につながります。関税制度は各国で異なる部分もありますが、国際ルールに基づいて運営されているという基本原則を理解しておくことが、グローバルビジネスを成功させる第一歩となります。

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