米国向けモバイル機器輸出の完全ガイド|FCC認証から関税まで徹底解説

米国税制情報

アメリカ市場は世界最大の消費市場であり、スマートフォンやワイヤレスイヤホンなどのモバイル機器を輸出する際には大きなビジネスチャンスがあります。しかし、米国への輸出には関税分類、連邦通信委員会(FCC)認証、製品安全規格、リチウム電池の輸送規制など、複数の法規制への対応が求められます。

本記事では、Amazon FBAやD2C販売などの越境ECを通じて米国にモバイル機器を輸出する際に必要となる規制対応について、実務担当者が押さえるべきポイントを体系的に解説します。適切な準備を行うことで、税関トラブルや出品停止リスクを回避し、スムーズな市場参入を実現できます。

関税分類とHSコード|スマートフォンは無税

米国への輸出において、最初に確認すべきは製品の関税分類です。HSコード(Harmonized System Code)は国際貿易における商品分類コードで、米国ではHTSUS(Harmonized Tariff Schedule of the United States)として運用されています。

主要モバイル機器の関税率一覧

モバイル機器の主な製品カテゴリにおける関税率は以下の通りです。

スマートフォン(HSコード:8517.13.00.00)

  • 米国一般関税率(MFN):0%(無税)
  • 情報技術協定(ITA)適用品目のため関税免除

ワイヤレスイヤホン(HSコード:8518.30.20)

  • 米国一般関税率:0%(無税)
  • Bluetoothイヤホンなど無線通信機能付き音響機器が該当

リチウムイオン電池単体(HSコード:8507.60.00)

  • 米国一般関税率:3.4%
  • モバイルバッテリーや予備バッテリーなど機器と別送の場合

スマートフォンや無線イヤホンは情報技術製品として分類され、ITAの適用により関税が免除されています。これは米国市場参入における大きなメリットです。一方、リチウムイオン電池を単体で輸出する場合は3.4%の関税が適用される点に留意が必要です。

追加関税(Section 301)への注意

製品の原産国が中国である場合、米中貿易摩擦に伴う追加関税措置(Section 301)の対象となる可能性があります。スマートフォン本体は現時点で追加関税の対象外ですが、周辺機器や付属品は対象になるケースもあるため、最新の関税率表を確認することが推奨されます。正確なHSコードの分類は通関業者や税関と相談しながら進めましょう。

通関手続きと輸入者登録の基礎知識

米国に商品を輸入する際は、税関(CBP:Customs and Border Protection)への通関手続きが必須です。適切な書類準備と輸入者の登録がスムーズな通関の鍵となります。

商業インボイスと申告書類の準備

通関に必要な基本書類は以下の通りです。

  • 商業インボイス(Commercial Invoice):製品の詳細、価格、数量、原産国を正確に記載
  • パッキングリスト:梱包内容の詳細リスト
  • 航空貨物運送状(Air Waybill)または船荷証券(Bill of Lading):輸送手段に応じた運送書類
  • エントリー申告書(Entry Summary):通関業者が作成するCBP Form 7501など

商品価格が800ドル以下の場合、少額輸入の免税枠(de minimis制度:Section 321)で関税免除される可能性があります。しかし、Amazon FBAなどでまとめて在庫を送る場合は800ドルを超えることが多く、正式輸入として通関し、必要な関税を納付する必要があります。正式輸入では税関保証金(Customs Bond)の取得も通常必要となります。

Importer of Record(IOR)の役割と登録方法

米国への輸入では「Importer of Record(IOR)=記録上の輸入者」を明確に指定しなければなりません。IORは輸入貨物が米国の法規制に適合していることを保証し、通関書類の提出および関税・税金の支払い責任を負う主体です。

重要な注意点として、Amazon FBA倉庫に納品する場合でもAmazon社は輸入者(IOR)を務めません。 Amazonを輸入者として申告すると荷物は受取拒否され返送されます。輸入者は荷送人側で手配する必要があります。

IORになれる主体は米国内に住所を持つ個人・法人が原則ですが、外国企業(非居住者)でも税関に登録することでIORになることが可能です。非居住者がIORとなるには以下の手続きが必要です。

  • CBPフォーム5106(Importer Identity Form)の提出
  • 税関から輸入者番号(CAIN:Customs Assigned Importer Number)の取得
  • 連邦納税者番号(EIN)の取得(企業の場合推奨)

これらの手続きはフォワーダーや通関業者が代行してくれる場合もあります。IORの責任範囲は広く、製品が連邦規制の認証を要する場合、その適合証明を保持する義務も含まれます。

製品ラベル表示の必須要件

米国に輸入される製品には法定表示ラベルの要件があります。

原産国表示

  • 英語で「Made in ___」等と最終購入者に見える形で表示
  • 製品本体への物理的刻印が原則(困難な場合はパッケージでも可)
  • 表示ははっきり読みやすく、輸送・販売過程で消えない耐久性が必要

