アメリカ州別売上税(Sales Tax)完全ガイド|物販における課税・免税ルールを徹底解説

米国税制情報

アメリカの売上税制度を理解する重要性

アメリカで物販ビジネスを展開する際、最も複雑な要素の一つが売上税(Sales Tax)です。日本の消費税とは異なり、アメリカには連邦レベルの統一消費税が存在せず、各州や地方自治体が独自に売上税を設定しています。

現在、45州とワシントンD.C.が一般的な売上税を課しており、デラウェア、モンタナ、ニューハンプシャー、オレゴンの4州とアラスカ州(州税なし・一部地方税のみ)は州レベルの売上税を課していません。この複雑な税制を理解せずにビジネスを始めると、予期せぬ税務問題や顧客からのクレームにつながる可能性があります。

本記事では、アメリカ各州の売上税の仕組みから、食料品・医薬品・衣類といった主要カテゴリーの課税状況、そして越境ECにおける注意点まで、実務に役立つ情報を網羅的に解説します。

アメリカの売上税制度の基本構造

売上税とは何か

アメリカの売上税は、州内における最終消費者向けの物品の小売販売に課税される税金です。日本の消費税のような付加価値税(VAT)とは異なり、小売段階で一度だけ課税される仕組みとなっています。

事業者は販売代金に対して定められた税率を上乗せして徴収し、州政府等に納付します。全ての小売販売は基本的に課税対象と推定されますが、卸売販売(転売目的の仕入れ)については適切なリセール証明書を提出すれば非課税となります。

州税と地方税の二層構造

アメリカの売上税は州税と地方税の二層構造になっています。州が基本税率を設定し、その上に郡や市が独自の税率を上乗せすることができます。

例えば、カリフォルニア州では州売上税が7.25%ですが、地域によっては地方税が加算され、最大10.5%まで達する地域も存在します。一方、インディアナ州のように州単独で一律7%の税率を適用し、地方税を認めていない州もあります。

この地方税の有無や税率は、同じ州内でも自治体によって大きく異なるため、販売地域ごとの正確な税率確認が不可欠です。

売上税がない5つの州

アメリカには州レベルの売上税を全く課さない州が5つ存在します。これらの州は「無税ショッピング州」として知られ、小売業者や消費者にとって魅力的な地域となっています。

オレゴン州

オレゴン州は州売上税も地方税も一切課していません。過去に何度も売上税導入が検討されましたが、住民投票で否決され続けており、無税政策を維持しています。州境での「無税買い物」を観光資源として積極的にPRしています。

デラウェア州

デラウェア州も州売上税がなく、地方税も存在しません。ただし、小売業者は売上高に応じた総収入税(GRT)を別途負担する必要があります。「無税ショッピング州」として知られ、近隣州からの買い物客を集めています。

モンタナ州

モンタナ州は恒久的に売上税を導入していない主要5州の一つです。一部のリゾート地が宿泊税(リゾート税)を課す程度で、基本的に物販に対する消費税はありません。

ニューハンプシャー州

ニューハンプシャー州も州売上税がありません。ただし、9%の宿泊・飲食物税や自動車賃貸税など、特定の品目やサービスに対する個別消費税は存在します。

アラスカ州

アラスカ州には州レベルの売上税がありませんが、borough(郡に相当)や市が独自に最高7.5%の売上税を課すことができます。アンカレッジなど主要都市は無税ですが、一部自治体では地方税が適用されます。

主要品目の課税・非課税ルール

食料品(グロサリー)の取り扱い

食料品に対する売上税の取り扱いは州によって大きく異なります。多くの州では日常の食料品を非課税としていますが、一部の州では通常税率や軽減税率を適用しています。

非課税の州:カリフォルニア、ニューヨーク、フロリダ、テキサス、インディアナなど多数の州で一般的な食料品は州売上税非課税です。

通常税率課税の州:ミシシッピ、アイダホ、サウスダコタ、ハワイなど一部の州では食料品にも通常の税率を適用しています。特にミシシッピ州の7%は全米でも食料品税率が最も高い部類に入ります。

