米国向け輸出の税関手続き完全ガイド:CBPの役割と通関実務の全手順

米国越境EC

米国市場への製品輸出を成功させるには、米国税関・国境警備局(CBP)の役割と輸入申告手続きを正確に理解することが不可欠です。通関プロセスを誤れば、貨物の遅延や高額な罰金、最悪の場合は貨物の没収といった深刻な事態を招く可能性があります。

本記事では、業種や商品カテゴリを問わず共通する米国通関の基本プロセスを、実務的な視点から解説します。CBPの機能、輸入者としての法的責任、必要書類の準備、通関業者の活用判断、HSコード分類の重要性、そして申告手続きの具体的ステップまで、米国向け輸出に携わる企業が押さえておくべき実務知識を網羅的に取り上げます。

米国税関CBPの役割と「インフォームド・コンプライアンス」

CBPが担う国境管理と通商規制

米国税関・国境警備局(CBP)は、国土安全保障省の下で国際貿易の規制と円滑化を担う中核機関です。全米328箇所以上の主要港湾で貨物や旅客の検査を実施し、違法物品の流入防止と関税・税金の適正徴収を通じて、米国の安全と経済を守る役割を果たしています。

CBPの業務範囲は多岐にわたり、輸入関税の徴収、通商関連法令の執行、国境での検査・審査、そして貿易統計の収集などが含まれます。これらの機能により、米国市場に流入する製品の安全性と合法性が確保されています。

輸入者とCBPの責任共有の原則

CBPと貿易コミュニティ(輸入者・輸出者)は、「インフォームド・コンプライアンス(情報に基づく遵守)」という理念の下、法令遵守の責任を共有しています。この原則では、CBPが関連法規や手続きに関する情報を提供する一方、輸入者側も積極的に法令を理解し遵守することが求められます。

具体的には、輸入者は輸入される製品が正規品で安全かつ合法に調達されたものであることを保証する責任を負います。この責任を怠った場合、貨物の遅延や没収、罰則金の支払いといった厳しい措置が取られる可能性があります。

輸入者(Importer of Record)としての要件と準備

輸入者の法的責任とは

輸入者(Importer of Record)とは、輸入申告において法的責任を負う主体を指します。一般的には貨物の所有者や購入者、またはそれらに指名された通関業者が該当します。

CBP法(19 U.S.C. 1484)により、輸入者には「合理的な注意義務」(reasonable care)が課されており、商品の価値、品目分類、関税率などを正確に申告する法的義務があります。貨物が港に到着し、CBPの許可が下り、必要な関税などの推定額を納付するまで、貨物は正式に輸入許可されたことにはなりません。

EINとCBP輸入者登録の取得

米国で輸入申告を行うには、輸入者番号(Importer Number)の取得が必要です。IRS(内国歳入庁)に登録された事業者であれば、通常は連邦納税者番号(EIN:Employer Identification Number)が輸入者番号として使用されます。

米国に事業体を持たない海外企業の場合でも、IRSからEINを取得することが可能です。あるいは、CBPフォーム5106の提出によってCBP独自の輸入者番号を発行してもらうこともできます。

さらに、非居住者の企業が米国で輸入者となる場合、通関手続き上求められるカスタムズボンドの保証会社(Surety)は米国内法人でなければならず、米国内に連絡先となる代理人(Resident Agent)を用意する必要があります。

カスタムズ・ボンド(関税保証金)の準備

カスタムズ・ボンドは、フォーマルエントリー(申告価額が$2,500超の貨物)を輸入する際に、関税や税金の支払い履行を保証するために要求される保証制度です。

ボンドには、単一の輸入ごとに供託する「シングルエントリーボンド」と、一定期間(通常1年間)有効で複数の輸入取引をまとめて保証できる「継続ボンド(continuous bond)」の2種類があります。輸入頻度が高い場合や定期的に米国へ出荷する場合は継続ボンドの方がコスト効率が良く、継続ボンドの場合は最低でも$50,000相当が一般的です。

なお、貨物の価値が低くインフォーマルエントリー扱いとなる場合や、運送業者・通関業者が通関手続きを代行する小口貨物の場合には、ボンドの提供が免除または運送業者側で包括的にカバーされるケースもあります。

