米国へ医療機器、医薬品、食品、化粧品を輸出する日本企業にとって、FDA施設登録は最初に越えるべき手続きです。ただし「FDA登録番号を一つ取れば全商品に使える」と考えると、登録漏れや輸入時のトラブルにつながる可能性があります。
本記事では、カテゴリー別の制度の違い、申請前に整理すべき識別番号、U.S. Agentの役割、登録後の品質管理と査察対応、日本企業に多い不備を順に解説します。
FDA施設登録とは?「一つの共通制度」ではない
製品カテゴリーごとに法令・システム・更新周期が異なる

FDAの「Facility Registration」は、全製品共通の単一制度ではありません。医療機器は21 CFR Part 807、医薬品・動物用医薬品はPart 207、食品は21 CFR §§1.225–1.245、化粧品はMoCRAによるFD&C Act §607というように、根拠法令が分かれています。提出システム、施設を識別する番号、更新周期、費用、米国代理人の要件もそれぞれ異なります。
そのため、同じ工場で食品と化粧品を製造している場合などは、同じ物理施設について複数制度の登録が並行して必要になる可能性があります。
施設登録はFDA承認ではない
施設登録は「この場所で米国向けの規制製品を扱っている」という情報をFDAに届け出る手続きであり、製品の承認ではありません。FDAは化粧品について、施設登録と製品リスティングは承認制度ではなく、登録証明書も発行しないと明示しています。食品についても、FDAは登録証明書を発行していません。民間業者が販売する「FDA Registration Certificate」をFDA発行の証明書と誤認しないよう注意が必要です。
カテゴリー別に見るFDA施設登録の違い
| カテゴリー | 主な提出システム | 重要な識別番号 | 更新周期 | 施設登録費用 |
|---|---|---|---|---|
| 医療機器 | FURLS → DRLM | Owner/Operator情報 | 毎年10/1–12/31 | 有償 |
| 医薬品・動物用医薬品 | FDA Direct / SPL | DUNS(推奨UFI) | 毎年10/1–12/31 | 施設類型により別途user feeの可能性 |
| 食品・動物用食品 | FURLS FFRM | DUNS(必須) | 偶数年10/1–12/31 | 無料 |
| 化粧品 | Cosmetics Direct | FEI(必須) | 初回登録日から2年ごと | 施設登録料は現時点で設定なし |
医療機器:有償の年次登録とPIN/PCN
医療機器は、まず年次施設登録料を支払い、PINを取得します。支払いの処理が済むとPCNが発行されますが、これには数日かかる場合があります。その後、FURLSのDRLMで施設情報とDevice Listingを入力し、PIN/PCNを紐づけて初めて登録が完了します。年間施設登録料は、FY2026(2026年9月30日まで)が$11,423、2026年10月1日からのFY2027が$13,785です。
また、510(k)やPMAが必要な機器は、クリアランスや承認を得る前にリスティングできません。規制経路の確定を登録より先に行うことが重要です。
医薬品・動物用医薬品:SPLでの電子提出
医薬品の施設登録は、FURLSではなくStructured Product Labeling(SPL)形式のXMLで提出します。FDA Directなどのツールを使い、UFI、業務内容(製造、再包装、再表示など)、公式連絡先、外国施設の場合はU.S. Agentを入力します。国内の医薬品施設は、操業開始から5暦日以内の初回登録が求められています。
食品・動物用食品:無料だが2026年は更新年
食品施設の登録は無料ですが、2年に一度の更新が必要です。2026年は更新年にあたり、期間は10月1日から12月31日までです。10月1日より前に新規登録した施設も更新の対象になるため、「9月に登録したから今年は不要」という判断は誤りです。また、登録内容の「Update」と「Renewal」は別の操作として扱われます。
化粧品:FEI必須、初回登録日から2年ごと
化粧品では、登録前にFEI(FDA Establishment Identifier)を取得する必要があり、FEIがそのまま施設登録番号として使われます。更新は食品の「偶数年」とは異なり、初回登録日から2年ごとです。施設登録とは別に、Responsible Personによる製品リスティングも必要です。
