アメリカ化粧品の成分表示ルールと禁止成分リスト|FDA規制完全ガイド

アメリカで化粧品を販売する際、製造者や輸入業者が理解すべき最も重要な規制が成分表示と禁止成分に関するルールです。FDA(アメリカ食品医薬品局)は連邦法に基づき化粧品の安全性を監督していますが、EUのような事前承認制度は採用していません。その代わり、製造者が自ら製品の安全性を保証し、消費者に対して透明性のある情報提供を行うことが求められます。

本記事では、FDAが定める成分表示の義務や禁止・制限成分のリスト、さらにカリフォルニア州など州レベルでの追加規制について詳しく解説します。アメリカ市場への参入を検討している化粧品メーカーや、海外規制との比較を知りたい方に役立つ実務的な情報をお届けします。


成分表示に関する連邦法の要件

全成分表示の義務とその範囲

アメリカで小売販売される化粧品には、FP&L法(Fair Packaging and Labeling Act)に基づき、全成分の表示が義務付けられています。成分名にはFDAが定める公称名(一般名)を使用し、配合量の多い順に列挙する必要があります。

ただし、いくつかの例外が認められています。香料や香味成分については、複雑な配合を保護する目的で「香料(Fragrance)」「フレーバー(Flavor)」といった一般名での表示が可能です。また、配合量1%以下の成分や着色料については、表示順序を変更することが許されています。

企業秘密(トレードシークレット)として認められた成分については、成分リストの末尾に「その他の成分(Other Ingredients)」と記載することで、具体的な成分名の開示を回避できる場合があります。

表示形式とフォントサイズの規定

成分表示は通常、製品の情報パネル(外箱や容器側面)に掲載され、消費者が読み取れるよう明瞭に表示しなければなりません。文字サイズについても具体的な規定があり、文字高さは原則として約1.6mm(1/16インチ)以上とされています。

容器表示面積が12平方インチ未満の小型容器の場合は、文字高さを約0.8mm(1/32インチ)以上とすることが認められています。スペース不足が生じる場合には、成分リストを箱ではなく付属タグや同梱用紙に印字することも可能です。

文字は詰めずに読みやすく配置する必要があり、デザイン性を優先して可読性を損なうことは認められていません。

内装と外装における表示の違い

化粧品ラベルには製品名、用途、内容量、製造販売業者名・所在地などの情報が必要です。これらは主表示面(PDP:Principal Display Panel)や情報面に記載します。

FP&L法で義務付けられた成分表示や内容量表記については、外装ラベルに記載すれば要件を満たします。一方、FD&C法(Federal Food, Drug, and Cosmetic Act)で求められる注意事項や企業情報については、内装と外装の両方に表示されている必要があります。

この区別を理解しておくことで、パッケージデザインの際に無駄な重複を避けつつ、法令遵守を確保できます。

成分表示の例外規定

一般消費者向けに販売されない製品には、成分表示義務が適用されません。具体的には、プロフェッショナル用製品、無料サンプル、医療機関向け配布用製品などが該当します。

また、製造過程で僅少量使用され、最終製品にほとんど残留しない「副生成物(インシデンタル成分)」についても表示不要とされています。

通信販売の場合は、製品パッケージではなく同梱物やウェブサイト上で成分リストの閲覧方法を示し、消費者からの請求があれば迅速に成分表を提供することで要件を満たせます。

さらに、製品に医薬品としての有効成分を含む場合には、化粧品成分より先に「有効成分(Active Ingredients)」として区分表示する必要があります。


FDAが定める禁止・制限成分リスト

主要な禁止成分とその理由

アメリカでは、FDAが明示的に禁止する成分は比較的少数です。代表的な禁止成分には以下のものがあります。

**ビチオノール(Bithionol)**は、皮膚への光毒性反応を引き起こす可能性があるため、化粧品での使用が全面的に禁止されています。

**クロロホルム(Chloroform)二塩化メチレン(Methylene Chloride)**は、発がん性が認められているため使用禁止です。

**クロロフルオロカーボン推進剤(CFCs)**は、環境保護の観点からスプレー化粧品における使用が禁止されています。

臭素系サリチルアニリド類(二臭素・四臭素サリチルアニリド)も、深刻な皮膚反応を引き起こす可能性があることから禁止対象となっています。

制限付きで使用可能な成分

一部の成分については、特定の条件下でのみ使用が認められています。

**ヘキサクロロフェン(Hexachlorophene)**は、保存料として0.1%以下の濃度でのみ使用可能で、粘膜に触れる製品では使用できません。

水銀化合物については、眼用製品に限り0.0065%以下の濃度で許容されています。その他の製品では、製造過程で不可避的に混入する1ppm未満の微量を除き、使用は認められていません。

