アメリカに滞在する外国人にとって、現地の銀行口座開設は生活の基盤となる重要なステップです。「ソーシャルセキュリティ番号(SSN)がないと口座は作れない」という誤解が広まっていますが、実際には多くの銀行がSSNなしでも口座開設を受け付けています。
2025年現在、銀行業界では外国人顧客への対応が大きく進化しており、観光客、留学生、就労ビザ保持者など様々なステータスの方が口座を開設できる環境が整っています。本記事では、主要銀行の対応状況、必要書類、ビザ種別ごとのポイント、そして最新のフィンテックサービスまで、米国での銀行口座開設に関する情報を包括的に解説します。
外国人が口座開設できる主要米国銀行
バンク・オブ・アメリカ(Bank of America)
全米に3,900以上の支店を持つ大手銀行で、外国人顧客への対応が充実しています。公式サイトでは留学生や専門職向けの専用案内ページを設けており、SSNなしでも外国の納税者番号(FTIN)と2種類の身分証があれば口座開設が可能です。
特徴
- 最低初回預金:100ドル程度から
- 200以上の言語での通訳サービス
- デビットカード、オンラインバンキングなど基本サービス完備
- 多言語対応のモバイルアプリ
チェース銀行(Chase)
5,000以上の支店と15,000台以上のATMを持つ全米最大級の銀行です。Chase Total Checking®など、条件付きで月額手数料無料となる口座を提供しています。
特徴
- 学生向け口座あり(24歳以下は特典あり)
- 幅広い口座タイプの選択肢
- パスポート等のIDと住所証明で開設可能
- Zelle送金など便利な機能
ウェルズ・ファーゴ(Wells Fargo)
支店数・顧客数で上位に入る大手銀行で、Everyday Checking口座は初回預金25ドルから開設可能です。月額手数料10ドルも一定条件で免除されます。
特徴
- メキシコのマトリキュラ領事IDなど外国政府発行IDも受付
- スペイン語対応など多言語サービス
- 支店によってはバイリンガルスタッフ常駐
シティバンク(Citibank)
国際展開するシティグループ傘下の銀行で、世界各国にネットワークがあります。Citibank Access Checking口座は5ドルの月額手数料(条件次第で無料)で開設できます。
特徴
- グローバルネットワークの強み
- 母国に口座がある場合のサポートサービス
- 大都市圏では多言語スタッフ対応
その他の選択肢
PNC銀行は公式に「SSNがなくてもITIN(個人納税者番号)や他のIDで口座開設できる」と発表しており、東部中心に展開しています。U.S.バンクも全米5位の規模で、$25から開設可能なSmartly® Checking口座などを提供しています。
また、移民コミュニティに強い**信用組合(Credit Union)**も有力な選択肢です。特に「Juntos Avanzamos」認定を受けた信用組合は、移民や非市民へのサービスに積極的で、スペイン語対応やITIN受け入れを行っています。
口座開設に必要な書類と準備手順
身分証明書(本人確認書類)
政府発行の写真付きIDが最低1点、多くの場合2種類必要です。
主要な身分証明書
- 有効なパスポート(外国籍):最重要書類
- 外国または米国の運転免許証
- 母国の政府発行ID
- 学生証(写真付き)
- ビザの入国許可証
各銀行で受け入れ可能なIDの種類が異なるため、事前に確認することをおすすめします。
住所証明
アメリカでの居住所を証明する書類が求められます。
有効な住所証明書類
- 公共料金の請求書(発行2か月以内)
- 賃貸借契約書
- 銀行からの郵便物
- 給与明細
銀行によっては米国内の住所だけでなく、母国の住所も併せて申告・証明するよう求められる場合があります。渡米直後でまだ住所が定まっていない場合は、友人宅や職場の住所を一時的に使用できるか相談してみてください。
税務用の識別番号
口座開設時の本人識別や利息の税務報告のために、米国の納税者番号の提示を求められることがあります。
税務識別番号の選択肢
- SSN(ソーシャルセキュリティ番号):就労許可がある場合
