米国市場でラベル不備により契約解除された事例と対策:日本企業が知るべきFDA規制のポイント

米国FDA規制

米国市場におけるラベルコンプライアンスの重要性

米国で食品、化粧品、サプリメントを販売する際、製品ラベルの適合性は事業継続の生命線といえます。FDA(米食品医薬品局)の規制を満たしていない表示は「misbranding(不適切表示)」と見なされ、法的リスクだけでなく、小売チェーンとの取引停止という事態を招く可能性があります。

本記事では、実際にラベル不備によって大手小売チェーンが商品撤去や契約解除に踏み切った具体事例を分析し、関連するFDA規制と日本企業が取るべき対策を詳述します。

ラベル不備による契約解除・商品撤去の実例

ハーブサプリメント成分誤表示事件(Walmart・Target等、2015年)

2015年、ニューヨーク州司法長官が大手小売4社(Walmart、Target、Walgreens、GNC)で販売されていたハーブサプリメントをDNA検査したところ、衝撃的な結果が判明しました。調査対象製品の79%がラベル表示と一致するDNAを検出できず、一部ではアスパラガス豆やマツなど未表示の植物成分が混入していたのです。

この成分表示の虚偽は、連邦食品医薬品化粧品法(FD&C Act)のセクション403(a)(誤表示禁止)および21 CFR 101.4(全成分表示義務)に違反する重大なラベル不備でした。州当局は4社に販売中止命令を発出し、各社は問題製品を速やかに棚から撤去する対応を取りました。

この事例から小売チェーンが学んだ教訓は、プライベートブランド製品であっても第三者による成分検証が不可欠であるという点です。

Whole Foodsのアレルゲン表示欠落問題(2020年)

高級スーパーマーケットWhole Foodsでは、2019年から2020年にかけて30以上の自社ブランド食品で主要アレルゲンの未表示が発覚しました。店舗内のベーカリーやデリで製造された製品において、ナッツや乳製品を含有するにもかかわらずラベルにその記載がないケースが相次いだのです。

これは食品アレルゲン表示法(FALCPA)に基づくFD&C Actセクション403(w)(1)違反に該当します。FDAは「未表示アレルゲンは近年リコール原因の第一位」と指摘しており、消費者の生命に直結する問題として最重要視されています。

Whole Foodsは複数製品をリコール撤去し、FDAから警告書を受領。その後、表示管理の抜本的強化と再発防止策を実施し、不適切な表示を繰り返すサプライヤーとの契約見直しにも着手しました。

Vitamin Shoppeの違法成分含有サプリメント販売停止(2015年)

全米展開するサプリメント専門店Vitamin Shoppeでは、体重管理用サプリメントに未承認成分BMPEA(β-メチルフェネチルアミン)が含まれている問題が明らかになりました。製品ラベルには「Acacia rigidula(アカシア)由来」と表示されていましたが、実際には合成興奮剤が含有されていたのです。

この事例は、21 USC §321(ff)(サプリメント成分の定義)およびFD&C Act 402(f)(有害成分の混入禁止)に抵触する可能性がありました。2015年4月、FDAの要求と州司法長官との合意により、同チェーンは該当成分を含む全製品を一斉に棚から撤去し、試験確認後でなければ再販しないという厳格な措置を講じました。

Walmartの「Made in USA」虚偽表示問題(2015年)

小売最大手Walmartでは、2015年に監視団体の調査で100点以上の製品において虚偽の米国製表示が発覚しました。自社ブランドのプラスチック袋がウェブサイト上「Made in USA」と表示されていたものの、実際のパッケージには「タイ製」と明記されていた例などです。

これは連邦取引委員会(FTC)が所管する不当表示(FTC法第5条)の問題となり、FTCの調査勧告を受けてWalmartは直ちにサイト上の米国製表示を一斉削除しました。後にカリフォルニア州の訴訟では約100万ドルの罰金を科される和解にも応じています。

この事例は、原産国表示のような間接的なマーケティング表現であっても、誤解を招く表示は重大な結果を招くことを示しています。

Whole Foodsのオーガニック表示基準と製品排除(2012年)

Whole Foods Marketは2012年、パーソナルケア製品に関する独自のオーガニック表示基準を全米店舗に適用しました。「Organic」と強調表示する製品にはUSDA有機認証(95%以上有機原料)を要求し、基準を満たさない商品は取り扱い中止も辞さない姿勢を示したのです。

化粧品分野では当時、オーガニック表示を直接規制する連邦法が存在しない状況でしたが、Whole Foodsは業界初の自主基準として導入。移行期間後には基準未達の製品を棚から一掃しました。