軽減税率の州:アラバマ(3%)、テネシー(4%)、ミズーリ(1.225%)など7州では食料品に対して軽減税率を設けています。イリノイ州では一般向け物品が6.25%に対し、食料品・医薬品は1%の特別低税率が適用されます。

近年、食料品税の見直しが進んでおり、オクラホマ州では2024年8月より州の食料品税4.5%を完全撤廃し、カンザス州も2024年以降州税0%を実現しています。

なお「食料品」の定義も州法で異なり、調理済み食品(レストランのテイクアウト等)や菓子、炭酸飲料は食料品に含めず課税扱いとする州が多くあります。

医薬品の課税状況

ほとんどの課税州で処方薬(処方箋医薬品)は非課税とされています。テキサス、ニューヨーク、フロリダなど多くの州で処方薬は売上税免税です。

処方箋なしで購入できる市販薬については州によって扱いが分かれます。ニュージャージー、ニューヨーク、テキサスなどでは市販薬も非課税ですが、カリフォルニア、フロリダなどでは課税対象となります。

興味深いことに、ネブラスカ州は処方薬に課税する珍しい州の一つで、医師処方薬にも5.5%の税率が適用されます。

医療用品(補聴器、義肢装具等)も多くの州で非課税か軽減税率が適用されています。

衣類の複雑な課税ルール

衣料品に対する課税は州により最も大きく異なる分野の一つです。

完全非課税の州:ニュージャージー、ペンシルベニア、ミネソタ、バーモントなどでは一般的な衣料品が常に非課税です。ただし、高級毛皮製品やスポーツ用特殊衣料など一部例外は課税となります。

価格条件付き非課税:一定価格以下の衣料品のみ非課税とする独自ルールを持つ州があります。

  • マサチューセッツ州:一品あたり175ドル以下の衣類・靴は非課税。超過分のみ課税(200ドルのセーターの場合、25ドル部分にのみ6.25%課税)
  • ニューヨーク州:110ドル未満の衣類・靴が非課税。110ドル以上の場合は全額に州税が課される
  • ロードアイランド州:一品250ドル以下非課税

課税対象の州:カリフォルニア、テキサス、フロリダなど多くの州では衣類に通常税率が適用されます。

州別の特徴的な税制度

ハワイ州の総合事業税(GET)

ハワイ州は一般的な売上税ではなく、総合事業税(GET)4%(ホノルル郡のみ4.5%)を物品・サービス含め包括的に課税しています。食料品・処方薬も課税対象で、免税品目がほとんどありません。

付加価値税に近い広範囲課税が特徴ですが、低所得者には所得税控除(クレジット)で負担軽減措置を講じています。

アリゾナ州のトランザクション特権税(TPT)

アリゾナ州は売上税ではなくトランザクション特権税(TPT)と呼ばれる事業者の総収入に課す税を採用しています。名目上は売り手の納税義務ですが、実務上は他州同様に消費者から預かる形式です。

州税5.6%に加え、市・郡が最大6%程度上乗せ可能です。インディアン居留地では独自に高税率の売上税を課す場合があり、全米最高税率13.725%を記録した地域も存在します。

ルイジアナ州の州税と地方税の乖離

ルイジアナ州では州法により日常食料品と処方薬は州税非課税ですが、パリッシュ(郡)や市はこれらに地方売上税を課すことが認められています。州税4.45%に地方税が加算され、合計最大11.45%に達する地域があります。

この州と地方で課税品目が異なる仕組みは、税務処理を複雑にしています。

イリノイ州の複数税率制度

イリノイ州は一般向け物品に6.25%の州税率を適用する一方、食料品・処方薬・一般医療機器には1%の特別低税率を設定しています。さらに飲食店等の調理食品は7.35%の高税率が適用されます。

2022年にはインフレ対策で一時的に食品税率を0%に引下げる措置も実施されました。デジタル商品(ストリーミング等)には別途「電子配信税」が課税されます。

税休日(Tax Holiday)制度

多くの州で「セールス税ホリデー」と呼ばれる特定期間の特定品目非課税制度が実施されています。これは消費者負担軽減や景気刺激策として設けられる州法上の特例です。

バック・トゥ・スクール・ホリデー

テキサス州、フロリダ州、アーカンソー州など多くの州では、新学期前の8月に衣料品や学用品の非課税期間を設けています。フロリダ州では一定金額以下の衣類や学用品、コンピュータなどが対象となります。