- ITIN(個人納税者識別番号):SSNを持たない外国人向け
- 外国の納税者番号(FTIN):銀行によっては受付可能
- IRSフォームW-8BEN:SSNもITINも無い場合に提出
Bank of Americaでは「米国のTIN/ITINが未発行なら不要だが、母国の納税者番号を提出する」手順になっています。
初回預入金
銀行によっては口座開設時に最低預入額が定められています。
一般的な最低預入額
- Wells Fargo:$25から
- Bank of America:$100程度
- PNC銀行:初回預金なしで開設可能な口座もあり
現金や小切手、他口座からの送金などで用意します。
ITINの取得方法
SSNを持たず今後長期滞在する場合は、ITINの取得を検討してください。ITINは米国で納税義務がある非居住者向けにIRSが発行する番号です。
取得手順
- IRSフォームW-7を記入
- 本人確認書類(パスポートや各種ID)を準備
- 納税義務を示す書類を添付
- IRSのオフィスへ郵送または公認の受付代理機関経由で提出
- 正しく申請が受理されれば通常7週間程度で発行
オンライン銀行・フィンテックサービスの活用法
Revolut(レボリュート)
2023年より、合法的に米国滞在中の非市民(学生ビザ・観光ビザ・就労ビザなど)でSSNやITINを持たない人でも口座開設が可能になりました。
特徴
- 政府発行の身分証明書(パスポート等)と有効なビザのみで開設可能
- 多通貨対応のデビットカード
- リアルタイム為替レートでの両替
- 給料の早期アクセス(2日前支給)
注意点
- SSN未保有者はクレジット機能や投資サービスが利用不可
- 一部機能に制限あり
Wise(ワイズ、旧TransferWise)
イギリス発のフィンテック企業で、マルチカレンシー口座を提供しています。
特徴
- アメリカにいなくてもオンラインで開設可能
- 米国内の銀行口座に対応する口座番号(ABAルーティング番号)発行
- 為替手数料が安い
- デビットカード発行
制約事項
- 現金や小切手の入金には非対応
- 小規模の送金では手数料が割高になる場合あり
- ローンやクレジットカード等の包括的なサービスは提供していない
Chime(チャイム)
手数料無料や早期給与受取サービスで人気のオンライン銀行口座です。
利用条件
- 有効なSSNが必須(ITINでは代用不可)
- 米国の居住者(市民または合法的居住者)
- 米国内の郵便住所・携帯番号が必要
SSNを既に持つ留学生や就労者にとっては、完全オンラインで口座開設・管理ができる利便性がメリットですが、外国発行の身分証は受け付けられません。
滞在ステータス別の口座開設ポイント
観光(短期滞在者)の場合
観光ビザ(B1/B2など)やビザ免除プログラムで短期滞在する外国人も、米国滞在中に銀行口座を開設すること自体は可能です。
注意点
- 住所証明のハードルがやや高い
- ホテル滞在の場合は予約確認書や滞在先のレターを用意
- 知人宅の住所を一時的に使用する方法も検討可能
手続き
- W-8BENフォームを使用して口座開設するケースが多い
- 帰国後も口座維持は可能だが、オンラインアクセスやカードの海外使用の確認が必要
- モバイルアプリを設定し、国際連絡先でも問題なくログイン・取引できる状態にする
留学生の場合
留学生(F-1ビザなど)は米国内で生活基盤ができるため、銀行口座も比較的スムーズに開設できます。
必要書類
- パスポート
- 学校の入学許可書類(I-20)
- 住所証明(学生寮やアパートの契約書等)
ポイント
- 大学のオリエンテーションで地元銀行の担当者が来て口座開設手続きを行うこともある
- キャンパス内アルバイトやCPT等で働く場合はSSN取得が可能
- 学生向けに月額手数料無料の口座を活用
- 卒業後の就労ビザへのステータス変更時、在学中からの取引実績が有利に
就労ビザ保持者の場合
就労ビザ(H-1BやL-1、Eビザなど)で渡米する場合、雇用主を通じてSSN取得手続きが行われるため、比較的早期にSSNを入手できます。
開設のタイミング
- SSN取得前でもパスポートと就労ビザで開設可能
- 給与の直接入金を受け取るため、渡米後できるだけ早く開設
