米国における関税回避事例の実態:2025年最新版│取締り強化と企業リスク

米国税制情報

米国の関税回避取締り強化の現状

米国では輸入品に対する関税回避行為が多発しており、連邦当局による摘発が急増しています。司法省は貿易・関税詐欺の取締りを重点課題と位置付け、不正な品目分類、価格の過小申告、原産地偽装などに対し刑事・民事の双方で厳格な措置を講じる方針を明確にしています。

米国税関・国境警備局が2025年1月から8月の間に実施した不正貿易取締法による調査では、89件で計4億ドル以上の未払い関税を摘発したと報告されています。これらの数字は、関税回避が単なる個別事例ではなく、組織的かつ大規模に行われている実態を示しています。

本記事では、2024年から2025年にかけて摘発された主要な関税回避事例を詳細に分析し、どのような手口が用いられ、当局がどのような対応を取り、違反者にどのような罰則が科されたのかを明らかにします。

主要な関税回避手法とそのリスク

関税回避には複数の典型的手口が存在します。これらを理解することは、企業のコンプライアンス体制構築において不可欠です。

品目の誤分類(Misclassification)

司法省が特に注目しているのが、商品を意図的に誤った品目に分類して低税率を適用させる手法です。調和関税品目表における分類を操作することで、本来課されるべきアンチダンピング関税や相殺関税を回避するケースが典型例となっています。

価格の過小申告(Undervaluation)

輸入申告書類において商品の実際の価値を大幅に低く申告する手法です。差額は秘密裏に海外送金などで決済され、税関の目から隠されます。この手口は実行が比較的容易なため、多くの事例で確認されています。

原産地偽装(False Country-of-Origin)

高税率の国から輸入した製品を、第三国を経由させることで低税率国の製品として偽装する手法です。特に自由貿易協定を悪用したスキームが近年増加しており、当局も重点的に監視を強めています。

実際の摘発事例から見る手口と罰則

Allied Stone社:クォーツ製品の誤分類で1,240万ドルの和解

テキサス州ダラスのカウンタートップ製品供給会社Allied Stone Inc.とその社長は、2018年9月から2023年2月にかけて中国製のクォーツ製品をマーブルや結晶化ガラス等の関税率の低い別の商品と虚偽申告し、アンチダンピング関税と相殺関税を免れようとしたとして摘発されました。

税関・国境警備局と司法省による共同調査の後、不正請求防止法違反として民事責任を追及され、1,240万ドルの支払いで和解しました。この和解金には未払い関税の補填と罰金が含まれています。

税関関係者は、虚偽情報を提供する行為は違法であり、米国企業の公平な競争を守るため違反者に責任を負わせると強調しています。

MGI International:プラスチック樹脂の自主開示で680万ドル

ニューハンプシャー州とニューヨーク州に拠点を置くMGI International傘下の輸入業者2社は、中国から輸入されたプラスチック樹脂原料について、輸入申告の際に原産国および価格を正しく申告せず、本来支払うべき関税を過少に申告していました。

2019年5月頃から継続していたこの不正について、2024年に企業が自主的に税関と連邦検察へ未申告の関税を自己申告したことが特徴的です。企業側の自発的開示を受けて当局が調査を実施し、適時に自己申告・調査協力・是正措置を行ったことを考慮して減免措置を適用、680万ドルの民事和解金の支払いで解決しました。

この事例は、違反を発見した際の自主開示が処分軽減につながることを示す重要な先例となっています。

Ecosolargy社:太陽光パネルをLED照明と偽装

元業務担当副社長が関与したこの事例では、中国から輸入された太陽光パネルを「LED照明」と虚偽の品目分類を行い、調和関税品目表コードを偽って過小申告し、アンチダンピング関税と相殺関税の適用を免れようとしたとされています。

2024年10月に連邦政府が国際貿易裁判所に民事訴訟を提起し、約30万ドルの未払い関税と約80万ドルの民事制裁金の支払いを求めています。訴訟が認められれば、被告は不正申告による関税未納額とその数倍にのぼる罰金を支払う責任を負う可能性があります。

PT UBS Gold社:インドネシア製宝飾品の大規模原産地偽装

2025年11月に摘発されたこの事例は、総額12億ドル相当以上の宝飾品が不正な手口で米国に輸入され、約1億2千万ドル相当の関税が未払いとなっていたという大規模な関税詐欺事件です。

