【2025年版】米国法人形態の完全比較ガイド|日本人オーナーが知るべきC法人・LLC・S法人の選び方

米国税制情報

米国法人設立を考える日本人経営者が直面する選択

米国でビジネスを展開する際、最初に直面するのが法人形態の選択です。C法人(C Corporation)、LLC(Limited Liability Company)、S法人(S Corporation)という3つの主要な選択肢があり、それぞれ税制や運営の柔軟性、外国人株主の受け入れ可否が大きく異なります。特に日本人オーナーにとっては、外国人としての制限や国際税務の観点から、慎重な検討が必要です。本記事では、各法人形態の特徴を詳しく比較し、越境ECやFDA関連業務を視野に入れた最適な選択肢を提示します。

米国3大法人形態の基本構造

C法人(C Corporation)の特徴

C法人は米国で最も一般的な法人形態で、株式会社に相当します。連邦税法上、法人は独立した納税主体として扱われ、2017年の税制改革(TCJA)以降、フラット21%の法人税率が適用されています。C法人の大きな特徴は、株主数に制限がなく、外国人や法人も自由に株主になれる点です。また、複数の株式クラスを発行できるため、資金調達の柔軟性が高く、ベンチャーキャピタルからの投資を受けやすい構造になっています。

一方で、C法人には「二重課税」という課題があります。法人レベルで利益に対して21%の税金が課され、さらに株主が配当を受け取る際に個人所得税が課されるため、実質的に同じ利益が二度課税されることになります。

LLC(Limited Liability Company)の柔軟性

LLCは州法に基づく法人形態で、有限責任会社に相当します。最大の特徴は税務上の柔軟性です。デフォルトでは、複数メンバーの場合はパートナーシップ、単一メンバーの場合は個人事業として扱われ、利益は「パススルー」されてメンバーの個人所得として課税されます。つまり、法人レベルでの課税が発生しません。

LLCは設立手続きが比較的簡易で、経営構造も柔軟に設計できます。外国人もメンバーになれるため、日本人オーナーにとってアクセスしやすい選択肢です。ただし、Form 8832を提出すればC法人扱いを選択することも可能で、ビジネスの成長段階に応じて税務戦略を変更できる余地があります。

S法人(S Corporation)の制約と利点

S法人は税法上の特別な選択で、C法人として設立した後にIRSにForm 2553を提出することで取得できます。最大の利点は、法人レベルでの課税がなく、利益が株主に直接パススルーされて個人所得として課税される点です。これにより二重課税を回避できます。

しかし、S法人には厳格な制限があります。株主数は100人以下に限られ、さらに重要なのは、株主は米国市民または米国税法上の居住者でなければならないという点です。この制限により、日本在住の日本人は原則としてS法人の株主にはなれません。また、株式は単一クラスのみで、優先株などの発行はできません。

連邦税・州税における課税の違い

連邦税レベルでの比較

C法人は法人税率21%で課税され、利益を企業内に留保する場合、この税率のみが適用されます。個人の最高税率が37%であることを考えると、利益を再投資に回す場合は相対的に有利です。ただし、配当として分配する際には株主側で追加課税されます。

S法人とLLC(パススルー課税を選択した場合)では、法人レベルの課税は発生せず、オーナーの個人所得税率が適用されます。これは10%から37%の累進税率となるため、所得水準によって税負担が変動します。損失が出た場合は個人所得から控除できる点も特徴です。

州税の複雑性

州レベルでは、各州が独自の税制を持っています。例えばカリフォルニア州では、C法人に対して約8.84%の法人税が課される一方、S法人には1.5%の代替ミニマム税が適用されます。LLCに対しては州ごとに年次手数料や登録料が課されることがあります。

デラウェア州のように法人設立に有利な税制を持つ州もあれば、ネバダ州やワイオミング州のように法人所得税がない州もあります。事業の実態がどこにあるかによって課税関係が変わるため、州の選択も重要な戦略要素となります。

日本人オーナーが選択可能な法人形態

C法人:外国人に最も開かれた選択肢

C法人は外国人株主に対する制限が一切ありません。カリフォルニア州やデラウェア州など主要な州の州法では、株主の国籍要件は存在せず、日本在住の日本人でも自由に株主になれます。また、取締役や役員についても国籍制限がない州が多く、完全にリモートで経営することも法的には可能です。

このため、日本企業の米国子会社としてC法人を設立するケースが最も一般的です。ビザを取得せずとも法人設立と運営ができる点で、初期投資のハードルが低いと言えます。

S法人:日本人非居住者には不可

S法人の株主要件は厳格で、米国市民または米国税法上の居住者(Resident Alien)に限定されます。日本在住の日本人は原則として株主になれません。仮に米国に長期滞在してグリーンカードを取得したり、実質的居住テスト(Substantial Presence Test)をクリアして居住者扱いになれば可能ですが、それでも米国での納税義務が全面的に発生します。