この取り組みは、小売による自主的な基準策定がサプライヤーに与える影響の大きさを示す好例といえます。

Amazon未承認医薬品的製品の排除(2022年)

オンライン小売大手Amazonでは、2022年にFDAから「ホクロやスキンタグを除去する」と称する製品に関して警告書を受領しました。これらの製品はクリームや軟膏の形態で化粧品のように販売されていましたが、実際には高濃度サリチル酸を含み治療効果を標榜する未承認医薬品でした。

FD&C Act上、病変の除去や治療を謳う製品は医薬品と見なされ、FDA承認なしに販売することは違法です(セクション505違反)。Amazonは即座に該当製品のリスティングを削除し、「安全が最優先であり、法令遵守を全出品者に要求している」との声明を発表しました。

小売バイヤー・品質管理部門が重視する表示要件

これらの事例から、小売チェーンのバイヤーや品質管理担当者が製品受け入れ時に特に重視しているポイントが明らかになります。

FDA法令順守の徹底確認

小売チェーンは取引先に対し、連邦・州のすべての法規制を遵守した製品表示であることを厳格に要求します。Amazonでは出品業者に21 CFR 101.36(サプリメントの表示要件)や21 CFR 111(適正製造基準)への適合を義務付け、必要に応じて試験成績書や認証の提出を求めています。

CVSやWalgreensなどのドラッグストアも独自のサプリメント基準を導入し、法令以上に厳しい社内基準で製品品質と表示の信頼性を担保しようとしています。

アレルゲンおよび成分表示の正確性

主要アレルゲン(卵、乳、小麦、ピーナッツ、木の実、大豆、魚介類、甲殻類、ゴマ)の表示は最重要事項です。わずかな表示漏れでも重篤な健康被害につながるため、各小売はサプライヤーに原材料配合の変更時やレシピ違反がないか厳重に報告・確認させています。

CostcoやKrogerなどでも未表示アレルゲンによる製品リコールが度々発生しており、その都度対応コストやブランド信用低下の問題が起きています。小売のQC部門は原材料リストの網羅性(21 CFR 101.4/701.3)とアレルゲン表示(FD&C Act 403(w))を念入りに点検しています。

誇大・違法な健康強調表示の排除

サプリメントや化粧品では、法律で許可されていない効果効能の表示に小売も目を光らせています。「この製品は癌を治療する」等の疾病治療効果の表示はFDAでは禁止された医薬品的主張となり(21 CFR 101.93(g))、製品は未承認医薬品と見なされるリスクがあります。

小売店がそのような製品を販売すれば、自社も警告や法的措置の対象となり得るため、事前にパッケージや販促物上の表現を精査します。サプリメントの構造・機能表示を行う際に義務付けられる免責文言(「本品はFDAによる評価を受けておりません」21 CFR 101.93(c))の有無も重要な確認ポイントです。

外国語表記と消費者誤認リスク

米国市場向け製品では、原則としてラベル表示は英語で行わねばなりません(21 CFR 101.15(c)(1))。日本企業の製品で日本語表示を併記するケースもありますが、この場合、英語以外の言語で表記があると、すべての必須表示事項をその外国語でも併記する義務が生じます(21 CFR 101.15(c)(2))。

小売バイヤーは、海外メーカー製品を採用する際に不要な外国語記載がないか、ある場合は二言語表示の適合性を確認します。誤って日本向けラベルのまま商品が店頭に並べばFDA査察や税関の差止めの対象にもなりかねません。

小売独自基準や安全性証明の要求

各小売チェーンは自社ブランドイメージや顧客ニーズに合わせた独自の品質・表示基準を設けています。Whole Foodsは食品添加物や遺伝子組換え素材について厳しい「不使用リスト」を公表し、その基準に反する成分を含む商品はそもそも仕入れません。

サプリメント分野では大手小売がNSFやUSPのサードパーティ認証取得を推奨・要求する動きもあります。CVSは2019年の「Tested to be Trusted」プログラムで152ブランド・1400製品の第三者試験を実施し、基準を満たさないブランドは取引停止としました。

日本企業が講じるべき具体的対策

FDAラベル規制の完全理解と遵守

自社製品のカテゴリーに該当するFDA表示要件を把握し、ラベルに反映させることが不可欠です。食品であれば一般食品表示規則(21 CFR Part 101)に従い、米国式の栄養成分表示(Nutrition Facts)、正確な原材料名表示、内容量表記、アレルゲンの明示、製造者もしくは輸入販売業者の社名住所等を漏れなく表示します。

サプリメントはサプリメントファクト欄(Supplement Facts)の形式で有効成分量や1日あたり摂取量%を記載し、薬事的効能ではなく栄養機能・構造機能の範囲内で説明文を付す必要があります。

