米国LLC設立ガイド|デラウェア・ワイオミング・ネバダ州を徹底比較【2025年最新】

米国税制情報

日本在住の起業家や事業者が米国に法人を設立する際、州の選択は事業の成否を左右する重要な判断となります。米国には50州それぞれに異なる会社法や税制が存在しますが、特に日本からオンラインで設立する場合に人気が高いのがデラウェア州ワイオミング州ネバダ州の3州です。

これらの州が選ばれる理由は、法人設立の容易さ、税制上の優遇措置、プライバシー保護の強さ、そして非居住者でもオンライン申請が可能な点にあります。しかし、それぞれの州には初期費用や年間維持費、設立に要する期間、法的な信頼性において大きな違いがあり、自社のビジネスモデルや規模に応じた適切な選択が求められます。

本記事では、これら3州の具体的な比較を通じて、日本から米国LLC設立を検討している方が最適な州を選択できるよう、詳細な情報を提供します。

州別比較:費用・期間・手続きの違い

米国でLLCを設立する際、各州で必要となる費用や期間は大きく異なります。以下、主要3州の具体的な比較を見ていきましょう。

デラウェア州の特徴

デラウェア州は米国で最も法人設立が多い州として知られ、Fortune 500企業の多くがこの州で登記されています。

費用面の特徴として、LLC設立時の州申請料は約110ドルと比較的手頃ですが、年間維持費として一律300ドルのフランチャイズ税が課されます。この年間維持費は他州と比較するとやや高額ですが、法的安定性とのトレードオフとして受け入れられています。また、LLC設立時には年次報告書の提出は不要という特徴があります。

設立期間については、オンライン申請で通常2~3週間程度を要しますが、追加料金を支払うことで24時間以内の迅速処理も可能です。この柔軟性は、急いで法人設立を完了させたい事業者にとって大きなメリットとなります。

**登録代理人(Registered Agent)**は必須で、州内に物理的な住所を持つ代理人を立てる必要があります。日本在住者の場合、代理人サービスを利用することになり、年間50~150ドル程度の費用が一般的です。

デラウェア州最大の強みは、200年以上の歴史を持つ整備された会社法と、企業紛争を専門に扱うChancery Court(衡平法裁判所)の存在です。この専門裁判所により、企業関連の法的問題が迅速かつ予測可能な形で解決されるため、ベンチャーキャピタルや投資家からの信頼が非常に高い州となっています。

ワイオミング州の特徴

ワイオミング州は、全米で最も費用対効果の高いLLC設立地として注目を集めています。

費用面では、設立時の申請料が100ドル(オンライン申請の場合は4ドルの手数料が追加)、年間維持費はわずか60ドルという全米最低水準のコストを実現しています。この年次報告料は資産額に応じて増額される可能性がありますが、小規模事業者にとっては非常に魅力的な価格設定です。さらに、法人所得税とフランチャイズ税がゼロという税制優遇も大きな特徴です。

設立期間の速さも特筆すべき点で、オンライン申請の場合は即日承認が基本となります。これは主要3州の中で最も速く、迅速に事業を開始したい起業家にとって理想的です。郵送申請の場合は4~5週間程度かかりますが、現代ではオンライン申請が主流となっています。

プライバシー保護の面でも優れており、LLCメンバーや管理者の情報を公開する義務がありません。この匿名性の高さは、個人情報保護を重視する事業者から高く評価されています。

ワイオミング州はまた、Series LLC制度を導入している数少ない州の一つです。これは一つの親LLCの傘下で複数の事業を分離して運営できる仕組みで、不動産投資など複数のプロジェクトを展開する事業者にとって管理コストを大幅に削減できる可能性があります。

ネバダ州の特徴

ネバダ州は「税金のない州」として知られ、特にプライバシー保護の面で独自の地位を築いています。

費用面では、初期費用が約425ドルと3州の中で最も高額です。この内訳は、定款提出料75ドル、初回役員名簿料150ドル、初回事業ライセンス200ドルとなっており、設立時から複数の費用が発生します。年間維持費も350ドル(年次報告料150ドル+事業ライセンス更新料200ドル)と高めです。