このため、日本を拠点とする経営者がS法人を選択することは現実的ではありません。米国移住を前提としたビジネスでない限り、選択肢から外れることになります。

LLC:外国人可能だが税務上の注意点

LLCは外国人メンバーを制限なく受け入れられます。個人でも法人でもメンバーになれるため、日本法人が米国LLCを所有する形も可能です。経営構造も柔軟に設計でき、日本側で戦略的意思決定を行いながら、米国側で実務を執行するような体制も組めます。

ただし、外国人所有のLLCには特有の税務義務があります。米国で事業を行って得た所得(Effectively Connected Income, ECI)は、外国人オーナーに直接課税されます。パススルー課税のため、利益が出ればすぐに米国での申告・納税義務が発生し、複雑な手続きが必要になります。また、外国人が25%以上を所有するLLCはForm 5472という特別な報告書の提出義務があり、コンプライアンス負担が増加します。

各法人形態のメリット・デメリット詳細比較

C法人のメリット:留保と信用力

C法人の最大のメリットは、利益を企業内に留保して再投資しやすい点です。21%の税率で課税された後の利益を、配当せずに事業拡大や設備投資に回せば、追加の課税は発生しません。これは成長段階のビジネスや、継続的な投資が必要な事業において大きな利点です。

また、C法人は株式発行による資金調達がしやすく、機関投資家やベンチャーキャピタルからの投資を受けやすい構造です。上場を目指す場合もC法人であることが前提となります。信用度の観点でも、C法人は最も「正統的」な法人形態として認識されており、銀行融資や大手企業との取引においても有利に働く可能性があります。

外国人オーナーの視点では、C法人を間に挟むことで「ブロッカー効果」が得られます。米国事業から生じる所得を法人レベルで一旦留め、配当のタイミングをコントロールできるため、国際税務戦略を立てやすくなります。

C法人のデメリット:二重課税と管理コスト

最大のデメリットは二重課税です。法人税21%と配当課税(最大20%、さらにNet Investment Income Taxで3.8%加算の可能性)を合わせると、実効税率は40%前後になる可能性があります。日米租税条約により配当源泉税は軽減されますが(通常10%)、それでも税負担は重くなります。

また、C法人は設立・運営に関する手続きが最も厳格です。定款作成、株主総会の開催と議事録作成、年次報告書の提出、会計監査など、コンプライアンス要件が多く、管理コストが高くなります。小規模事業には過剰な負担になる可能性があります。

S法人のメリット:パススルー課税の効率性

S法人の最大のメリットは、法人税を回避しつつ有限責任を享受できる点です。利益は株主の個人所得として一度だけ課税され、二重課税を避けられます。また、損失が出た場合は個人所得から控除できるため(制限あり)、初期の赤字段階では税務上有利に働く可能性があります。

さらに、S法人では自己雇用税(Self-Employment Tax)の最適化が可能です。オーナーに対して「合理的な給与」を支払い、残りを配当として受け取ることで、社会保障税とメディケア税の対象所得を減らせる余地があります。

S法人のデメリット:制約の多さ

S法人は外国人株主を受け入れられないため、国際展開を考える企業には不向きです。株主数100人以下、単一株式クラスという制限も、成長やファイナンスの自由度を著しく制限します。ベンチャーキャピタルの多くは優先株を要求するため、S法人のままでは資金調達が困難になります。

また、一部の州(カリフォルニアなど)では、S法人でも独自の税金が課されるため、連邦税レベルでの利点が州税で相殺される可能性があります。

LLCのメリット:柔軟性と簡便性

LLCは設立手続きが最も簡易で、定款(Articles of Organization)を州に提出するだけで完了します。株主総会の開催義務もなく、小規模事業に適しています。税務上はパススルー課税で法人税が発生せず、さらにForm 8832でC法人扱いを選択することもできるため、ビジネスの成長に応じて税務戦略を変更できます。

経営構造も柔軟で、メンバー全員が経営に参加する「Member-Managed」方式と、外部マネージャーに委任する「Manager-Managed」方式を選べます。出資比率と利益配分を切り離すこともでき、パートナーシップ契約のような柔軟な取り決めが可能です。

LLCのデメリット:外国人の税務負担

外国人オーナーにとってLLCの最大のデメリットは、ECIに対する即時課税です。パススルー課税のため、利益が出ればすぐに米国での申告・納税義務が発生し、日本でも同じ所得に対して課税される可能性があります(外国税額控除で調整可能ですが手続きは複雑)。

Form 5472の報告義務も負担です。関連当事者との取引を詳細に報告する必要があり、コンプライアンス違反には重いペナルティが科されます。また、LLCは「正式な法人」として認識されない国もあり、国際取引で不利になる可能性があります。

FDA関連業務における法人形態の影響

FDA登録は法人形態に依存しない

食品医薬品局(FDA)の規制は、法人形態そのものではなく、施設の所在地と事業内容に基づいて適用されます。C法人であれ、LLCであれ、S法人であれ、米国内で食品・医薬品・医療機器などを製造・加工・保管する施設は、FDAへの登録義務があります。