その後の活用
- 数か月間の取引履歴を作ることでクレジットヒストリーの構築が開始
- 将来的な住宅ローンや自動車ローンに有利
- 事前にアポイントメント予約をしておくと安心
外国人向けサポートが充実した銀行・プログラム
Bank of Americaの多言語サービス
206言語以上での通訳サービスを提供しており、店舗で希望の言語でスタッフがサポートします。スペイン語・中国語・ポルトガル語などバイリンガルの銀行員がいる支店も多く、オンラインバンキングやモバイルアプリも英語・スペイン語の二言語対応が整っています。
信用組合の移民向けサービス(Juntos Avanzamos)
Juntos Avanzamos認定を受けた信用組合は、移民や非正規滞在者でも受け入れる姿勢が特徴です。
サービス内容
- メキシコなど各国の領事館発行ID、外国パスポート、ITINなど幅広い本人確認書類を受付
- スペイン語をはじめ顧客の母語で対応
- 地域コミュニティと連携した金融教育や少額融資
全米で100以上の信用組合がこのネットワークに加盟しています。
その他の多言語対応
ChaseやWells Fargoはスペイン語専用のカスタマーサービスラインを設け、ウェブサイトもスペイン語版を用意しています。コールセンターでは日本語や韓国語などで対応できるスタッフに繋いでもらえる場合もあります。
2025年の最新規制とバンキングトレンド
口座開設ハードルの低下
かつては「SSNがないと口座は作れない」という認識が一般的でしたが、これは誤解であり、多くの銀行が実際にはSSN無しでも口座開設を受け付けています。Bank of AmericaやPNC銀行が公式に「非居住者でもSSN不要で開設可能」と打ち出しており、業界全体で外国人顧客の受け入れ態勢が整いつつあります。
規制面の安定性
2001年の愛国者法以降、金融機関には厳格な本人確認(CIP: Customer Identification Program)が義務付けられていますが、「米国発行のIDやSSNでなくても受け入れてよい」ことが明文化されています。米国の規制当局FAQでは「SSNやITINが無い場合、パスポート番号と発行国情報などを代わりに取得すればよい」と案内されており、法律上は外国人でも口座開設は問題ない状態です。
オンライン化の進展
銀行サービス全般のデジタル化が進み、口座開設後の運用はオンライン中心で非常に便利になっています。モバイルバンキングアプリで残高確認や送金が24時間可能で、Zelleなどを使った個人間送金も広く普及しています。
ただし、大手銀行の場合は初回の口座開設手続きは支店窓口で対面というところが依然として多く、これは不正口座開設を防ぐ意図もあります。そのため「渡米前にオンラインで口座を用意しておく」のは基本的に難しく、渡米後に直接銀行を訪ねるのが近道です。
フィンテックの台頭と競争
Revolutは「無視されてきた非SSN保有者」に焦点を当てて参入し、数百万の顧客獲得を狙っています。Wiseも全世界800万以上のユーザーを抱え、留学生やデジタルノマドの定番サービスとなりました。これらの競合出現により、従来の銀行もサービス向上に力を入れており、ユーザー側にとっては選択肢が広がり、利便性が増す好循環が生まれています。
まとめ:外国人の米国銀行口座開設は以前より容易に
2025年の時点で、外国人がアメリカで銀行口座を開設するハードルは以前より確実に下がっています。主要銀行であればパスポートと住所証明さえ準備すればSSNが無くても口座を作れますし、フィンテックの活用で渡米直後の資金管理もスムーズに行えます。
重要ポイント
- SSNなしでも多くの銀行で口座開設が可能
- 必要書類は事前に銀行の公式サイトで確認
- 滞在ステータスに応じた準備と対応が重要
- フィンテックサービスも有力な選択肢
- 多言語サポートのある銀行を選ぶと安心
観光・留学・就労といった各ステータスに応じた注意点を押さえつつ、信頼できる金融機関を選べば、米国での金融生活の第一歩を安心して踏み出せるでしょう。
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