設立期間は、オンライン申請であれば1営業日以内、場合によっては営業時間内に当日承認されることもあります。州の公式ポータルであるSilverFlumeから申請が可能で、手続き自体はスムーズです。

税制面では、法人税と個人所得税が州税としてゼロという大きなメリットがあります。ただし、年間売上が400万ドルを超える場合、Commerce Taxとして0.05~0.33%の税が課される点には注意が必要です。

ネバダ州の特徴として、すべての企業に州事業ライセンスの取得を義務付けており、これが年間費用の増加につながっています。また、LLCメンバーの氏名・住所を年次リストで州に届け出る必要があるため、完全な匿名性という点ではデラウェアやワイオミングに劣る側面があります。

各州のメリット・デメリット詳細

デラウェア州を選ぶべき人

デラウェア州が最適なのは、以下のような事業者です。

ベンチャーキャピタルからの資金調達を検討している場合、デラウェア州での設立は事実上の標準となっています。投資家の多くがデラウェア州の法人構造に精通しており、デューデリジェンス(投資前調査)がスムーズに進む可能性が高まります。

法的安定性と予測可能性を重視する事業者にとって、200年以上蓄積された判例法とChancery Courtの存在は他州では得られない価値を提供します。企業間の複雑な契約や株主間の紛争が発生した場合でも、専門的かつ迅速な解決が期待できます。

Series LLCを活用した事業展開を考えている場合、デラウェア州は最も実績のある州の一つです。複数の不動産物件を管理する、複数のブランドを一つの親会社で運営するといったケースで、管理コストを抑えながら法的リスクを分離できます。

一方で、小規模なオンラインビジネスや個人事業主レベルの事業では、年間300ドルの維持費が負担となる可能性があります。また、実際の事業活動を他州で行う場合、その州でも外国法人として登録が必要となり、二重の管理負担が生じることもデメリットです。

ワイオミング州が向いているケース

ワイオミング州は、コストを最小限に抑えたい起業初期の事業者に最適です。

設立費用100ドル、年間維持費60ドルという低コスト構造は、まだ収益が安定していないスタートアップや、複数のビジネスアイデアを低リスクで試したい起業家にとって大きな魅力です。法人所得税もゼロのため、税務上の負担も最小限に抑えられます。

プライバシーを重視する事業者にとって、ワイオミング州のメンバー情報非公開という特徴は重要です。オンラインビジネスやコンサルティング業など、経営者の個人情報を公にしたくない業種では特に価値があります。

即日設立が可能という点も、ビジネスチャンスを逃したくない場合に重要です。契約の締結や取引の開始に法人格が必要な場合、ワイオミング州なら最短で対応できます。

ただし、デラウェア州のような法的な評判や専門裁判所がないため、大規模な資金調達を目指す場合や複雑な企業紛争が予想される場合には不向きな可能性があります。また、投資家によってはワイオミング州設立の企業に馴染みがなく、追加の説明が必要となるケースもあります。

ネバダ州の注意点

ネバダ州は、かつて「税金のない匿名性の高い州」として人気を集めましたが、現在では費用対効果の面で課題があります。

高額な維持費が最大のデメリットです。初期費用425ドル、年間維持費350ドルという金額は、ワイオミング州の約6倍に相当します。この費用に見合った明確なメリットがない限り、選択する理由は薄いでしょう。

匿名性についても誤解が多い点に注意が必要です。LLCメンバーの氏名・住所を年次リストで州に届け出る必要があり、これらは公開情報となります。この点で、デラウェアやワイオミングほどの秘匿性は期待できません。

Commerce Taxの存在も見逃せません。年間売上が400万ドルを超える規模に成長した場合、追加の税負担が発生する可能性があります。

また、過去にネバダ州が詐欺的な企業設立に利用されたケースが多いという指摘もあり、一部の金融機関や取引先から信頼性の面で懸念を持たれる可能性があります。

これらの点から、現在では特別な理由がない限り、デラウェア州かワイオミング州を選択する方が合理的と考えられます。

非居住者が知るべき設立後の手続き

米国LLC設立後、日本在住者が直面する最大の課題は、EIN取得と銀行口座開設です。

EIN(連邦雇用者ID)の取得方法

EINは米国内国歳入庁(IRS)が発行する企業識別番号で、銀行口座開設や税務申告に必須となります。

非居住者の場合、IRSのオンライン申請ツールを利用できません。これは米国に物理的な住所を持たない申請者は対象外とされているためです。

取得方法は主に以下の2つです。

FAX申請では、Form SS-4に必要事項を記入し、国際FAXでIRSに送信します。通常4営業日程度でEINが発行されますが、時期によって処理期間が延びる可能性もあります。FAXサービスを利用する場合、国際FAXの送信費用が別途かかります。