重要なのは、適切な施設管理体制(CGMP、GLPなど)を整え、必要な認可を取得することです。法人形態によってFDAの要件が変わることはありません。

国外製造拠点からの輸入:米国代理人の要件

日本など国外の製造拠点から米国に製品を輸出する場合、米国内に事業所または居住地を持つ「米国代理人(U.S. Agent)」を指名する必要があります。この代理人は、FDAとの連絡窓口となり、緊急時の対応を担います。

米国法人(C法人やLLC)を設立すれば、その法人自体が米国代理人になれます。つまり、日本で製造した製品を米国法人経由で輸入・販売する体制を構築できます。この場合、法人形態はC法人でもLLCでも問題ありませんが、事業の規模や税務戦略に応じて選択することになります。

米国内製造の場合の考慮点

米国内に製造施設を持つ場合、その施設を運営する法人がFDAに登録し、国内企業として規制を受けます。外国人オーナーであっても、米国法人である限り国内企業と同等の扱いを受けるため、FDA対応に支障はありません。

ただし、外国人所有比率が高い企業は、CFIUS(対米外国投資委員会)の審査対象になる可能性があります。特に医薬品や防衛関連技術を扱う場合は、事前に法務・規制の専門家に相談することが推奨されます。

越境EC・再投資戦略における最適な選択

越境ECビジネスにおける課税関係

日本企業が米国拠点を設けてAmazon.comなどで販売する越境ECビジネスでは、米国で得た売上は米国源泉所得(ECI)として扱われます。この場合、法人形態によって課税関係が大きく変わります。

LLCを選択した場合、利益はパススルーされて日本人オーナーに直接課税されます。つまり、米国での申告・納税と日本での申告が同時に必要になり、税務手続きが煩雑になります。特に、Form 1040NR(非居住者の米国個人所得税申告書)の作成は複雑で、専門家の支援が不可欠です。

一方、C法人を選択すれば、米国法人が21%の法人税を負担するのみで、オーナーは配当を受け取るまで個人課税を繰り延べられます。利益を米国内に留保して再投資する場合、この構造が非常に有利に働きます。

利益留保と再投資の観点

越境ECで得た利益を米国内で再投資する戦略(在庫拡大、倉庫設備、マーケティング)を取る場合、C法人が最適です。21%の税率は個人最高税率37%よりも低く、配当課税を繰り延べることで複利効果を最大化できます。

LLCの場合、利益がパススルーされるため、再投資資金として残したくても税金を先に払う必要があります。キャッシュフローの観点からは不利になる可能性があります。

日米租税条約の活用

米国C法人が日本の親会社または日本人株主に配当を支払う場合、日米租税条約により源泉税率が軽減されます。通常の30%源泉税が、条約適用により10%(持株比率によっては5%)まで下がります。これにより、国際的な税負担を最適化できます。

ただし、日本側では外国子会社合算税制(CFCルール、タックスヘイブン対策税制)が適用される可能性があります。特定の条件下では、米国法人の利益が日本側で合算課税される可能性があるため、事前に税理士と相談することが重要です。

実務上の推奨戦略

多くの外国人投資家が採用する戦略は、初期段階ではLLCで柔軟にスタートし、事業が軌道に乗ったタイミングでC法人扱いを選択(またはC法人に組織変更)するというアプローチです。これにより、初期の損失を個人所得から控除しつつ、成長段階では利益留保のメリットを享受できます。

越境ECで年間数千万円以上の利益が見込まれ、継続的な再投資を計画している場合は、最初からC法人を選択する方が長期的には有利になる可能性が高いと言えます。

まとめ:戦略的法人形態選択のポイント

米国での法人形態選択は、単なる税務上の判断にとどまらず、ビジネス戦略全体に関わる重要な意思決定です。日本人オーナーにとっては、C法人とLLCが現実的な選択肢となり、S法人は外国人株主制限により基本的に選択できません。

短期的な利益最大化を目指すならLLCのパススルー課税が魅力的ですが、外国人の場合はECIに対する即時課税とForm 5472の報告義務がネックになります。一方、長期的な事業成長と再投資を重視するならC法人が優位です。21%の法人税率で利益を留保し、配当課税を繰り延べながら複利効果を得られます。

FDA関連業務については、法人形態による制約はなく、適切な登録と品質管理体制を整えれば、どの形態でも対応可能です。越境ECにおいては、利益の使途(配当か再投資か)と税務手続きの複雑性を天秤にかけて判断することになります。

最終的には、事業規模、成長速度、資金調達計画、出口戦略(売却か上場か)などを総合的に考慮し、国際税務に精通した会計士・弁護士と相談しながら決定することが賢明です。米国ビジネスの成功は、適切な法人形態選択から始まると言っても過言ではありません。

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