ハリケーン準備用品ホリデー

フロリダ州やルイジアナ州など沿岸部の州では、ハリケーンシーズン前に懐中電灯、ラジオ、発電機などの防災用品を一定期間非課税とする制度があります。

その他の税休日

マサチューセッツ州では毎年8月に2日間、大半の商品を非課税とする消費税ホリデーを実施するのが恒例となっています。

越境EC(州間取引)における売上税

サウスダコタ対ウェイフェア判決の影響

2018年の合衆国最高裁判決「サウスダコタ州対ウェイフェア判決」により、販売業者が州内に物理的拠点を持たなくても一定規模以上の売上があれば州は売上税徴収を要求できることが明確化されました。

経済的Nexus(事業者の経済的関与)基準

この判決以降、ほぼ全ての課税州は経済的Nexus基準を導入しました。典型的には年間売上高10万ドル超または200件超の取引がある州外事業者に対し、その州への販売時に売上税を徴収・納付する義務を課しています(閾値は州により異なる)。

つまり、現代ではオンライン販売であっても消費者の所在州の売上税が適用されるのが一般的です。

マーケットプレイス法

Amazonなどのマーケットプレイス事業者に売上税徴収を代行させるマーケットプレイス法も各州で整備されており、越境ECであっても適正な課税が行われるようになっています。

マーケットプレイスで販売する場合、多くのケースでプラットフォーム側が自動的に適切な売上税を徴収・納付するため、個別の出品者が直接対応する必要性は低減しています。

利用税(Use Tax)

販売者が売上税を徴収しない場合、購入者側が利用税として自己申告・納税する建前ですが、実際には事業者側で課税するケースが圧倒的に増えています。

実務における注意点

商品カテゴリーの正確な判定

同じ「食料品」でも、州によって定義が異なります。例えば、キャンディ、炭酸飲料、調理済み食品は「食料品」に含めず課税扱いとする州が多くあります。

販売する商品が各州でどのカテゴリーに分類されるかを正確に把握することが重要です。

地方税の存在を忘れない

州税が低率でも、地方税が高額な地域があります。カリフォルニア州やルイジアナ州では地方税を含めると10%を超える地域も存在します。

販売先の郵便番号(ZIP Code)ベースで正確な税率を確認する必要があります。

リセール証明書の活用

事業者間取引(B2B)で転売目的の仕入れを行う場合、適切なリセール証明書を提出すれば売上税が免除されます。卸売業を行う場合は各州のリセール証明書制度を理解し、適切に運用することが重要です。

継続的な制度変更への対応

売上税制度は頻繁に変更されます。オクラホマ州やカンザス州のように近年食料品税を廃止した州もあれば、新たに課税範囲を拡大する州もあります。

定期的に最新の税制情報を確認し、販売システムの税率設定を更新する体制を整えることが不可欠です。

まとめ:アメリカ売上税制度の理解が成功の鍵

アメリカの売上税制度は州ごとに大きく異なり、同じ州内でも地域によって税率や課税品目が変わる複雑な仕組みです。本記事で解説した主要なポイントは以下の通りです。

  • 45州とワシントンD.C.が売上税を課しており、5州(オレゴン、デラウェア、モンタナ、ニューハンプシャー、アラスカ)は州税なし
  • 食料品、医薬品、衣類の課税・非課税は州により大きく異なる
  • 州税と地方税の二層構造により、同じ州内でも地域差が大きい
  • 2018年のウェイフェア判決以降、越境ECでも経済的Nexus基準により課税義務が発生
  • 税休日制度やマーケットプレイス法など、継続的な制度変更に注意が必要

アメリカで物販ビジネスを展開する際は、販売先の州・地域の税制を正確に理解し、適切な税率で徴収・納付する体制を整えることが成功の鍵となります。税務専門家への相談や税務自動化ツールの導入も検討することをお勧めします。

https://youtu.be/zNjL_bdJgRM

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