通関に必要な書類の準備と管理

商業インボイスとパッキングリスト

**商業インボイス(Commercial Invoice)**は、すべての商業輸入貨物に必要な基本書類です。品名・仕様、数量、単価と総額、通貨、取引条件(インコタームズ)、原産国、輸出者・輸入者の情報などを記載します。

CBPはこれを基に関税計算や輸入許可の審査を行うため、インボイスに記載された価格は関税評価額の根拠となります。仲介手数料やロイヤリティなど、価格に含まれるべき費用は適切に申告する必要があります。

**パッキングリスト(Packing List)**は、梱包明細書とも呼ばれ、貨物の包装内訳を示す書類です。各箱やパレットごとの内容物、数量、重量(総重量/正味重量)、容積、サイズ、梱包形態などを記載します。法律上必ずしも義務ではありませんが、貨物の検査や受け取り時の照合作業を円滑にするため提出が推奨されます。

運送書類と原産地証明書

**運送書類(Bill of Lading / Air Waybill)**は、国際輸送を手配する際に発行される船荷証券(B/L)または航空運送状(AWB)です。貨物の輸送契約および受け渡しを証明する重要書類で、通関手続きでは運送書類に記載の到着港・運送手段・コンテナ番号等の情報が参照されます。

**原産地証明書(Certificate of Origin)**は、特定の自由貿易協定(FTA)の特恵関税を受ける場合や、原産地規則に基づく規制品目の場合に求められることがあります。例えば、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の恩恵関税を適用するには、協定に準拠した原産地証明を用意し、輸入時に申告する必要があります。

その他の必須書類

**輸入申告書類(Entry Documents)**として、入港申告(CBPフォーム3461)および輸入申告書/関税納付書(CBPフォーム7501)が必要です。これらは通関業者を利用する場合、自動通関システム(ABI/ACE)を通じて電子的に提出されます。

また、商品によっては追加書類が必要です。食品や飲料、医薬品、化粧品を輸入する場合はFDA(食品医薬品局)への事前通知(Prior Notice)や登録、植物や生鮮農産物はUSDA(農務省)の検疫証明書、無線機器はFCC(連邦通信委員会)の認証などが求められます。

HSコード分類の重要性と影響

HSコードが決定する関税と規制

HSコード(調和制度コード)は、国際的に統一された品目分類体系です。米国ではHSコードを基に細分化したHTSUS(Harmonized Tariff Schedule of the U.S.)の10桁コードが用いられ、これによって輸入関税率や適用貿易措置が決定されます。

正しいHSコードの分類は極めて重要です。誤った分類は関税額の過少申告や過大支払いにつながるだけでなく、税関当局からペナルティの対象となる可能性があります。

誤分類がもたらすリスク

誤分類による申告は、追加関税の追徴や貨物の滞留、将来的な検査強化、最悪の場合は輸入特権の停止といった厳しい結果を招く可能性があります。本来関税のかかる品目を無税の別コードで申告していた場合、発覚時に不足関税の徴収に加え制裁金が科され、以後の輸入貨物も頻繁に検査対象となることがあります。

逆に誤分類で関税を過大に支払っていた場合でも、その是正には時間と手続きがかかり、払い過ぎ関税の返金を受け取れないケースもあります。

HSコード決定のための実務対応

輸入者はHSコードの選定に際して「合理的な注意(reasonable care)」を払い、必要に応じて専門家の助言を仰ぐことが求められます。

具体的には、米国国際貿易委員会(USITC)が提供するHTSUSオンラインデータベースや書籍版の関税率表を参照して、自社商品の該当項目を調べます。分類に迷う場合は、CBPの事前教示制度を活用してバインディング・ルーリング(拘束力のある分類判断)を取得することも有効です。

また、CBPの公開データベースCROSS(Customs Rulings Online Search System)で過去の類似製品に対する分類事例を調べることもできます。輸入予定の商品について不明点があれば、事前にCBPの輸入専門官(Import Specialist)に問い合わせてアドバイスを得ることも可能です。

通関業者の活用判断と選定ポイント

通関業者を利用するメリット

米国への初めての輸出では、通関業者(Customs Broker)のサポートを受けることで手続きを円滑に進められる場合が多いです。CBP自身も「多くの初めての輸入者が複雑な通関手続きに対応するためにライセンス通関業者に相談している」と述べており、専門知識の不足からくるミスを防ぐ意味でもプロの活用が推奨されています。