製造者・輸入業者情報

  • 製造者もしくは輸入販売業者の氏名・住所をパッケージに表示
  • 連邦包装表示規則(FPLA)に基づく要件
  • 問題発生時の責任者を明確化する目的

言語要件

  • 製品の表示・警告文は基本的に英語で記載
  • 製品カテゴリに応じた必要マーク(リサイクルシンボル、安全マーク等)も追加

これらの表示要件を満たさない製品は税関で差し止められるリスクがあるため、輸出前に必ず確認してください。

FCC認証|無線機器の輸入必須条件

電波を発する機器を米国に輸入・販売するには、連邦通信委員会(FCC)の認証が必須です。この要件を満たさない場合、輸入自体が認められません。

FCC認証が必要な製品とは

無線周波数デバイス(RF Device)はFCC規則に基づく機器認可(Equipment Authorization)を受けていないと米国内でマーケティングや輸入ができません。

FCC ID認証(Certification)が必要な製品

  • スマートフォン(セルラー通信、Wi-Fi、Bluetooth搭載)
  • ワイヤレスイヤホン(Bluetooth等の無線通信機能搭載)
  • タブレット端末
  • スマートウォッチ

これらの意図的発信機はFCC ID認証を取得する必要があります。一方、意図的な電波発信はないが放射雑音を出しうる電子機器(PCや周辺機器など)はSupplier’s Declaration of Conformity(SDoC)手続きで自己適合宣言を行う場合もあります。

FCC ID取得の流れと表示義務

FCC認証を取得するプロセスは以下の通りです。

  1. FCC認定試験所での製品テスト
  2. 認証機関(TCB:Telecommunication Certification Body)からFCC IDの発行
  3. 製品本体または電子表示にFCC IDを刻印
  4. 取扱説明書にFCC規則準拠の声明を記載

FCC IDは「グラントコード」と「プロダクトコード」で構成される固有の認証番号で、FCCの公開データベースで検索可能です。この番号が製品に表示されていることで、無線機器が技術基準を満たしている証明となります。

税関への申告時には、該当機器が「FCC認証済み」であることを宣言する必要があります。FCC認証済み機器であることを示すFCC IDラベルが製品にない場合、税関で差し止められるリスクがあります。

Amazon出品時のFCC ID登録要件

Amazon.comでは2022年3月7日より、無線搭載製品についてFCC準拠の証明提出を出品者に義務付ける新ルールが導入されました。

具体的には、Wi-Fi/Bluetooth/携帯電波などを発する機器は出品時に以下の情報を入力・提出する必要があります。

  • FCC認証番号(FCC ID)
  • FCC責任当事者(米国内販売元)の連絡先情報

これを怠るとFCC ID未登録の商品は出品停止(棚卸し削除)になります。自社製品がFCC認証済みである場合はそのFCC IDを確認し、Amazonの出品ページの該当フィールドに正確に登録してください。

製品安全基準とコンプライアンス

モバイル機器の電気安全や消費者安全に関しては、FCC以外にも考慮すべき規格や規制があります。

UL認証の重要性

UL(Underwriters Laboratories)認証は法的強制ではありませんが、製品安全上ほぼ必須の業界標準となっています。特にバッテリー内蔵機器や充電器・電源アダプタなどはUL規格の試験に適合していることが望まれます。

UL認証が推奨される理由

  • 米国の小売店やプラットフォームは安全証明のない電子製品を敬遵する傾向
  • 消費者の信頼獲得と製品liability リスク低減
  • リチウムイオン電池はUL1642/UL2054、充電器はUL62368-1などの適用標準がある

UL認証はOSHA公認のNRTL(国家認定試験所)で安全試験を受け、基準を満たせば「ULマーク」を表示できる制度です。取得には費用と時間がかかりますが、第三者試験所でのテストによる安全証明はマーケットアクセスを円滑にします。

CPSC規制と製品安全責任

CPSC(米国消費者製品安全委員会)は消費者製品全般の安全監視機関です。モバイル機器は食品医薬品のような個別許認可は不要ですが、一般的な製品安全性の確保義務があります。

製品が「不合理な危険性(unreasonable risk)」を有する場合、CPSCはリコール(回収)命令等を行う権限があります。そのためメーカー/輸入者は自主的に安全基準を守り、火災・感電・発火などのリスクを低減させる義務があります。

特にリチウム電池搭載製品は過去に発火事故によるリコール事例も多いため、UL認証取得などで安全性を実証しておくことが極めて重要です。製品が子供向け(12歳以下対象)である場合はCPSIA(米国児童製品安全改善法)の規制が適用され、鉛など有害物質基準適合や第三者機関による試験が必要になります。