電話申請も可能ですが、IRSの国際専用ダイヤルに電話をかける必要があり、英語での対応が必須となります。また、米国の営業時間内(日本時間の深夜から早朝)に電話をかける必要があるため、時差の問題もあります。

Stripe Atlasなどの法人設立支援サービスを利用する場合、EIN取得も代行してもらえるため、言語や手続きの不安がある方にはこうしたサービスの利用も選択肢となります。

銀行口座開設の実態と課題

米国法人の銀行口座開設は、非居住者にとって最大のハードルとなる可能性があります。

従来型の銀行では対面開設が原則です。ウェルズ・ファーゴなど一部の銀行は外国人にも比較的寛容とされていますが、それでも現地支店への予約訪問が必要で、パスポートなどの身分証明書の提示が求められます。日本から渡米して口座を開設するには、旅費と時間的コストが大きな負担となります。

オンライン銀行の台頭により、状況は改善しつつあります。MercuryやWise、Relayといったフィンテック企業が、非居住者でもリモートで開設可能なビジネス口座を提供しています。

しかし、要件の厳格化が進んでいる点には注意が必要です。例えばMercuryでは、以前は登録代理人の住所でも受け付けていましたが、現在では実際の事業住所の提出を求めるようになっています。登録代理人の住所は使用できないため、バーチャルオフィスなど別途米国内の住所を用意する必要が出てきています。

突然の口座凍結リスクも存在します。オンライン銀行は審査基準を頻繁に変更する傾向があり、ある日突然口座が凍結されるケースも報告されています。このため、可能であれば複数の金融機関に口座を開設し、リスクを分散することが推奨されます。

代替手段としてのPayPalやStripeも検討できます。これらの決済サービスは銀行口座ほど厳格な審査がなく、ビジネスの初期段階では十分に機能する可能性があります。ただし、資金の引き出しや送金には制限があるため、本格的なビジネス展開には銀行口座が必要となるでしょう。

また、2024年から施行されているFinCENへのBOI(実質的支配者情報)報告義務も忘れてはなりません。LLC設立後30日以内に、実質的な支配者の情報をFinCEN(金融犯罪取締ネットワーク)に報告する義務があり、これを怠ると罰則の対象となります。

まとめ:自社に最適な州の選び方

米国でLLCを設立する際の州選びは、費用、信頼性、事業目的のバランスを考慮した戦略的判断が必要です。

デラウェア州は、将来的にベンチャーキャピタルからの資金調達を目指す、法的安定性を最重視する、複雑な企業構造を計画しているといった場合に最適です。年間300ドルの維持費はコストとして見えますが、投資家からの信頼と法的予測可能性という無形の価値に対する投資と捉えることができます。

ワイオミング州は、コストを最小限に抑えたい起業初期段階、プライバシー保護を重視する、迅速な設立が必要な場合に理想的です。小規模ビジネスやオンライン事業、複数のビジネスアイデアを低リスクで試したい起業家にとって、最もバランスの取れた選択肢となるでしょう。

ネバダ州は、現在では高額な維持費に見合ったメリットを見出しにくく、特別な理由がない限り積極的に選択する理由は少ないと言えます。

いずれの州を選択する場合も、設立後のEIN取得と銀行口座開設という課題に向き合う必要があります。これらの手続きを考慮すると、Stripe Atlasなどの包括的な設立支援サービスの利用も検討に値します。

米国LLC設立は、国際的なビジネス展開の第一歩となります。自社のビジネスモデル、成長計画、予算を総合的に検討し、最適な州を選択することで、将来の事業拡大の基盤を築くことができるでしょう。

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