ジルコニウム含有錯体と**塩化ビニル(Vinyl Chloride)**は、エアロゾル製品での使用が禁止されています。吸入による健康リスクを回避するための措置です。

BSE対策による動物由来成分の制限

狂牛病(BSE)の予防措置として、特定の家畜由来物質の使用も禁止されています。ただし、牛乳や乳製品など一部の安全な動物由来成分は例外として認められています。

この規制は、消費者の健康を守るとともに、国際的な食品・化粧品安全基準との整合性を保つ目的があります。


州レベルでの追加規制

カリフォルニア州のToxic-Free Cosmetics Act

アメリカでは州ごとに独自の化粧品規制を設けることが可能です。特にカリフォルニア州は、連邦法よりも厳格な基準を導入しています。

2025年に施行されたAB 2762(Toxic-Free Cosmetics Act)では、化粧品中の24種類の有害物質の使用が禁止されました。具体的には、メチル水銀、ホルムアルデヒド、フタル酸エステル類、長鎖パラベン類、13種のPFAS(パーフルオロアルキル化合物)などが含まれます。

PFASの全面禁止

さらにAB 2771法により、カリフォルニア州では2025年以降、全てのPFAS類の使用が禁止されています。PFASは「永遠の化学物質」とも呼ばれ、環境中で分解されにくく、人体への蓄積が懸念されている物質群です。

この規制は、化粧品業界に大きな影響を与えており、多くのメーカーが処方の見直しを余儀なくされています。

他州への規制拡大の可能性

カリフォルニア州の規制は、他の州にも影響を及ぼす可能性があります。同州は全米最大の消費者市場を持つため、カリフォルニア基準に適合した製品は、結果的に全米で流通しやすくなる傾向があります。

化粧品メーカーとしては、連邦法だけでなく、主要販売州の規制動向を継続的に監視することが重要です。


国際比較:EU・カナダとの規制の違い

EUの厳格な事前審査制度

EUでは化粧品規則(EU規則1223/2009)に基づき、極めて厳格な成分管理が行われています。付属書IIには約1,730種の禁止成分、付属書IIIには約380種の制限成分が詳細に列挙されており、新規成分の使用には事前審査が必要です。

この制度により、EUは世界で最も厳しい化粧品規制地域の一つとされています。

アメリカの自主規制モデル

対照的に、アメリカではFDAが明示的に禁止する成分は前述のように10種程度に限られます。多くの場合、製造者自身が成分の安全性を判断し、責任を負う仕組みとなっています。

この違いは、規制哲学の違いを反映しています。EUは「予防原則」に基づき、安全性が証明されるまで慎重な姿勢を取ります。一方、アメリカは市場での自由な競争を重視し、問題が発生した場合に事後的に対応する傾向があります。

カナダの「化粧品成分ホットリスト」

カナダのHealth Canadaは、「化粧品成分ホットリスト」で禁止・制限成分を明示しており、実質的にEU同様の厳格な成分管理を参考にしています。

地理的にアメリカに近いものの、規制の方向性はEUに近く、北米市場への参入を目指す企業は、この二つの規制体系の違いを理解しておく必要があります。

グローバル展開における戦略的考察

化粧品のグローバル展開を考える場合、最も厳しい規制(通常はEUやカナダ)に適合した処方を採用することで、複数市場での販売が容易になります。一方、アメリカ市場に特化する場合は、より柔軟な処方選択が可能です。

ただし、カリフォルニア州のような州レベルでの規制強化の動きもあるため、将来的な規制動向を見据えた長期的な戦略が求められます。


まとめ:米国化粧品市場参入のポイント

アメリカの化粧品規制は、EUと比較すると緩やかに見えますが、成分表示の義務や特定成分の禁止については明確なルールが存在します。連邦レベルではFDAの規制に従いつつ、カリフォルニア州をはじめとする州レベルの追加規制にも注意を払う必要があります。

特に重要なのは、全成分表示の正確性と可読性の確保、禁止・制限成分の確認、そして州ごとの規制差異への対応です。通信販売など販売形態に応じた柔軟な対応も求められます。

今後、消費者の健康意識の高まりや環境保護の観点から、PFAS類をはじめとする有害化学物質への規制がさらに強化される可能性があります。化粧品メーカーは、規制の最新動向を常に把握し、処方の見直しやサプライチェーンの透明性確保に取り組むことが、持続可能なビジネス展開のカギとなるでしょう。

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