申請前に整理すべき識別番号(DUNS・FEI・UEI)
DUNSとFEIの使い分け
食品ではDUNSが必須のUFIとされており、FDAは取得に最大45日かかる可能性があると案内しています。医薬品でもDUNSが推奨UFIです。一方、化粧品はFEIが必須で、DUNSは任意項目です。本社ではなく、登録する工場の名称・物理住所と一致するDUNSを使うことがポイントです。
SAM.gov UEIを代わりに入力しない
米国政府との取引で使うSAM.govのUEIは、FDAの各施設登録制度でDUNSやFEIの代わりとして指定されていません。UEIとDUNSは別に管理し、FDAの入力欄には各制度が指定する番号を使うのが安全です。
英文社名・住所の「マスター化」
「Co., Ltd.」と「Corporation」の混在や、住所表記の揺れは施設照合の妨げになる可能性があります。英文の正式社名・工場名・住所を一つのマスターとして定め、DUNS、FEI、FDA登録、U.S. Agent契約、インボイスまで同じ表記で統一しましょう。
U.S. Agent(米国代理人)の選定と確認メール対応
外国施設は原則として米国内のU.S. Agentを指定します。医療機器では、Agentは米国内に居住するか事業所を持つ必要があり、私書箱(PO Box)だけでは認められません。FDAから届く確認メールに10営業日以内に応答しなければ、新たなAgentの指定が必要になります。食品でも、Agentの確認が完了しないと登録処理が進まない可能性があります。
確認メールが迷惑メールフォルダに振り分けられる事態に備え、事前に担当者と受信体制を確認しておくことが大切です。また、U.S. Agentと輸入者は別の役割として扱われる点にも注意しましょう。
施設登録だけでは不十分:品質管理とFDA査察への備え
QMS・Food Safety Planは別層の義務
施設登録は、QMSマニュアルやSOP一式を添付する手続きではありません。しかし登録後はFDA査察の対象となり得ます。医薬品は21 CFR Parts 210/211のCGMP、食品の多くは21 CFR Part 117に基づくFood Safety Plan(危害分析、予防管理、モニタリング、是正措置、検証など)が求められます。登録要件と運用上のコンプライアンス要件は別のものとして、並行して整備する必要があります。
輸入データとの整合
通関時の申告情報とFDAの登録・リスティング情報が食い違うと、輸入審査で問題になる可能性があります。食品では、登録義務のある外国施設が未登録の場合、その食品が港で留め置かれる可能性があるとFDAは説明しています。製造者名、住所、登録番号、製品コードは、同一のマスターから輸入者や通関業者に提供しましょう。
日本企業に多い不備と推奨スケジュール
よくある不備
- FURLSのアカウントと施設登録番号を混同し、既存アカウントを重複作成してしまう
- 本社のDUNSを工場の登録に流用してしまう
- 医療機器の登録料を申請当日に支払い、PCNの発行が間に合わない
- 化粧品を食品と同じ偶数年更新だと思い込む
- 「施設登録=製品登録=FDA承認」と誤解し、リスティングや品質体制の整備が遅れる
輸出予定日から逆算したタイムライン
DUNS取得やAgent確認にかかる時間を考えると、輸出予定日の3〜4か月前から製品分類とAgent候補の検討を始めるのが無難です。その後、DUNS・FEIの取得、英文マスターの確定、品質体制のギャップ評価、登録申請、輸入者とのデータ照合という順に進めると、手戻りを減らせる可能性があります。
まとめ
FDA施設登録は、カテゴリーごとに独立した制度として理解することが出発点です。重要なのは「番号を取ること」を目的化せず、製品分類 → 施設の役割 → 識別番号 → U.S. Agent → 施設登録 → 製品リスティング・承認状況 → 輸入データ → 品質・査察対応という流れで進めることです。特に2026年は食品施設の更新年にあたり、医療機器の登録料も改定されるため、秋以降のスケジュール管理が欠かせません。
今後は、FSMAの予防管理要件への具体的な対応方法や、MoCRAによる化粧品規制の運用動向、FDA査察の実態など、登録後のコンプライアンスをさらに掘り下げていくことが、米国市場で安定して事業を続けるための鍵になるでしょう。