手口は二段階に分かれています。第一に、インドネシア製の宝飾品をヨルダンへ送ってから米国に輸出し「ヨルダン産」と虚偽申告する手法で、2021年以降に課されることになった関税を免れるため迂回ルートが用いられました。

第二に、2025年に追加関税が課されると、米国からの金スクラップをヨルダンに輸出して現地で宝飾品とすり替え、それを「米国製品の加工返品品」と偽って関税や追加関税を回避しました。

この不正は2021年頃から2025年10月まで継続的に行われ、推計約8,647万7,000ドルの関税が未払いとなっていたとされています。

2025年11月に告発状が公開され、関係者の逮捕と約1,336万ドル相当の金地金が押収されました。本件は連邦刑事事件として起訴されており、有罪が確定した場合、被告らには最長20年の懲役刑に加え、多額の罰金が科される可能性があります。

C’est Toi Jeans社:衣料品インポーターの過小申告とマネーロンダリング

ロサンゼルスのファッション地区にある衣料品卸会社とその経営陣は、密輸組織絡みのマネーロンダリングおよび数百万ドル規模の関税逃れに関与したとして起訴され、2024年に有罪評決を受けました。

インボイスを改竄して輸入価格を過小申告する典型的な手口で、海外メーカーから購入した衣料品の実際の価値を大幅に低く虚偽申告し、差額を密かに海外送金する形で決済していました。この過小申告スキームには、麻薬取引の売上現金を商品の代金に充てるマネーロンダリングも絡んでいました。

合計515件・総額約1億3,715万ドルの海外送金を利用して輸入代金の一部を秘匿し、少なくとも5,100万ドル以上の輸入額が過少申告され、約840万ドル相当の関税・輸入税が本来より支払われずに済んでいたと算定されました。

2024年10月の裁判で有罪評決を受け、2025年9月に刑が言い渡されました。会社は5年間の保護観察処分の下に置かれ、1,150万ドルの罰金および1,500万ドルの追徴金が科され、社長は懲役103か月の実刑判決に加え、800万ドルの罰金と1,900万ドル以上の追徴金の支払い命令を受けました。

企業が直面するリスクと対策

これらの事例から明らかになるのは、関税回避に対する当局の姿勢が極めて厳格であるという事実です。違反が発覚した場合、企業は以下のようなリスクに直面します。

金銭的リスク

未払い関税の追徴に加え、その数倍にのぼる民事制裁金や刑事罰としての罰金が科されます。上記の事例では、数百万ドルから数千万ドル規模の支払いが命じられています。

刑事責任のリスク

悪質な事案では刑事訴追され、経営者個人が実刑判決を受ける可能性があります。C’est Toi Jeans社の事例では、経営者が7年から8年以上の実刑判決を受けました。

事業継続リスク

保護観察処分、輸入特権の停止、取引先からの信頼喪失など、事業継続そのものが困難になる可能性があります。

コンプライアンス体制の構築

これらのリスクを回避するために、企業は以下の対策を講じる必要があります。

  • 品目分類の正確性を確保するための社内チェック体制の構築
  • 原産地証明書の厳格な管理と検証プロセスの導入
  • 取引価格の適正性を確認する内部監査の実施
  • 関税法遵守に関する従業員教育の徹底
  • 疑義が生じた場合の専門家への相談体制の確保

また、MGI Internationalの事例が示すように、万が一違反を発見した場合には、速やかに自主開示を行うことで処分が軽減される可能性があります。隠蔽を図ることは最悪の選択肢です。

まとめ:コンプライアンスこそが最大のリスク管理

米国における関税回避の取締りは年々強化されており、2025年の摘発事例は、従来以上に広範囲かつ厳格に法執行が行われていることを示しています。特にアンチダンピング関税や相殺関税の回避を目的とした不正は重点監視対象となっており、今後もさらなる摘発が予想されます。

これらの事例から学ぶべき教訓は明確です。短期的な利益を追求して関税回避を図ることは、企業に壊滅的な打撃をもたらす可能性があります。一方で、適切なコンプライアンス体制を構築し、誠実に関税法を遵守することこそが、長期的な事業の安定と成長につながります。

輸入業務に携わる企業は、これらの事例を他山の石として、自社の貿易コンプライアンス体制を今一度見直すべきでしょう。

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