通関業者は最新の法規制に通じており、書類不備や分類ミスを未然に防いでくれます。特に輸入する商品が関税分類や規制対応の難しいものであったり、必要書類が多岐にわたる場合、経験豊富な通関業者に任せるメリットは大きいでしょう。

自社対応か業者依頼かの判断基準

通関業者を利用するかどうかは、以下のポイントを考慮して判断するとよいでしょう。

手続きの難易度: 関税分類や規制対応が難しい商品、必要書類が多岐にわたる場合は業者の活用が効果的です。

コストと効率: 通関業者には申告代行手数料が発生しますが、手続きに不慣れなために生じる遅延コストや修正対応のリスクを考慮する必要があります。

頻度と社内リソース: 輸出入取引が頻繁にある場合や、社内に貿易実務の専門人材がいない場合は、通関業者と継続契約を結び任せた方が効率的です。

ただし、通関業者を利用しても、最終的な法令遵守責任はImporter of Recordである自社にあることを忘れてはいけません。業者任せにせず、自社でも申告内容をチェックし理解を深めることが望ましいです。

申告の種類:フォーマルエントリーとインフォーマルエントリー

価額による区分と手続きの違い

米国への貨物を輸入申告する際は、貨物が「フォーマルエントリー(正式申告)」と「インフォーマルエントリー(簡易申告)」のどちらに該当するかを判断する必要があります。これは主に貨物価値(申告価格)に基づいて決まります。

一般に、申告価額が**$2,500を超える商業貨物はフォーマルエントリー扱いとなり、関税の納付や詳細な審査のため追加書類やカスタムズボンドの提供が必要です。一方、$2,500以下**の貨物はインフォーマルエントリーとして処理され、簡易な手続きで比較的迅速に通関が可能です。

ただし、一部の規制品目(アルコール、タバコ、火器、医薬品など)については価額に関係なくフォーマルエントリーが求められます。

デミニミス制度の活用

特例として、$800以下の少額輸入貨物については関税・税金が免除され、事前申告のみで輸入できる「de minimis(デミニミス)制度」の適用対象となります。オンライン販売の商品を小口配送する場合、1件あたり$800以下であれば関税免除のデミニミス制度(エントリータイプ86)を活用できます。

自社の商品がどちらに該当するか事前に確認し、適切な手続きを選択することが重要です。

税関申告の具体的ステップ

ステップ1:事前準備とビジネス登録

米国への初回輸出に先立ち、Importer of Recordとしての準備を整えます。EIN取得やCBPへの輸入者登録を済ませ、必要であればカスタムズボンドの手配を行います。

また、自社が輸出する製品に関連して米国で必要となる各種許可や登録を確認します。食品ならFDAへの施設登録と事前通知、無線機器ならFCC認証、有機製品ならUSDA認証などです。

さらに、貨物のラベルや製品本体に原産国表示(Made in Japan 等)を適切に入れておくことも重要です。米国ではほとんどの輸入品に英語での原産国表示が法的に義務付けられています。

ステップ2:HSコード分類と規制条件の確認

輸出する製品の関税分類(HS/HTSコード)を決定し、それに関連する関税率や輸入規制を確認します。HTSUSで該当する項目を調べ、商品に適切な10桁コードを割り出します。

この段階で、そのコードに適用される一般関税率(MFN税率)や一時的な追加関税がないか確認します。また、HSコードに関連して、追加の書類提出が必要なPGA(他政府機関)規制が無いかもチェックします。

ステップ3:必要書類の作成と輸送手配

商業インボイスやパッキングリスト等の輸出書類を作成・収集します。運送業者から入手する船荷証券(B/L)または航空運送状(AWB)も含め、書類一式のコピーを手元に揃えます。

海上輸送の場合は、インポーターセキュリティファイリング(ISF、通称「10+2」)のために必要なデータを確認します。ISFは船積み前に輸入者がCBPに提出する貨物情報であり、少なくとも本船積載の24時間前までに電子申告しなければなりません。ISFの提出遅れや誤りは1件につき最高$5,000の罰金対象となります。