表示内容と実製品内容の整合性確保

ラベルに記載した原材料・成分が実際の中身と一致していることを保証する仕組みが必要です。品質管理部門と連携し、サプライチェーン全体のトレーサビリティを確保するとともに、製品ロットごとに主要成分の分析試験を行うなどして、表示精度を担保すべきです。

第三者検査機関の認証(NSF、USP、ULなど)取得は、小売に対する品質アピールになるだけでなく、万一トラブル発生時の信頼回復策にもなります。

禁止成分・許可外成分の徹底回避

日本では流通していても米国では規制されている成分があります。FDAの原材料リストやGRAS認定リスト、DSHEA施行後の承認済みサプリ成分の情報を事前に確認し、グレーな素材は使用しないか、使用する場合も法に則った届け出を行う必要があります。

違法成分の疑いがあると小売側で即座に排除されるだけでなく、警告書や製品押収など重大な処分につながる可能性があります。

健康強調表示の適法性確認

製品の宣伝文句やパッケージのキャッチコピーにも注意が必要です。「◯◯に効く」「治る」といった直接的表現は厳禁で、サプリメントなら機能のサポートを示す表現(「免疫機能をサポートする」)に留め、「FDA未評価」のディスクレーマーを添付することが求められます。

化粧品も「医薬部外品」的な表現(シワ改善・美白など米国では薬用に該当する言葉)は避け、「外観上の効果」に留める表現(「肌をなめらかに見せる」)にする必要があります。

英語対応・現地表示要件への完全適合

米国販売品では基本英語表示が必須です。日本語ラベルしかない商品は輸入時に税関で差し止めとなります。したがって米国向け専用パッケージを用意し、必要事項をすべて英語で表示してください。

デザイン上、日本語や他言語を入れる場合も、その言語での情報網羅を忘れずに。特に食品の調理法やサプリメントの用法など、消費者向け情報は英語で明瞭に記載し、単位系もヤード・ポンド法に合わせることが求められます。

小売先基準の事前把握と適合

売り込みたい小売チェーンがある場合、その企業のサプライヤー向けガイドラインをよく研究しましょう。多くの大手小売は公式サイトで品質基準や禁止成分リスト、納品時の検査基準等を公開しています。

Whole Foodsの「不可使用成分リスト」、Targetの「クリーンラベル」基準、Walmartの「サステナビリティ指数」評価など、チェーンごとの重点が異なります。事前準備として、自社製品が各小売の求める基準を満たしているかチェックリストで点検し、不足があれば改善してからアプローチすることが重要です。

規制アップデートへの継続的対応

米国の規制や業界スタンダードは常に更新されています。食品表示の新ルール(追加糖類の表示義務化や一食当たり表示の改定)、サプリメント届出制度の議論、化粧品の安全性に関する新法(MoCRA 2022年成立)など、最新情報にアンテナを張る必要があります。

定期的にFDAや業界メディアから情報収集し、規制順守チェックリストをアップデートする体制を整えましょう。2023年施行のゴマアレルゲン義務表示など、新たな要件が追加された際には迅速にラベル変更を行う対応力が求められます。

まとめ:ラベルコンプライアンスは事業継続の生命線

米国市場におけるラベルコンプライアンスは、単なる書類上の問題ではなく、製品の生死を左右する重大事項です。本記事で紹介した事例は、ラベル不備によって名だたる企業が製品回収や販売停止に追い込まれ、多大な損害や信頼失墜を被ったことを示しています。

小売チェーン側も、違法・不適切表示の商品を販売すればFDAやFTCから制裁を受けるだけでなく、消費者の健康被害やブランド毀損につながるため、サプライヤーに対して厳しい目を向けています。

日本企業が米国で成功するには、製品の品質・安全性はもちろん、その情報を正確かつ法に則って伝える表示力が不可欠です。事前の念入りなラベル監査と現地規制への適応を行えば、ラベル不備による契約解除・商品撤去といったリスクを大幅に低減できるでしょう。

製品に貼られた一枚のラベルには、企業の姿勢と信用が表れます。適切なラベル表示で小売バイヤーと消費者の信頼を獲得し、米国市場での持続的なビジネス展開を実現していくことが重要です。

関連記事

特集記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

2026年2月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
232425262728  
ランキング
  1. 1

    AmazonとShopifyの米国Sales Tax完全ガイド|徴収・設定・申告の違いを徹底解説

  2. 2

    日本と米国の医薬品・医療機器ラベリング要件を徹底比較|規制の違いと実務ポイント

  3. 3

    【2025年最新】米国50州のSales Tax登録義務完全ガイド|越境EC・米国進出企業必見

アーカイブ
TOP
CLOSE
目次