カリフォルニア州Prop 65対応

カリフォルニア州のProposition 65(化学物質の警告表示法)は、電子機器に含まれる特定の有害化学物質が州定める閾値を超える場合、製品やパッケージに警告文を表示しなければならない州法です。

例えば、付属のケーブル被覆にフタル酸が含まれるケース等では対象になる可能性があります。スマートフォンやイヤホンも例外ではなく、該当する場合は「カリフォルニア州では癌・生殖毒性の原因となる物質を含む」旨の警告文を英語で表示する必要があります。

リチウムイオン電池の輸送規制

モバイル機器の多くはリチウムイオン電池を内蔵しており、電池の輸送には国際的な危険物規制が適用されます。安全かつ合法に輸送するための要件を理解しておく必要があります。

UN38.3試験認証の取得

国連が定める「リチウム電池の輸送試験基準(UN Manual of Tests and Criteria 38.3項)」に適合していることが必須です。これはリチウム電池が落下衝撃や短絡など様々なテストに耐える安全性を確認する試験です。

製品に搭載するリチウム電池セル/バッテリーはUN38.3認証試験に合格していなければ空輸・海上輸送できません。電池メーカーが発行するUN38.3試験報告書またはサマリーを入手し、必要に応じて配送業者に提示できるようにします。

IATA危険物規則への対応

国際航空輸送の場合、IATA危険物規則(航空会社が従う規程)が適用されます。電池単体や電池内蔵機器の発送には、IATA規則中の包装規則(Packing Instruction 965~967)など該当するものに沿った梱包・表示が必要です。

具体的な要件

  • 外装箱にリチウム電池のハンドリングラベル(赤枠の電池マーク)を貼付
  • 電池容量や個数が閾値を超える場合、危険物クラス9のラベルが必要
  • 航空貨物運送状への記載と事前申告(Dangerous Goods申告書)

電池のショート防止措置(端子をテープで覆う等)を行い、適切なクッション材で保護してください。外箱には危険物ラベルを貼付し、内容品がリチウム電池であることが一目で分かるようにします。

貨物書類(インボイスや運送状)にも「リチウムイオン電池内蔵機器、UN3481」などの記載が必要です。航空会社・宅配業者によっては事前にリチウム電池のMSDS(製品安全データシート)やUN38.3試験結果の提出を求められることがあります。

Amazon FBA納品時の書類要件

Amazonでは電池製品に関するCompliance書類の提出を求められます。リチウム電池製品の場合、UN38.3試験サマリー(Test Summary)のアップロードが必須です。

2020年以降、AmazonはUN38.3試験結果の提出をグローバルで義務付けており、提出しないと該当ASINの出品やFBA納品が停止される可能性があります。実際、「リチウム電池テストサマリーを提出しないと在庫を処分される場合がある」とAmazonから通知されるケースが報告されています。

Amazonで必要な情報・書類

  • 電池の種類や容量・ワット時などバッテリー関連情報の登録
  • UN38.3試験サマリーのアップロード
  • バッテリー免除シート(Battery Exemption Sheet)
  • MSDS(安全データシート)

Amazonの危険物管理システム(危険物分類ツール)で要求された場合は、該当書類を速やかに提出しましょう。日頃からSeller Centralの「商品安全・コンプライアンス」タブを確認し、要求事項に未対応のものがないかチェックすることが推奨されます。

まとめ|規制対応チェックリスト

米国向けモバイル機器輸出を成功させるためには、以下の規制対応を確実に実施する必要があります。

通関・関税関連

  • HSコードの正確な分類(スマートフォン:8517.13.00.00、無線イヤホン:8518.30.20等)
  • 商業インボイスと必要書類の準備
  • Importer of Record(IOR)の登録と税関保証金の取得

製品表示・ラベリング

  • 原産国表示(英語で「Made in ___」)
  • 製造者・輸入業者情報の記載
  • FCC ID表示(無線機器の場合)

認証・規格対応

  • FCC認証(FCC ID)の取得と登録
  • UL認証の取得(推奨)
  • UN38.3試験認証(リチウム電池の場合)

プラットフォーム要件

  • Amazon出品時のFCC ID登録
  • UN38.3試験サマリーの提出
  • MSDS・バッテリー免除シートのアップロード

輸送規制対応

  • リチウム電池ラベルの貼付
  • IATA危険物規則に沿った梱包
  • 必要に応じた危険物申告書の作成

これらの要件を事前に確認し、適切な準備を行うことで、税関トラブルやプラットフォームでの出品停止リスクを最小限に抑えることができます。規制対応は複雑に見えますが、一つひとつのステップを着実に進めることで、安全かつスムーズに米国市場へ商品を届けることが可能になります。

専門的な手続きについては通関業者やフォワーダーと連携し、最新の規制情報を常に確認しながら輸出ビジネスを展開していくことが成功の鍵となります。

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