ステップ4:貨物到着と輸入申告

貨物が米国内の到着港に到着したら、速やかに輸入申告(Entry)手続きを完了させます。通常、通関業者がCBPに対して電子的にエントリーを申告します。

重要なのは、貨物到着後15日以内にエントリーを完了させなければならないという点です。もし到着から15日が経過しても正式な申告が行われない場合、貨物はGeneral Order(保税倉庫仮置き)に移管され、保管料は輸入者負担となります。最悪の場合、6ヶ月以内に申告がなされない貨物は競売に掛けられる可能性もあります。

ステップ5:税関審査・検査への対応

エントリーが提出されると、CBPによる審査(ドキュメントレビュー)が行われます。問題がなければ貨物は即座に試験検査免除となり、通関許可(リリース)が与えられます。

一方、提出内容に疑義がある場合やランダム検査の対象となった場合、CBP担当官による貨物検査が実施されます。輸入者または通関業者はCBPからの質問や追加要求に迅速に回答し、検査に協力します。

ステップ6:貨物の引き取りと納税の完了

CBPから貨物のリリース(引き渡し許可)が出たら、指定された保税倉庫またはターミナルから貨物を引き取ります。貨物を無事受領したら、輸入プロセスはひとまず完了です。

もっとも、フォーマルエントリーの場合は、貨物引き取り後10営業日以内にエントリーサマリー(CBP Form 7501)を提出し、最終的な関税・税金の精算を完了させる必要があります。米国法では輸入関連書類を少なくとも5年間保存する義務があります。

よくある失敗例と回避策

書類の不備と記載ミス

インボイスやパッキングリスト、B/L等の必要書類に記載漏れや誤りがあると、通関遅延や罰金の原因になります。特にインボイスの価額申告とISFの事前提出には注意が必要です。

海上貨物の場合、ISFを期限までに正確に提出しないと1件当たり最大$5,000の民事罰が科される可能性があります。書類はダブルチェックし、必要事項が網羅されているか確認しましょう。

HSコードの誤分類リスク

商品の関税分類を誤るミスは頻繁に起こりますが、非常に重大な過誤です。誤ったコードで申告すると、本来納めるべき関税を少なく申告してしまった場合に追徴課税や罰金の対象となります。

CBPに誤りを指摘された場合、罰則金の支払い、将来の輸入貨物に対する厳格な検査の継続、貨物の通関保留などの結果を招く可能性があります。製品の分類には最新の注意を払い、不明点があれば事前に専門家やCBPへ確認するようにしてください。

関連法令手続きの見落とし

EPA・FDA・USDA・ATFなど他機関が管轄する製品の場合、その許可なく輸入はできません。よくあるのが、FDAの事前通知漏れ(食品や化粧品)、FCC機器証明の未取得(無線機器)、植物検疫証明の不備(植物製品)などです。

これらはいずれも貨物の差し止めや返送の原因となります。輸出前に自社製品が該当する追加要件を再点検し、必要な申請・証明を怠らないよう注意しましょう。

原産国表示の不備

米国の関税法(19 CFR Part 134)では、多くの商品に恒久的かつ判読可能な原産国マーキングを要求しています。「Made in Japan」の刻印やラベルが製品またはパッケージにないと、通関時にマーキングのやり直しを命じられたり、最悪の場合は商品の価額の10%相当の追加関税(マーキングデューティ)が課されることがあります。

意図的な虚偽表示は関税法違反として制裁金やFCA(虚偽請求防止法)訴追の対象にもなり得ます。輸出前に製品と梱包に正しい原産国表示を施し、見落としが無いようにしてください。

まとめ:成功する米国輸出のために

米国向け輸出における通関手続きは、正確な理解と慎重な準備によって確実に対応できるプロセスです。CBPの役割と「インフォームド・コンプライアンス」の原則を理解し、Importer of Recordとしての責任を認識することが第一歩となります。

EINやカスタムズボンドの取得、必要書類の正確な準備、HSコードの適切な分類、そして段階的な申告プロセスの実行—これらの要素を一つ一つ丁寧に押さえることで、通関トラブルのリスクを大幅に軽減できます。

特に初めて米国市場に参入する企業にとっては、信頼できる通関業者との連携が成功の鍵となります。ただし、業者に依頼する場合でも最終責任は自社にあることを忘れず、申告内容を理解し確認する姿勢が重要です。

事前の準備と慎重な手続きを行うことで、米国税関での通関は決して障壁ではなくなります。最新情報のアップデートにも目を配りつつ、本ガイドを参考に安全かつ効率的な米国向けビジネスを遂行してください。

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